だから、悪役令息の腰巾着! 忌み嫌われた悪役は不器用に僕を囲い込み溺愛する

モト

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番外編

番外編 サモン16歳 アーモンとの出会い①

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16歳のサモン アーモンとの出会い①
サモン視点の番外編です。




「──サモン・レイティアス! 邪魔をするなっ! 僕はただ、フラン様を愛しているだけなのに!」

 消えろ、消えちまえ! 何故お前がそこにいる! お前さえいなければ、フラン様に想いを伝えられ、愛されたはずなのに!

 教室で同学年の男が両腕にフランのカーディガンを抱えて、股間を勃起させて、そう叫ぶ。

「──盗人猛々しいとはこのことだ」



 今朝がた、肌寒い気温だったが、午後になれば暑くなったため、フランはカーディガンを椅子に掛けたまま次の授業の武道館へと向かった。

 フランの私物はそのまま放置しておくと、消える。

 途中で気づいた俺は、授業中、教室に戻った。
 案の定、この男がフランのカーディガンの匂いを嗅いで、フランの鞄の中を探っていた。
 フランのものを汚い手が触れていることに我慢ならず、俺は男に手を伸ばす。
 この程度の男ならば、魔法詠唱も不要。


「──ぎゃっ」
「貴様の行為にフランが喜ぶとでも思っているのか」
「ひぐぅ」

 少しの魔法だ。少しの圧。たったそれだけのことで、簡単に男は地面に突っ伏した。
 だが、倒れ込んでもなお、男はフランのカーディガンを抱き締めたまま、離そうとしない。


「おっおぉ、お……お前など、フラン様の傍にいる資格はないっ! 僕の愛がフラン様に伝われば、きっと分かってくださるっ! 目が合ったとき、互いに想い合っていることが分かったんだ!」

「ほざけ。フランから貴様の名など聞いたことはない」

 フランの口から聞きたくもないが。

「っ、そんなことはない。ずっと僕はフラン様だけを愛しているんだっ。あの人しか好きになれない!」
「……」

 俺は静かに魔法を強める。
 その圧に耐えかねて男は気絶した。

 倒れた男を蹴飛ばして、フランのカーディガンを奪い、クリーン魔法をかける。
 だが、一度でも汚い手が触れたことに怒りが込み上げる。
 それに鞄を見れば、この男が入れたのだろう。濡れたハンカチが入っていた。
 何故濡れているのか想像しただけで、顔が歪む。

 気色悪い。
 どいつもこいつもフランを気色悪い目で見やがって。

 それをフランが目にする前に瞬時に手紙を燃やした。
 すると、早歩きでこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。教室に入ってきたのは──フランだ。


「サモン君、授業抜けてもらって、ごめんね⁉ 先生が突然、急用で出て行ったから、僕も抜けて……あれ?」

 フランは俺の横で倒れている男を見て、口を閉ざし、俺と男を交互に見る。

「もしかして、この人、僕のカーディガンを盗ろうとしたの?」
「ああ」

 よくあることなので、察しがいい。
 すると、フランははぁ~と大きな溜息を吐いて下を向く。

「そろそろ……漫画本篇が始まるから、かな。……最近、多いな」
「……」

 時折、フランは俺が分からないことを呟く。
 漫画、とは何だろう。彼がよくその言葉を呟くが、絵画とは違うのだろうか。

 考えていると、フランは顔を上げた。少し緊張した面持ち……?

「サモン君、本当に助かったよ。本当の本当に~、これからもお願いします!」
「あぁ、当たり前だ」
「……っ!」

 フランの顔がぱあっと明るくなり、「頼りになるよぅ~」と俺の腕に抱き着いてきた。
 信頼しきった顔に、時折、胸がいたくなる。
 俺の方が、裏切っているんじゃないかって。

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