有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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豆狸 ②

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 正人がそう答えると、事務所ドアを無造作に叩く音がする。隼人はドアを開けたが、誰も居ない。しかし、声がするので下に目をやると風呂敷を背負う狸が二本足でちょこんと立っていた。
「た、狸?・・・あの、どちら様でしょうか?」
「やあ、初めまして。私は金長と申す、正人殿に呼ばれて来たのだが」
 正人と長老が入り口に立つ金長を見つけ、お久しぶりですと声を掛けると、金長は隼人に奥することなく事務所に入りソファに腰かけた。
「金長さん、遠い所を着ていただき有り難うございます」
「金長よ、久しぶりじゃの。元気にしていたか」
「金長さん、どうぞ」と、茜は駆け付け一杯とばかりに日本酒を持って来た。
「これは、これは、ありがく頂きましょう。京都のお酒は美味しいですな」
 狸、いやいや、金長とのやり取りを聞いていると隼人以外は、全員顔見知りのようだ。ドアノブを握ったまま、唖然と彼らのやり取りを見ていた隼人に正人が、紹介するから隣に座るよう促した。
「金長さん、彼は私達の新しい仲間の小坂隼人君です」
「隼人殿か、なかなか興味深い青年だな。若いのにどうやってその力を得たものか」
 金長と杯を交わしたくなった長老は、自分にも日本酒を茜に持ってこさせる、「さすが正一位の金長だな、小僧の中の龍に気が付いたか」
 
 話の中身が見えない隼人が一人取り残されていると、正人は彼に金長狸の説明をする。金長さんは、金長狸で徳島から今日の仕事の手伝いをする為、来てくれた。正一位と言うのは神階の最高位に匹敵する位で、彼は昔、阿波狸合戦を制した狸だ。合戦で瀕死の怪我を負ったものの、高い霊力を身に付ける彼は生き長らえたそうだ。
 正人と長老とは、何年か前に仕事を通して知り合ったらしい。それ以来、狸がらみの仕事の手伝いをお願いする事も多く、彼らと親しい付き合いをしていた。
 金長はゴソゴソと、渡し忘れていた荷物を風呂敷から出した。
「お土産だ、近所の農家の者がくれた物ですまんが」と、イチゴの入った箱を風呂敷から出した。
「有り難うございます!」と、正人の後ろから茜が目をランランと輝かせイチゴの箱を持って行った。
「今回の仕事なのですが、宅地開発をしている滋賀県の山中で、付近の狸が工事の邪魔や関係者に悪戯しているらしいのす。排除して欲しいと、依頼が来ているのですが。出来れば狸達には違う場所へ移動して欲しいので、金長さんには仲裁をお願いしたいのです」と、正人が仕事の話で場を仕切り直した。
「お安い御用だ、あれの準備が出来ているのなら、いつでも出発するぞ」
「準備は整っています。今晩、話し合いの場を設けられます」
「よし、では早速出発しようじゃないか」と、金長と長老がよろよろと千鳥足で歩き出した。
「隼人君、俺は車を表に持ってくるから荷物を下まで降ろしておいてくれないか」と、正人はふらふらの猫と狸を両脇に抱え事務所を出て行った。
「隼人君、これよ」と、給湯室の奥から茜が重そうに一升瓶が入ったケースを持って来た。
「酒ですか。今日の仕事は、酒盛りでもするのですか?」
「そうよ、人間と一緒ね。お酒を飲んで仲睦まじく円満な話し合いをするのよ」
「話し合いをする狸は、もちろん、妖怪ですよね?」
「そうよ、悪戯好きの豆狸が絡んでいるわね」
「はあ、荷物はこれだけですか?」
 茜は、ケースの上に酒の肴が入った袋と紙コップを載せた。
 隼人は、荷物を手に転ばないよう注意しながら急階段を降りて行った。

 車の中でも長老と金長は語り合いながら酒をチビチビ飲む。この間の悪魔との戦いとかけ離れた仕事内容に、隼人は思わずクスッと笑い声を漏らした。
「おかしい事でもあったか?」
「いや、以前、正人さんが話していた殺す必要が無い仕事の意味が分かったので」
「不思議だろ、悪魔や鬼とは死闘を演じ、話し合える妖怪とは平和的な解決を模索する。話し合える物の怪がいるから、俺はこの仕事を続けられているのかも知れないな」
「そうですね。全てが話し合いで解決できれば良いですが、本当に人と一緒ですね。話し合いが出来る相手も居れば、喧嘩になる事もあるし、国同士なら戦争になる場合だってある」
「忘れないうちに伝えておくが、今日は、とことん彼らに付き合わなければならない。隼人は、お酒大丈夫か?」
「はい、この間、死にかけた日で20歳になりましたよ」
「は、は、は、はっ、凄い記念日になったな・・・あ、笑ってごめんな」
「笑い事では無いですよ。死にかけたんですよ!」
「悪い、悪い。でも、それがきっかけになって龍の力が目覚めたんだから」
「確かに、そうですけど。力が強すぎて、僕としては複雑な心境ですよ」
「良いじゃないか、桜を守れたのだから」
「そうですね。仲間を助けられて、本当に良かったと思っています」
「これからは、その力も含めて頼りにしているからな、隼人」
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