輪廻魔術 ~君が死なない方程式~

モト

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愛欲編

12

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「さ。他の魔術にとりかかろう」

 形成魔術を止めて他の魔術をするように促す。

 彼が僕に手を伸ばすので、そっと避けた。カイル君の視線を感じる。じっと見られると顔が知らず熱くなる。


「俺は一度だって、触れ合わない事を頷いていないぞ」
「……君に強くなってもらいたい。甘えた関係ではなくきちんと師として君を育成したいのだ」

 冷静になるように努める。僕は育成者なのだから。

「そんな風に見ないでくれたまえ」

 困った生徒を見るように彼に苦笑いをした。彼に背を向けた時、一羽の赤く美しい鳥がこちらに向かってきた。


 マキタだ。マキタの伝言鳥だ。

 僕は立ち上がり腕をあげると、美しい鳥が腕に乗っかった。美しい鳥は僕の頬まで近づいて頬ずりしてきた。

 マキタが近くまで来ている。

「来客だ。少し席を外す。僕は気配を探知できるから皆と共に旅を進んでくれて構わない」

 カイル君に勉強しておくように声をかける。
 きっと、先日送った木のサンプル結果を直接伝えに来たのだ。僕はマキタの気配のする方まで移動魔術で向かった。



 マキタは5キロ先の美しい紫色の花の木の下、僕を待っていた。

 転移して姿を見せた僕を見て、マキタは目を見開いて驚いた。

「久しぶりだね。マキタ」
「……っ! リン様、心配しておりました。お元気そうで!!」

 マキタが僕の前に膝をつける。嬉しそうに頬を赤くさせている。
 彼には随分心配かけただろう。何しろ王宮を出る時、僕はもう災厄の日まで目覚めないつもりだったから。世話役の彼に心配かけたまま何も連絡をとらなかった自分を恥じる。

「すまないね。君にはずっと心配をかけている」

 少しでも安心して欲しくて彼の手を握り微笑む。

「……っ」
「マキタ?」

 マキタが息を飲んで僕を見つめるのでどうしたのかと首を傾げる。

「い、いえ。息を飲むお美しさで……。笑顔の凄みに浄化されてしまう所でした。尊すぎて!!神!!」
「………君の言い回しが本当におかしくて辛いよ」
「リン様、あぁ、困った顔ですらお可愛らしい!ハァハァハァ……このマキタ、リン様を見ているだけで一生おかずなしでご飯が進みます!!」
「……」


 前の世界の僕もカイル君の前でこのような感じだったのだ。まるで自分を見ているようで痛々しい。

 まぁ、そこまで心配させたのは僕の方なのだから、仕方ないか。

「話をしたいから冷静になりなさい」

 マキタを立たせてそっと抱きしめて背中をポンポンと叩く。

「……っ、リン様、ポンポン……」
「あぁ。小さい子はこうしたら落ち着くのだけどねぇ」
「あぁ! 見上げないで下さいっ!! 分かりました!! すぐに冷静になりますからっ!!」

 見上げるなって僕は身長が低いから、ほとんどの成人男性は見上げないといけない。


 マキタは目を閉じて息を吐くと次の瞬間には、興奮を抑え苦笑いのマキタがいた。

「じゃ、早速話を……」
「そうだよなぁ。男と逢引きしている理由を話してもらわないとな」
「!!」
「誰だ!? 貴様っ!!」

 マキタが僕の腕を掴んで彼の真後ろへと下がらせる。
 カイル君だ。僕の後をつけて転移してきたのだろうか。それにしても、彼の気配……、どうしてこうも彼の気配に気づけないのだろう。マキタも全く気付いていない様子だ。

「あぁ!? お前こそ誰だ? ぶっ殺すぞ」

 カイル君、それでは、どこかのチンピラだよ。

 ビリビリッと彼の怒気で空気が揺れる。この場を納めないと。


「リン様、私の後から出ないでください。この男、とんでもない敵意を向けております」
「マキタ、いいんだ。彼は知り合いだから」
「……何二人でごちゃごちゃ言ってんだ?」

 マキタの後からでもカイル君の怒気の凄まじさが伝わる。マキタの背後からカイル君を見ると、青筋立てて滅茶苦茶怒っている……!!

