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「下がれ。」
スミの静かな低い声が響くと、魔族たちは頭を下げて去っていった。
はぁっとスミの深いため息。
魔王城に来て以来、スミの笑顔は見ていない。いつも険しい顔をして部下の魔族たちの報告を受けている。
最近のスミの口癖は「面倒くさい。」だ。
確かに報告を受ける内容が、争いの仲介などで魔王が直接関わらなくてはいけない事なのか?という案件ばかりなのだ。
スミが面倒くさいと言う理由も分かる。
日中は、寝室とは別の魔王専用の部屋にいる。
そこは、多分スミの趣味じゃないだろうなと思うデカいシャンデリア、豪華な椅子や机、家具や本が並んでいる。
如何にも王の為に作られた部屋という感じだ。
その豪華な部屋の中で堂々とポリポリとポテトチップスを食べる俺。
だって、暇なんだもん。
スミは、俺を傍に置きたがるので、日中もこうして傍にいるようになった。朝から晩までべったりなのはどうかと思うが、スミの気の済むようにさせてやりたい。
ただ、思った以上に魔王の仕事が多くて傍にいる俺は暇なんだ。
次に部屋に入ってきたのは、キャタだった。
キャタは俺がポリポリとポテトチップスを食べている姿を見て、悲鳴を上げた。
「に、人間!!お前、この部屋は高貴なる魔王様が作業なされる場所だぞ!?そんな低俗なモノを食すなど、言語道断!!」
ポテトチップスが低俗?…だ、と?
俺は、ポテトチップスを持って立ち上がった。
「ふふふ。お前は何にも分かっていないな!これぞ!人間を魅力し続ける悪魔の食べ物なのだ。一度食べると、健康に良くないと分かっても何度も食べたくなる食べ物だ。これを知らないなど魔族も落ちたものよっ!!」
「何?」
俺は、ササっとキャタの薄い口にポテトチップスを入れてやった。ぽりっと噛んだ。
「!!」
キャタの目が美味しいと言っている。そうであろう。
「この薄さ。この薄さがいいんだ。分かるか?」
コクコクとキャタが頷いた瞬間、魔法弾が勢いよく飛んできた。
「!!」
それを直撃したキャタは魔王室を突っ切って外まで弾き飛ばされた。
「…‥‥へ?」
俺は、魔法弾を飛ばした方を見た。スミが物凄い勢いで俺を睨んでいる。何?なんで睨んでいるの?
さっきの当たったの魔族のキャタじゃなくて俺だったら木端微塵だぞ?
魔王室はすぐさま魔力により元通りに復活した。
「なんで?キャタは何も悪くねぇじゃねぇかっ!」
「目ざわりだ。」
スミは、俺を見てまた視線を机に戻した。
「……。」
やっぱり、思春期の多感な時期に見守ってやれる親的存在を失ったからか?だから、そんな風におかしな方向にひねくれちゃったのか。
不機嫌なスミに近づいた。何書いているのかちっとも分からない魔族の言葉が並んでいる。これをスミは読んでいるのだから凄い。なんかカクカクした文字が並んでいるようにしか見えない。
俺は、スミの口にポテトチップスを咥えさせた。
「まぁ、気を立てんなって。」
スミが嫌がらなかったので、スミの口の中にポテトチップスが消える度、口の中に放り込んだ。
スミは別人のようになってしまったし凶暴な所もあるけれど、ある意味素直でやりやすい所もある。こういう風に俺からスミに触れる事も良しとされている。
「オークもこれをよく好んで食べていた。」
「そうか。」
「お前は不思議だ。」
スミは、まだオークの俺を探していた。魔王城を出る時は決まってオークを探しているのだとキャタが教えてくれた。
だけど、スミがオークの事を呟く回数は徐々に減っていったので、このまま様子を見ていてもいいのかもしれない。
そんなスミとの生活も2か月が過ぎた頃だ。
スミとの生活は初めこそ、強引な関係を結んでしまったが、徐々に俺という存在に心を許してくれているような気がする。
その事が少し嬉しくて、ふふんっどうだ!と魔族達に自慢したくなるのを堪える。絶対懐かない猫を懐かせた感じに似ているな。
いつものように城内をぶらぶらと散歩していた。
城外が何やら騒がしいので、ひょいっと魔王城のバルコニーから城外を覗いた。
すると、城門前で魔族が騒いでいる。何かを囲んでいる。
「何?集まっているんだ?」
あれは……!
