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番外編
番外編 サモン16歳 アーモンとの出会い④
「はわっ、わわわ……」
ちんちくりんな男は振り向くと、俺が何かを言う前に両手を振って、「違います!」と声を上げた。
酷く慌てていて、男がかけている眼鏡がズレる。
フランの傍にいると、いつもどこからか視線がある。
そして熱心にフランのことを見ているこの男のことも見覚えがあった。
「盗み見か。この変態が」
「ちが……っ、違わないですが、違うんですぅ」
言い訳がましい。
昨晩からフランの色香を浴びすぎたからこそ、それを他の奴が見てしまうことに独占力じみた腹立たしさを覚える。
どう対処すべきか考えていると、男は「僕はフラン様だけを見ているわけじゃありません!」と慌てて付け足した。
「……なら答えろ。貴様が見ているものを」
「は、はい」
「嘘を吐けば、許さない」
脅せばビビるかと思ったが、男は額の汗をぬぐいながら、ホッと息を吐いている。
「よかったです。僕の推測通りですね。あっ、失礼しました。話が長くなりますので、談話室へご同行お願いします」
推測?
「長く?」
「はい。まず自己紹介させてください。僕はアーモン・チョコリラと申します」
この男からは大した魔力を感じない。貧弱な身体つきで、見るからに弱い。
なのに真っ青になりながら、俺の黒目を真っすぐに見てくるところは──変わっている。
◇
ちんちくりんな男、アーモンに誘導されるまま、談話室へ向かった。
「まず、フラン様を見つめていたことは事実です」
「そうだろうな。続きを」
「……ふふふ」
アーモンは眼鏡をくい、と指で上げながら、俺を見る。
なんだ? この男は?
今までに感じたことのない視線、──いや、時折はある。
この感じ、好奇心だ。
噂を楽しんでいるときに感じる視線。
怪しさに眉間のシワが深まったとき、アーモンはニヤリと口角をあげて、怒涛の勢いで話しはじめた。
「くくく……やはり、そうだ。レイティアス様──いいえ、いつもの僕はサモン様と呼んでいますので、この際、サモン様と呼ばせていただきます。サモン様はむやみに人を襲わない! 違いますか⁉ 答えを聞かなくとも、僕が理由を話すまで待ってくださった。僕の推測は間違っていなかったのです!」
「……」
「ほら、今だって静かに聞いてくださる。そして、サモン様がお怒りになられるとき、それはすなわち、野獣たちがフラン様を狙うとき! サモン様は美しすぎるフラン様を陰日向に守る守護神なのですね。フラン様の天然ふわふわはサモン様の過保護が作り出した──くぅ!」
「……」
先ほどまで青ざめていたはずの男は、次は興奮して顔を赤らめている。
俺が引いているのにも関わらず、アーモンは次々と“見てきたこと”を熱弁する。
フランのカーディガンを盗んだ男の話や、フランに手を出そうとする男を俺が蹴散らしていた話……つらつらと語るうちにさらに興奮し始めて──
「フラン様が大好きすぎて、手を出せないサモン様が尊すぎ!」
「──ほぉ?」
「……ぁ、っ! 僕……っ」
アーモンは口を手で押さえて、また青ざめた。
「貴様、俺がフランを好きだと言ったか?」
「ひ……」
俺は全身から黒い靄を溢れさせた。
アーモンが見ていたのは、フランと俺。
俺まで見て、どうするつもりだ。今のことをフランに伝えるならば、排除しなければならない。
俺が視線をきつくすると、アーモンは小声で「……申し訳ありません」と謝罪してきた。
「お二人がお似合いだから、勝手に妄想していただけです」
「……」
「誓って、お二人の邪魔をするつもりはありません」
お似合い……
俺とフランが?
「……貴様は商売人の息子だったな?」
「え、はい」
急に話を変えたことに、アーモンは驚きながら頷いた。
なるほど。
この男、なかなかに人が欲しい言葉を見抜く力がある。
はじめてフランの傍にいることを誰かに肯定された。
──俺とフランがお似合いなど有り得ないのに。
怒りは消え、フンッと鼻で息を吐いた。
もういけ、と俺はアーモンに声をかけた。
「あ、あの! 図々しいのは承知ですが、これからもお二人を見てもいいでしょうか。僕に出来ることがあれば──例えば、人避けなど、是非お二人のご協力させてください!」
「貴様にメリットは何もないが?」
そう言うと、アーモンがまた眼鏡をくいっと指であげた。
「お二人を間近でみつめること、それが僕にとって一番うれしいことですよ」
◇◇◇
「アーモン君とサモン君って、仲いいよねぇ」
俺とフランと、それからアーモン。
この三人で茶を啜ることは珍しくなく、今日も三人で集まっていたら、フランがそう言った。
「えぇえっ、光栄ですが、恐れ多いですよ!」
「……」
フランは俺とアーモンを見比べて、「ふふふ」と笑った。
ちんちくりんな男は振り向くと、俺が何かを言う前に両手を振って、「違います!」と声を上げた。
酷く慌てていて、男がかけている眼鏡がズレる。
フランの傍にいると、いつもどこからか視線がある。
そして熱心にフランのことを見ているこの男のことも見覚えがあった。
「盗み見か。この変態が」
「ちが……っ、違わないですが、違うんですぅ」
言い訳がましい。
昨晩からフランの色香を浴びすぎたからこそ、それを他の奴が見てしまうことに独占力じみた腹立たしさを覚える。
どう対処すべきか考えていると、男は「僕はフラン様だけを見ているわけじゃありません!」と慌てて付け足した。
「……なら答えろ。貴様が見ているものを」
「は、はい」
「嘘を吐けば、許さない」
脅せばビビるかと思ったが、男は額の汗をぬぐいながら、ホッと息を吐いている。
「よかったです。僕の推測通りですね。あっ、失礼しました。話が長くなりますので、談話室へご同行お願いします」
推測?