 デジャブ。なんだか、このやり取り前の世界でもやったことがある。相性が悪すぎるのか。 
 どの世界でも相性というのは中々変わる事がないのかもしれない。

 僕は彼らの間に立ち、二人の紹介をする。


「マキタ、彼は僕の新しい弟子だ! カイル君、マキタは君の兄弟子だ!」

「今、そんなのどうでもいい。リンは俺に触らせないのに、そいつにはベタベタ自分から触らせて抱き着いて、笑顔大サービスなわけ?」
「え!?」

 睨んでくる彼をみて、思わず口から「ひぃ」と悲鳴が出そうになる。

「弟子……? リン様は以前、私だけだとおっしゃいませんでしたか!?」

 あぁ、そう言えば、僕が弟子をとるのはマキタだけだと伝えたことがある。しかし、その誤解される言葉を今言わなくてもいいではないか。

「へぇ、そいつだけねぇ」

 怒気が益々強まって、冷や汗が出てくる。

「リン様を怖がらせる不届き者め。リン様が弟子と定めたのならば私は何も言いません。しかし、兄弟子らしく彼に指導しようではありませんかっ!!」

「指導ねぇ。こっちが指導する側になりそうだけどな」
「……貴様」


 二人とも構え初めて、マキタが僕に許可するようにこちらを見る。

「君達、あのねぇ…………………」

 言いかけた所で僕の内部に結界の揺れを感じる。

 マキタを呼ぶと、彼が僕の傍に寄る。カイル君よりマキタを呼んだのは一緒にいる時間が長かったからだ。それだけ。

「……もしかして、結界に異変を感じましたか?」
「あぁ、ここから50キロ先の村だ。カイル君、君も来てくれるか、い?……え???」

 あまりに不機嫌なカイル君の様子に二度見してしまった。

「あぁ」

 彼は不機嫌のまま頷く。


 転移で向かった先の村で、同じように地面から太い樹木が生えていた。うにょうにょと蔦が建物を覆いつくす。

「カイル君、マキタ、いいかい!?」
「えぇ。リン様、この憤り思う存分晴らさせてもらいましょう」
「それはこっちの台詞だ」

 そう言って、二人が連携も何もなく駆けていった。二人が樹木の動きを即座に抑えられていく。個々の力が凄い。マキタも暫くみないうちに成長した。

「……」

 最高位ランクが二人もいれば余裕かもしれないな。
 どうやら、今回は村人たちも避難済みのようだし。ここは、二人の様子をここから眺めるか。


「終わったぞ」

 暫くすると、マキタとカイル君が戻ってきた。二人とも途中互いに攻撃し合っていた。そうでなければ、もっとスムーズに終わらせたことだろう。
 マキタが複雑そうだが、黙っているところを見るとカイル君の実力を認めたのだろう。


「うん。二人ともかなりいい筋だった。ただ、本当の災厄級となるとこのようなものではないよ。二人とももっと鍛錬しようね」

「この者にも、災厄の事を伝えているのですか?」

 国家秘密を彼に話していることにマキタが驚愕している。

「あぁ。僕はカイル君こそが最強に相応しいと思っているんだ」

「……私ではなく? 私は、貴方の後継者ではなくなったという事ですか?」

 ずっと、後継者はマキタだと言い続けていた。

「君に不備があるわけではない。僕はカイル君を最強にしたいのだ」

 世界一の最強は、僕の後継者となる意味を持つ。
 ただ、この『人柱』だけは、僕で最後にしたいとずっと思っている。


「私は、貴方のたった一人だと思っておりました。もう、貴方の傍にいられないのですか?」

 マキタの無表情が益々人形にみたいに凍りつく。

「そんなわけがない。これからもずっと僕の弟子で親しい人であっ……!! ふぐっうっぐ!?」

 その言葉を最後まで言う前に僕の口をカイル君によって塞がれた。驚くマキタが見える。

「貴様っ!?」
「んん~~ん!!」

 カイル君が僕をギュウッと抱きしめる。マキタは魔術印を結ぼうとするが、あまりに僕と彼が密着している為、術を発動出来ないでいる。

「んんっんん」

 く、苦しい~~!!
 息つぎが上手に出来なくて苦しくて胸を叩く。抱きしめる腕の力も強くて呼吸が出来ない。

「貴様! リン様に何をしているのだっ! 離れろ!!」

 マキタが近付いてきた時、カイル君の異常な魔力による強い結界が張られ、マキタを拒む。

「ん~っ、ふっあふ、ん……」

 マキタの前なのに舌まで挿れられている。首を振って拒否するのにもっと力強く固定される。
 ようやく離れた時には力が入らなくてそのままカイル君に横抱きされる。

「……ハァハァハァ……ハァ……」
「アンタは俺の恋人だろうが。ちゃんと自覚しろ」
「……ん、はぁ、こ、こい、びと……?」

 何、キョトンとしてるんだ。と僕を抱きしめたままマキタに背を向ける。
 マキタが呆然とその場に立ち尽くした。まるで硬直して一歩も動けないようであった。

「じゃ、そういうことだ。兄弟子さんよ」

 カイル君の移動魔術が発動した。





 一瞬で景色が変わった先は、見覚えのある部屋だった。

 ここは……カイル君の部屋だ。

 懐かしい。別の世界であったが、いつの日かここで眠ったな。懐かしさに周りをキョロキョロみていると、そのベッドにどさりと寝かされる。

「……っ!」

 ベッドに横たわる僕の上にカイル君がのしかかってきた。

 見上げたカイル君の顔が怒気を含んだままだった。抵抗しようとした手は握られ、ペロリと舐められる。その動作は肉食獣そのもの。

「………カ、カイル君、こ、怖いよ」

 恐怖に顔が引きつってしまう。

 そんな僕を彼は抱きしめた。どうにか彼の下から逃れたくて上体を動かす。
 僕の身体など彼の片手でどうにでもなってしまう。

「なぁ、俺の事弄んでるのか?」
「弄んで…?」
「俺と繋がりたいと煽ってきたのにセックスした後は、触るな? それで他の男にはベタベタ触らせんの?」

 カイル君が僕のシャツのボタンをゆっくりと外していく。その触れ方は優しいけれど、腰は足でホールドされているし、動ける気がしない。

「いいよ。リンは分かってないだけだもんな? でも、いい。俺とは始まったばかりだもんな」

 カイル君が一人納得している。彼がそう言いながら僕の首筋に噛みついてくる。

「これからゆっくり分かっていけばいいだけだもんな」
「……あ……」

 にっこり笑う彼の顔に僕の頬は引きつった。
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