有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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アルバイト ②

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 入り口で隼人は、5分ほど悩んだ末にビルの急階段を昇り、有限会社DIDU事務所のドアを恐る恐るゆっくりと開けた。
「あのー、失礼します」
「儂の言った通り、来たぞ!」
 うーん、隼人はどこか聞き覚えのある声に反応する。
「さあ、どうぞお入り下さい」
 声の方に隼人が顔を向けると、事務服なのか、今はオフィスウェアとも呼ばれる服を着た女性が目に入る。
 ボーとした表情の年上の女性。グリーンのタータンチェックのオーバーブラウス、胸元に大きなリボン、グレーのスカート姿から、この事務所で働く女性だと理解した。普通に会社で働く人だと感じると、彼の心の中の不安が和らぐ。
 ソファの前にあるテーブルには、入れたばかりのお茶が用意されている。自分が来ることを察していたかの様だ。
「入りなさい」と、正人は入り口に立ったままの隼人に声を掛けた。
 隼人は正人を見て不思議に感じる。彼は、部屋の中なのに薄茶色のサングラスをかけている。隼人は、言われるまま案内されたソファに座った。
 古びた事務室を彼は見渡す。15坪ぐらいの広さ、奥に給湯室とトイレがある。机は5つあったが、パソコンや資料が並んでいる机は2つしか無い。
「あのー、僕が住んでいるアパートの大家さんに、ここの住所が書かれたメモを渡されたのですが」
「儂の読み通りだろ」
 聞き覚えのある長老の声に隼人の疑念は更に増す。誰か年配の方がこの事務所に居るのかと、彼は周囲を探す。
 彼の視界には、スーツ姿の男性と事務服を着た女性しかいない。
 背の低い棚の上で寝そべるアパートの廊下で見た猫を見つけた。
 声の主は、まさかあの猫じゃないよな。
「単刀直入に聞くが、アルバイトをしないか?」と、正人はキョロキョロする隼人に仕事への勧誘をする。
「そうです! 俺、いや、僕はアルバイトを探していたのですよ」
「それじゃ、丁度、都合が良かったのかな」
「仕事の条件と給料の金額にもよりますが・・・」
「条件は、良いよ。私は、ここの支部長をしている鬼塚正人だ」
 正人の申し出は嬉しかったが、彼の風貌や事務所の雰囲気からは、どんな仕事をしているのか想像出来ないことが、隼人の頭に引っかかった。
全国に支部がある会社なのか? 
 どんな仕事をしているのだろう、興味はあるが聞きにくい。

 仕事の内容は後にして先に給料に関して聞いてみようと、彼は緊張で少し乾いた唇を動かす。
「僕は、大学生なのですが、生活費を稼がないといけないので、バイト料は幾ら貰えるのでしょうか?」
「時給で3千円。日給なら2万5千円でどうだ」
「そんなに貰えるのですか?」
 ニュースで話題の裏バイトが隼人の頭の中に浮かぶと、彼は落ち着きを無くしソワソワしだした。
 ヤバい、これは、きっとヤバい仕事に違いない。
 この人の風貌、大家さんのような高齢者の知り合い、もしかして・・・
 詐欺グループのリーダーじゃないだろうな!
 怖い、怖い、俺に善良な老人を騙す度胸など無い。
 こんな高額の訳ありバイトは出来ない。
 口を閉ざし黙り込む隼人の考えが彼の強張った表情で分かったのか、正人は彼が抱く誤解を解こうと説明をする。
「悪いが、俺達は犯罪グループでは無い。君が契約書にサインしてくれれば全て話してあげるが、高額なバイト料にはちゃんと理由がある」
「どんな、理由ですか?」
「普通の人には出来ない、危険な仕事だからだ」
「危険な仕事ですか?どんな内容なのですか?」
「命に係わると言うか、怪我すると言うか・・・」
 話の途中で言葉に詰まった正人に対して隼人は、話下手なのか、それとも上手く説明しようと言葉を選んでいるのか、もしそうなら誤解を解くどころか、あらぬ方向に話は進んでいないか。
「じれったい!何も言わず、契約書にサインさせろ」、長老の声に隼人は戸惑う。
 えっ、またあの声が聞こえる。かなり年配の男性の声がしたが、誰がしゃべったのだと隼人は慌てて周囲を見たが、おぼしき人物は見当たらない。
「茜、そいつを抑え込め。それで、正人、そいつの拇印を取れ」
 やっと長老の存在に気が付いた隼人が目にしたのは、ブルーのスカーフを巻いた茶白の猫が喋っている姿だった。彼は、驚きのあまり立ち上がると、喋る猫、長老を指さす。
「え、ええええええ・・・、あの猫、喋りましたよね?」
 驚く隼人に正人と茜は頭を抱え、やれやれと言った感じだ。
「長老、青年を驚かせないでくださいよ。話が進まなくなります」
「理解させるには、契約してから説明する方が早い。儂等の仕事は、一般人の知らぬ処だからな」
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