「長く?」
「はい。まず自己紹介させてください。僕はアーモン・チョコリラと申します」
この男からは大した魔力を感じない。貧弱な身体つきで、見るからに弱い。
なのに真っ青になりながら、俺の黒目を真っすぐに見てくるところは──変わっている。
◇
ちんちくりんな男、アーモンに誘導されるまま、談話室へ向かった。
「まず、フラン様を見つめていたことは事実です」
「そうだろうな。続きを」
「……ふふふ」
アーモンは眼鏡をくい、と指で上げながら、俺を見る。
なんだ? この男は?
今までに感じたことのない視線、──いや、時折はある。
この感じ、好奇心だ。
噂を楽しんでいるときに感じる視線。
怪しさに眉間のシワが深まったとき、アーモンはニヤリと口角をあげて、怒涛の勢いで話しはじめた。
「くくく……やはり、そうだ。レイティアス様──いいえ、いつもの僕はサモン様と呼んでいますので、この際、サモン様と呼ばせていただきます。サモン様はむやみに人を襲わない! 違いますか⁉ 答えを聞かなくとも、僕が理由を話すまで待ってくださった。僕の推測は間違っていなかったのです!」
「……」
「ほら、今だって静かに聞いてくださる。そして、サモン様がお怒りになられるとき、それはすなわち、野獣たちがフラン様を狙うとき! サモン様は美しすぎるフラン様を陰日向に守る守護神なのですね。フラン様の天然ふわふわはサモン様の過保護が作り出した──くぅ!」
「……」
先ほどまで青ざめていたはずの男は、次は興奮して顔を赤らめている。
俺が引いているのにも関わらず、アーモンは次々と“見てきたこと”を熱弁する。
フランのカーディガンを盗んだ男の話や、フランに手を出そうとする男を俺が蹴散らしていた話……つらつらと語るうちにさらに興奮し始めて──
「フラン様が大好きすぎて、手を出せないサモン様が尊すぎ!」
「──ほぉ?」
「……ぁ、っ! 僕……っ」
アーモンは口を手で押さえて、また青ざめた。
「貴様、俺がフランを好きだと言ったか?」
「ひ……」
俺は全身から黒い靄を溢れさせた。
アーモンが見ていたのは、フランと俺。
俺まで見て、どうするつもりだ。今のことをフランに伝えるならば、排除しなければならない。
俺が視線をきつくすると、アーモンは小声で「……申し訳ありません」と謝罪してきた。
「お二人がお似合いだから、勝手に妄想していただけです」
「……」
「誓って、お二人の邪魔をするつもりはありません」
お似合い……
俺とフランが?
「……貴様は商売人の息子だったな?」
「え、はい」
急に話を変えたことに、アーモンは驚きながら頷いた。
なるほど。
この男、なかなかに人が欲しい言葉を見抜く力がある。
はじめてフランの傍にいることを誰かに肯定された。
──俺とフランがお似合いなど有り得ないのに。
怒りは消え、フンッと鼻で息を吐いた。
もういけ、と俺はアーモンに声をかけた。
「あ、あの! 図々しいのは承知ですが、これからもお二人を見てもいいでしょうか。僕に出来ることがあれば──例えば、人避けなど、是非お二人のご協力させてください!」
「貴様にメリットは何もないが?」
そう言うと、アーモンがまた眼鏡をくいっと指であげた。
「お二人を間近でみつめること、それが僕にとって一番うれしいことですよ」
◇◇◇
「アーモン君とサモン君って、仲いいよねぇ」
俺とフランと、それからアーモン。
この三人で茶を啜ることは珍しくなく、今日も三人で集まっていたら、フランがそう言った。
「えぇえっ、光栄ですが、恐れ多いですよ!」
「……」
フランは俺とアーモンを見比べて、「ふふふ」と笑った。
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