俺は、急いで階段を下りて、城門前へと向かった。
「犬(人間)!!」
そこには、三人の魔族に取り押さえられている犬(人間)の姿があった。
「主人っ!!」
俺を見た犬(人間)は大喜びで嬉しそうな顔をしたが、魔族に痛めつけられていたのか、その身体はボロボロになって身体中から出血している。かまいたちのような物で切りつけたような細かい傷。こいつら、少しずつ痛めつけていたなっ!
魔族がニヤニヤと笑っている。ギッと魔族達を睨んだ。
「こいつのケガ、お前達がやったのか?」
「あ~?お前の知り合いかよぉ。」
3人がかりで犬(人間)を痛めつけてたのかよ。最低だな。きっと、犬(人間)は俺を探して魔王城まで一人で来てくれたんだ。
犬(人間)は攻撃力が弱いのに三人がかりで嬲りやがったな……!!
「犬(人間)から手を離せ。」
「はぁ?なんでお前のいう、ごっ!っ!!」
ぐはわぁっと魔族の一人を張り手で吹っ飛ばした。驚いた二人も同様にいつもの倍の力を込めて張り手をくらわせた。
初めの一人を除いては、張り手を繰り出す速さが人間の身体の限界があったのだろう。普段より遅い攻撃になってしまった。そのせいで、少し避けるタイミングを作らせてしまい、急所に当たらなかった。
「ぐっ、お前やるな。」
攻撃をくらった魔族が顔を歪ませる。
「初めに張り手食らった奴、のびてるよ?え?一撃必殺ってやつ?」
流石、魔族というべきだろう。急所を外したとは言え、俺の張り手を食らっても平気そうだ。
「犬(人間)は俺のツレだ。手を出すな。許さないぞ。」
俺は、犬(人間)の前に立った。
「しゅ・・・しゅじぃん、超カッコいい♡ラブィ♡」
はぁはぁっと人間の姿で息を粗くすんな。気持ち悪いだろう。
俺は、ファイティングポーズをとる。三人がかりでも負けたりしない!
すると、魔族がはぁっとため息をついた。
「魔王様のお気に入りに手を出したら、魔王様にケシカスにされちゃうからなぁ。」
「やめとこうぜ。」
確かに、ここ最近のスミは俺に近づく魔族への当たりが酷い。時折大きな魔法弾を撃ち込まれている。
「おい。犬(人間)の治療をする。お前たちはどこかへ行け。」
魔族はへいへい。と分かったのか分かっていないのか適当な相打ちをした。それから気絶している奴を連れて城内へ戻っていった。その様子を見て、犬(人間)の方へ振り返った。
「犬(人間)大丈夫か?」
俺は、しゃがんで犬の状態を確かめる。出血はしているが大したことはなさそうだ。
「すまん。回復薬持っていないんだ。立てるか?」
「足を捻挫した。無理。おぶって。」
そう言った犬(人間)の足は赤く腫れていた。
俺は、犬(人間)の身体を背中におぶさった。ここで手当てしてあげたいが魔族は意地悪な奴が多いから森に入った。
魔王城の周りは森林が覆い茂っていてよかった。まぁ、森林というより、魔の森って感じの森なんだけど。
「犬(人間)、来てくれているの分からなくて助けるの遅くなったな。」
俺は、犬(人間)の身体を地面へ降ろした。
「大丈夫。それより、なんで魔王城から戻ってこないんだよ。俺、心配したんだからっ!」
「ごめん。心配してくれてありがとうな。」
とりあえず、犬(人間)の事は安全な位置まで送り届けてやらないと。
俺は、服を脱いで破って犬(人間)の出血部分をクルクルと巻いて止血した。
それから、さらに犬(人間)を背負って森林を抜けて数時間歩いて精霊の森へとやってきた。
「こんな所に精霊が……?」
犬(人間)が驚いている。俺は頷いた。何故か昔から精霊には縁があった。引っ越ししても割と近くに精霊は住み始めるんだ。
精霊の森へと深く入っていくと蛍の光のような小さい光が俺の身体の周りを飛ぶ。
「相変わらず、精霊にも愛されていますね。そんな生物は主人だけっすよ。」
あっという間に精霊たちの光で俺の身体は光り始める。
俺は、目をつぶった。
