有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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殺人鬼 ⑥

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 中が騒がしい、不穏な空気に正人は隼人に鉄の扉を開けろと声を荒らげた。
 床に座る茜の姿を見た正人は、ウガァーと一叫びする。
 椅子に座る小田川に飛び掛かると、彼の胸ぐらを掴み顔面を殴った。
 壁際の機械に体を打ちつけた小田川は、床に倒れて動かなくなった。
 理性を失った正人に隼人は、ヤバイと思い慌てて正人の体にしがみつく。
「正人さん、落ち着いてください。やり過ぎると相手を殺してしまいますよ」
「ウッ、グッ、グッワー。邪魔するな、殺してやる。絶対に許さない」
 普段の正人と明らかに違う。怒りに支配された正人は、相手を殺す事しか考えていない。必死にしがみつく隼人を振り払い、ヨロヨロと立ち上がった小田川の方へ歩いて行った。
「駄目だよ、それ以上やったら死んでしまう」と、隼人が叫んでもその声は届かないのか、正人は右足で小田川を蹴り上げた。
 入り口の方に蹴飛ばされた小田川は、床に倒れピクリとも動かなくなった。それでも、怒りはおさまらないのか正人は小田川の方に足を向ける。
「それ以上は、駄目」と、茜は正人に抱きつき怒り狂う彼にキスをした。
「うっ、あ、茜。大丈夫か、こんなに怪我をして。遅くなって悪かった」と、正人の鬼神化が解けた。
 茜だけが、正人の理性をコントロールできるのか。二人の過去に何があったのか、改めて隼人は気になる。

「まだじゃ、まだ終わっていないぞ」と、長老が声を上げた。
 隼人が小田川を見ると、彼は額から血を流しながら立ち上がる。
「終わったんじゃないのか? どうして立ち上がれるんだ」と、隼人は背中に寒気を感じた。
 正人の方へ歩く小田川の姿が変化していく。
 額の左右から角が伸びてくると、口から牙がむき出しになる。
 体と手足が巨大化し始め、体の色は赤く変化した。
 鬼の色には、意味がある。貪欲の赤鬼、憎悪の青鬼、執着の黄鬼、怠惰の緑鬼、疑心の黒鬼。
「鬼? 人間が赤鬼に変化したのか」と、隼人は龍の爪を出し身構えた。
「はぁー、もう人間じゃないから仕留めて良いか?」と、長老は大きな口を開ける。
 茜の肩に乗る四郎は、「すごーい、赤鬼になった」
 正人は走り出すと、赤鬼に変化した小田川の腹に拳を入れた。赤鬼は片足を地面に付けたが、正人の腕を取ると地面に彼を叩きつけた。
 龍の爪で攻撃しようと、隼人は小田川の前に立ちはだかった。

「全員、動くな」と、入り口から源一郎が歩いて来た。
「小坂君、人間は鬼になる事があるんだよ。彼は、殺人鬼だ。邪な思いや欲望のままに身を委ねるとね、理性を失い鬼と化す。覚えておきなさい」
「鬼になったら、もう、人間に戻れない・・・?」
 隼人の疑問に源一郎は、「彼、次第だな。戻れなければ、鬼のまま捕縛するかこの世から消えてもらまでだ」
 鬼と化した小田川は両手を組み腕を振り上げ、源一郎を頭上から叩き潰そうとする。源一郎は、難なく片手で小田川の攻撃を受け止めた。
 何か強い力が働いているのか、源一郎が手をかざすと、小田川は両膝を地面に付け跪いた。源一郎は、大祓詞おおはらえのことばを唱え始めた。
高天原たかあまはら神留かむづまりすめら親神漏岐神漏美むつかむろぎかむろみ命以みこともち八百万神等やおよろずのかみたちを。・・・今日の夕日のくだち大祓おおはらへに祓へ給ひ清め給ふ事を諸々聞食もろもろきこしめせとる」
 長く難解なことばを源一郎が唱え終わると、小田川はうめき声を上げた。
「ガッ、ガ、グガァー。俺は・・・誰だ、グッ、ガァー」と、小田川は床にうずくまると元の姿に戻った。
「す、凄い。これは、何が起こったのですか?」
「小坂君、驚いていないでそいつを縛り上げてくれ」
「は、はい。直ぐにやります」と、隼人は四郎が見つけて来た縄で小田川を縛った。
「正人、お前はまだ修行不足だな。父親の俺より動揺してどうするんだ」
 源一郎の言葉に正人は頭を掻きながら、「すいません。気を付けます」
 今回の事件で隼人は、人間の恐ろしさを知った。悪魔に魅了されたり憑りつかれたりするのとは違い、自らの行いで鬼と化してしまう人間。連続殺人犯の小田川の所業は、常識では理解出来ない領域だった。物の怪や悪魔なんかより、人間の方が遥かに残虐なのかも知れない。
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