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奇襲作戦 4
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下流は静かで、帝国兵の姿は無かった。攻撃による爆発音が遠くから聞こえて来るが、それでも川のせせらぎが聞こえるほどだった。
「春馬、この辺だと巡回している兵隊さんは、居ないのかな」
狼の背から下りヴェルガに近づく春馬は、リリカに待つよう合図を送った。
「ヴェルガは、ここで待機しててくれ」
「はい、ここで帰りをお待ちします」
もし兵士達がこの辺に現れたら、速やかに排除するよう春馬は、ヴェルガに頼んだ。最悪の場合は、春馬の帰りを待たず撤退する事も約束した。
帝国国内に侵入するためには、目の前の大河を越えなければならない。泳いで渡る訳にはいかないので、春馬はリリカに魔法で壁を乗り越える策を教える。
「このまま川を泳いで渡って、壁を登るの? それとも魔法で壊しちゃう」
「いいや、リリカには土魔法で土台を作ってもらう」
「橋じゃなくて、土台なの?」
「石柱をいくつか出すだけで良いんだよ。グレートウルフなら石柱に飛び移りながら、川と壁を超えられるから」
「そっか、イメージとしては、大きな柱よね」
「そうだ、それなら魔力の消費も抑えられるだろう」
3メートル四方の正方形をした石柱が、50メートルほどの間隔をあけて、川の中から国境の壁に向かって突き出てきた。
グレートウルフの身体機能は非常に高い、時速100キロ以上のスピードで走れ、ジャンプ力は身長の10倍になる。土台さえあれば、大河でも壁でも簡単に乗り越えられる。
川の中から現れた石柱を足場にグレートウルフは、いとも容易く川を渡り切り、国境の壁を飛び越えた。
帝国内に入れば、後は武器工場の破壊を残すのみだ。
二人を乗せた狼は、目的を果たすため暗闇の中を音もたてずに走り抜けた。
牧草地を越えると、麦や野菜などを栽培している農地が広がり始めた。農家が点在していたいが、明かりの灯る家は無い。深夜だし現在戦闘中の国境からは、離れているから静かだ。みんな寝ているのだろう。
更にスピードを上げて進むと町に入った。
建物が増えると同時に地道から整備された道路へと変化した。アスファルトなのか、コンクリートなのか、帝国内の道は綺麗に舗装されている。
低層の倉庫がいくつも集まり並ぶ、帝国郊外の工業地帯には数時間で到着した。グレートウルフが居なければ、まだ牧草地を歩いていただろう。
似たような外見なので、どの建物で武器を製造しているのか、何処で火薬の保管しているのか見分けがつかない。
工場から少し離れた所では、会社や事務所なのか2階建と3階建てのビルが並んでいた。
「リリカ、火の魔法でこの工場と倉庫群を焼き払って欲しい」
コンクリート製の建物を炎で燃やし尽くすのは、かなりの火力が必要となる。それを実現させるために春馬は、リリカに火を放った後は、風の魔法で炎の威力を増すよう伝えた。
上手く行けば、火災旋風を起こすことが出来るかも知れないと思ったからだ。
「いいか、疲れたら直ぐに魔法を使うのを止めるんだぞ」
「分かってます、倒れないように気を付けるから、心配しないで」
「じゃあ、早速だけど、始めようか」
「行きますよー」、リリカが両手を前に伸ばしゆっくりと口を動かした、「我に従え火と風よ、力を合わせ地獄の業火を作りたまえ。ヘルファイアー!」
工場と倉庫が、オレンジ色の炎に包まれた。
追いかける様に魔法で発生した風が炎へと吸い込まれていく。炎の色が変化したので、火力が強くなっていくのが分かった。
「やあー」と、気合の入った掛け声をリリカが発した。
イメージ通りの炎と風を魔法で創り出せた。
継続して風を送り込むと、風は下から上空へと渦を巻きながら上昇し、炎を大きな火柱へと変化させた。
周りの建物も巻き込み、次々に延焼していく。しかし、これではただの火災だ。全ての工場と倉庫を焼き尽くすには、時間がかかる。
「順調なんだけど、どこも爆発しないな」、春馬の顔が炎で赤く照らされる。
そろそろ火事に気付き人が集まるかも知れないので、少し離れた3階建てのビルの屋上へ魔法に集中するリリカを抱きかかえて移動した。
「後は上手く風を操り、火災旋風が発生したら御の字なのだけど」
ざわざわと、人が集まり始めた。どうやら火を消そうと、魔法士と消防士が消火作業にやって来たようだった。
「まずいな、早く火薬庫に火が回らないのか、爆発を起こさないと」
火災から発生した熱風が、ビルに吹きつける。皮膚にじりじりと熱が伝わり、春馬が目を細めた時、目の前の火柱に異変が起こった。
風は渦を成し火柱を上空へ巻き上げ始めた。
そしてそのまま火を纏う竜巻となりうねり出す。その姿は、まるで竜だ。まさに火竜が口を開き唸りながら天に伸びていく姿だった。