意識を集中して言葉ではなく念で対話する。精霊の声は聞き取れない。いつもクスクスと笑っているような声がする。いつも一方通行だが、俺が念じた事は向こうには伝わっているようなのだ。
ふわふわと光が漂う中、手のひらの中にコロンコロンと二本の回復薬が落ちてきた。
「ありがとう。」
俺は、目をつぶったまま、精霊にお礼を言った。ふわふわと温かな光が俺の身体に擦り付けるみたいに引っ付いてくる。
それから、その回復薬を犬(人間)に飲ませてやった。
元気になった犬(人間)は立ち上がった。
さすがっと俺に抱き着いてきた。俺もよしよしと背中をさすった。
精霊の森は俺にとても優しいが、長くいると吸い込まれるような感覚がする危険な場所でもあった。
精霊たちへの最大の感謝を念に込めて、精霊の森を出る。
「主人、山へ戻ろう。」
精霊の森を出ると、犬(人間)が声をかけた。
「いや、俺は魔王城に住むから。」
即答で答えると、なんで?と怪訝な顔をして犬(人間)が言う。
「・・・なんでか。なんでなんだろうなぁ。初めに好きになってくれた人間だったからかなぁ。」
「はぁ?」
独り言のように呟いた。
スミの事を考えると、物凄く人間っぽい考え方がよぎったが、犬が俺の肩をゆさゆさと揺さぶるので、その考えが消えた。
「ダメだよ。あのね、今、人間達が魔王城に迫ってきているんだ。このままだと主人の身に危険が及ぶよ。今は魔王側より人間側の方が遥かに恐ろしいよ。とても禍々しい気を感じるんだ。」
「本当か!?人間達が迫っているのか!?」
「うん。この目で見たんだ。どうやってあんな力を人間が手に入れたのか分からないけど、とても力を持って魔王城に向かっている。」
それ、早く言えよっ!!
スミの静かな低い声が響くと、魔族たちは頭を下げて去っていった。
はぁっとスミの深いため息。
魔王城に来て以来、スミの笑顔は見ていない。いつも険しい顔をして部下の魔族たちの報告を受けている。
最近のスミの口癖は「面倒くさい。」だ。
確かに報告を受ける内容が、争いの仲介などで魔王が直接関わらなくてはいけない事なのか?という案件ばかりなのだ。
スミが面倒くさいと言う理由も分かる。
日中は、寝室とは別の魔王専用の部屋にいる。
そこは、多分スミの趣味じゃないだろうなと思うデカいシャンデリア、豪華な椅子や机、家具や本が並んでいる。
如何にも王の為に作られた部屋という感じだ。
その豪華な部屋の中で堂々とポリポリとポテトチップスを食べる俺。
だって、暇なんだもん。
スミは、俺を傍に置きたがるので、日中もこうして傍にいるようになった。朝から晩までべったりなのはどうかと思うが、スミの気の済むようにさせてやりたい。
ただ、思った以上に魔王の仕事が多くて傍にいる俺は暇なんだ。
次に部屋に入ってきたのは、キャタだった。
キャタは俺がポリポリとポテトチップスを食べている姿を見て、悲鳴を上げた。
「に、人間!!お前、この部屋は高貴なる魔王様が作業なされる場所だぞ!?そんな低俗なモノを食すなど、言語道断!!」
ポテトチップスが低俗?…だ、と?
俺は、ポテトチップスを持って立ち上がった。
「ふふふ。お前は何にも分かっていないな!これぞ!人間を魅力し続ける悪魔の食べ物なのだ。一度食べると、健康に良くないと分かっても何度も食べたくなる食べ物だ。これを知らないなど魔族も落ちたものよっ!!」
「何?」
俺は、ササっとキャタの薄い口にポテトチップスを入れてやった。ぽりっと噛んだ。
「!!」
キャタの目が美味しいと言っている。そうであろう。
「この薄さ。この薄さがいいんだ。分かるか?」
コクコクとキャタが頷いた瞬間、魔法弾が勢いよく飛んできた。
「!!」
それを直撃したキャタは魔王室を突っ切って外まで弾き飛ばされた。
「…‥‥へ?」
俺は、魔法弾を飛ばした方を見た。スミが物凄い勢いで俺を睨んでいる。何?なんで睨んでいるの?
さっきの当たったの魔族のキャタじゃなくて俺だったら木端微塵だぞ?
魔王室はすぐさま魔力により元通りに復活した。
「なんで?キャタは何も悪くねぇじゃねぇかっ!」
「目ざわりだ。」
スミは、俺を見てまた視線を机に戻した。
「……。」
やっぱり、思春期の多感な時期に見守ってやれる親的存在を失ったからか?だから、そんな風におかしな方向にひねくれちゃったのか。
不機嫌なスミに近づいた。何書いているのかちっとも分からない魔族の言葉が並んでいる。これをスミは読んでいるのだから凄い。なんかカクカクした文字が並んでいるようにしか見えない。
俺は、スミの口にポテトチップスを咥えさせた。
「まぁ、気を立てんなって。」
スミが嫌がらなかったので、スミの口の中にポテトチップスが消える度、口の中に放り込んだ。
スミは別人のようになってしまったし凶暴な所もあるけれど、ある意味素直でやりやすい所もある。こういう風に俺からスミに触れる事も良しとされている。
「オークもこれをよく好んで食べていた。」
「そうか。」
「お前は不思議だ。」
スミは、まだオークの俺を探していた。魔王城を出る時は決まってオークを探しているのだとキャタが教えてくれた。
だけど、スミがオークの事を呟く回数は徐々に減っていったので、このまま様子を見ていてもいいのかもしれない。
そんなスミとの生活も2か月が過ぎた頃だ。
スミとの生活は初めこそ、強引な関係を結んでしまったが、徐々に俺という存在に心を許してくれているような気がする。
その事が少し嬉しくて、ふふんっどうだ!と魔族達に自慢したくなるのを堪える。絶対懐かない猫を懐かせた感じに似ているな。
いつものように城内をぶらぶらと散歩していた。
城外が何やら騒がしいので、ひょいっと魔王城のバルコニーから城外を覗いた。
すると、城門前で魔族が騒いでいる。何かを囲んでいる。
「何?集まっているんだ?」
あれは……!
俺は、急いで階段を下りて、城門前へと向かった。
「犬(人間)!!」
そこには、三人の魔族に取り押さえられている犬(人間)の姿があった。
「主人っ!!」
俺を見た犬(人間)は大喜びで嬉しそうな顔をしたが、魔族に痛めつけられていたのか、その身体はボロボロになって身体中から出血している。かまいたちのような物で切りつけたような細かい傷。こいつら、少しずつ痛めつけていたなっ!
魔族がニヤニヤと笑っている。ギッと魔族達を睨んだ。
「こいつのケガ、お前達がやったのか?」
「あ~?お前の知り合いかよぉ。」
3人がかりで犬(人間)を痛めつけてたのかよ。最低だな。きっと、犬(人間)は俺を探して魔王城まで一人で来てくれたんだ。
犬(人間)は攻撃力が弱いのに三人がかりで嬲りやがったな……!!
「犬(人間)から手を離せ。」
「はぁ?なんでお前のいう、ごっ!っ!!」
ぐはわぁっと魔族の一人を張り手で吹っ飛ばした。驚いた二人も同様にいつもの倍の力を込めて張り手をくらわせた。
初めの一人を除いては、張り手を繰り出す速さが人間の身体の限界があったのだろう。普段より遅い攻撃になってしまった。そのせいで、少し避けるタイミングを作らせてしまい、急所に当たらなかった。
「ぐっ、お前やるな。」
攻撃をくらった魔族が顔を歪ませる。
「初めに張り手食らった奴、のびてるよ?え?一撃必殺ってやつ?」
流石、魔族というべきだろう。急所を外したとは言え、俺の張り手を食らっても平気そうだ。
「犬(人間)は俺のツレだ。手を出すな。許さないぞ。」
俺は、犬(人間)の前に立った。
「しゅ・・・しゅじぃん、超カッコいい♡ラブィ♡」
はぁはぁっと人間の姿で息を粗くすんな。気持ち悪いだろう。
俺は、ファイティングポーズをとる。三人がかりでも負けたりしない!
すると、魔族がはぁっとため息をついた。
「魔王様のお気に入りに手を出したら、魔王様にケシカスにされちゃうからなぁ。」
「やめとこうぜ。」
確かに、ここ最近のスミは俺に近づく魔族への当たりが酷い。時折大きな魔法弾を撃ち込まれている。
「おい。犬(人間)の治療をする。お前たちはどこかへ行け。」
魔族はへいへい。と分かったのか分かっていないのか適当な相打ちをした。それから気絶している奴を連れて城内へ戻っていった。その様子を見て、犬(人間)の方へ振り返った。
「犬(人間)大丈夫か?」
俺は、しゃがんで犬の状態を確かめる。出血はしているが大したことはなさそうだ。
「すまん。回復薬持っていないんだ。立てるか?」
「足を捻挫した。無理。おぶって。」
そう言った犬(人間)の足は赤く腫れていた。
俺は、犬(人間)の身体を背中におぶさった。ここで手当てしてあげたいが魔族は意地悪な奴が多いから森に入った。
魔王城の周りは森林が覆い茂っていてよかった。まぁ、森林というより、魔の森って感じの森なんだけど。
「犬(人間)、来てくれているの分からなくて助けるの遅くなったな。」
俺は、犬(人間)の身体を地面へ降ろした。
「大丈夫。それより、なんで魔王城から戻ってこないんだよ。俺、心配したんだからっ!」
「ごめん。心配してくれてありがとうな。」
とりあえず、犬(人間)の事は安全な位置まで送り届けてやらないと。
俺は、服を脱いで破って犬(人間)の出血部分をクルクルと巻いて止血した。
それから、さらに犬(人間)を背負って森林を抜けて数時間歩いて精霊の森へとやってきた。
「こんな所に精霊が……?」
犬(人間)が驚いている。俺は頷いた。何故か昔から精霊には縁があった。引っ越ししても割と近くに精霊は住み始めるんだ。
精霊の森へと深く入っていくと蛍の光のような小さい光が俺の身体の周りを飛ぶ。
「相変わらず、精霊にも愛されていますね。そんな生物は主人だけっすよ。」
あっという間に精霊たちの光で俺の身体は光り始める。
俺は、目をつぶった。
意識を集中して言葉ではなく念で対話する。精霊の声は聞き取れない。いつもクスクスと笑っているような声がする。いつも一方通行だが、俺が念じた事は向こうには伝わっているようなのだ。
ふわふわと光が漂う中、手のひらの中にコロンコロンと二本の回復薬が落ちてきた。
「ありがとう。」
俺は、目をつぶったまま、精霊にお礼を言った。ふわふわと温かな光が俺の身体に擦り付けるみたいに引っ付いてくる。
それから、その回復薬を犬(人間)に飲ませてやった。
元気になった犬(人間)は立ち上がった。
さすがっと俺に抱き着いてきた。俺もよしよしと背中をさすった。
精霊の森は俺にとても優しいが、長くいると吸い込まれるような感覚がする危険な場所でもあった。
精霊たちへの最大の感謝を念に込めて、精霊の森を出る。
「主人、山へ戻ろう。」
精霊の森を出ると、犬(人間)が声をかけた。
「いや、俺は魔王城に住むから。」
即答で答えると、なんで?と怪訝な顔をして犬(人間)が言う。
「・・・なんでか。なんでなんだろうなぁ。初めに好きになってくれた人間だったからかなぁ。」
「はぁ?」
独り言のように呟いた。
スミの事を考えると、物凄く人間っぽい考え方がよぎったが、犬が俺の肩をゆさゆさと揺さぶるので、その考えが消えた。
「ダメだよ。あのね、今、人間達が魔王城に迫ってきているんだ。このままだと主人の身に危険が及ぶよ。今は魔王側より人間側の方が遥かに恐ろしいよ。とても禍々しい気を感じるんだ。」
「本当か!?人間達が迫っているのか!?」
「うん。この目で見たんだ。どうやってあんな力を人間が手に入れたのか分からないけど、とても力を持って魔王城に向かっている。」
それ、早く言えよっ!!
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