「春馬、何あれ、何が起こったの」
「あれは、火災旋風だよ。よし、集中して、そのまま風を送り込んでくれ」
これだけの威力に成長した炎なら、そう簡単に消火できない。
懸命にリリカが魔法で風を送り込み続けると、更に2つの火災旋風が出来た。
炎を纏う3つの火竜は、それぞれ静止したまま轟音を響かせた。
リリカから見て一番遠くにある火災旋風が、ゆっくりと動き出し、奥の工場に向かって移動を始めた。
その工場はレンガ造りの建物で、入り口は鉄製のドアで守られていた。
重要な物を保管しているのか、他の建物と異なる外観だった。その工場を火災旋風が、風と炎で破壊して行く。建物の中が炎で包まれると、直ぐに爆発音が響き渡った。
工場の爆発は、花火工場の火災と同じ光景を作り出した。花火が夜空に打ち上げられるように、パッと明るく空で光ると少し遅れて爆発音が耳に届く。
工場内に保管されていた火薬や弾丸が爆発し弾け、周囲の工場や倉庫を次々に破壊して行く。
「あわわわ、大火事になっちゃたけど、これって成功?」
「もういいぞ。奇襲攻撃は、無事成功だ」
リリカは額から流れ落ちる汗を手で拭った、「ふう、結構、疲れたね」
炎を巻き上げる火災旋風だ、3つも発生させたのだから、消化にあたる魔法士も消防士も苦戦を強いられるだろう。これでこの一帯の工場も倉庫も全滅するはずだ。
最後まで気を抜かず、誰にも見つからないように、後はこの場所から離れなければならない。暫く消えそうにない炎と爆発音を背に二人は、来た道を戻って行った。
「春馬、この辺だと巡回している兵隊さんは、居ないのかな」
狼の背から下りヴェルガに近づく春馬は、リリカに待つよう合図を送った。
「ヴェルガは、ここで待機しててくれ」
「はい、ここで帰りをお待ちします」
もし兵士達がこの辺に現れたら、速やかに排除するよう春馬は、ヴェルガに頼んだ。最悪の場合は、春馬の帰りを待たず撤退する事も約束した。
帝国国内に侵入するためには、目の前の大河を越えなければならない。泳いで渡る訳にはいかないので、春馬はリリカに魔法で壁を乗り越える策を教える。
「このまま川を泳いで渡って、壁を登るの? それとも魔法で壊しちゃう」
「いいや、リリカには土魔法で土台を作ってもらう」
「橋じゃなくて、土台なの?」
「石柱をいくつか出すだけで良いんだよ。グレートウルフなら石柱に飛び移りながら、川と壁を超えられるから」
「そっか、イメージとしては、大きな柱よね」
「そうだ、それなら魔力の消費も抑えられるだろう」
3メートル四方の正方形をした石柱が、50メートルほどの間隔をあけて、川の中から国境の壁に向かって突き出てきた。
グレートウルフの身体機能は非常に高い、時速100キロ以上のスピードで走れ、ジャンプ力は身長の10倍になる。土台さえあれば、大河でも壁でも簡単に乗り越えられる。
川の中から現れた石柱を足場にグレートウルフは、いとも容易く川を渡り切り、国境の壁を飛び越えた。
帝国内に入れば、後は武器工場の破壊を残すのみだ。
二人を乗せた狼は、目的を果たすため暗闇の中を音もたてずに走り抜けた。
牧草地を越えると、麦や野菜などを栽培している農地が広がり始めた。農家が点在していたいが、明かりの灯る家は無い。深夜だし現在戦闘中の国境からは、離れているから静かだ。みんな寝ているのだろう。
更にスピードを上げて進むと町に入った。
建物が増えると同時に地道から整備された道路へと変化した。アスファルトなのか、コンクリートなのか、帝国内の道は綺麗に舗装されている。
低層の倉庫がいくつも集まり並ぶ、帝国郊外の工業地帯には数時間で到着した。グレートウルフが居なければ、まだ牧草地を歩いていただろう。
似たような外見なので、どの建物で武器を製造しているのか、何処で火薬の保管しているのか見分けがつかない。
工場から少し離れた所では、会社や事務所なのか2階建と3階建てのビルが並んでいた。
「リリカ、火の魔法でこの工場と倉庫群を焼き払って欲しい」
コンクリート製の建物を炎で燃やし尽くすのは、かなりの火力が必要となる。それを実現させるために春馬は、リリカに火を放った後は、風の魔法で炎の威力を増すよう伝えた。
上手く行けば、火災旋風を起こすことが出来るかも知れないと思ったからだ。
「いいか、疲れたら直ぐに魔法を使うのを止めるんだぞ」
「分かってます、倒れないように気を付けるから、心配しないで」
「じゃあ、早速だけど、始めようか」
「行きますよー」、リリカが両手を前に伸ばしゆっくりと口を動かした、「我に従え火と風よ、力を合わせ地獄の業火を作りたまえ。ヘルファイアー!」
工場と倉庫が、オレンジ色の炎に包まれた。
追いかける様に魔法で発生した風が炎へと吸い込まれていく。炎の色が変化したので、火力が強くなっていくのが分かった。
「やあー」と、気合の入った掛け声をリリカが発した。
イメージ通りの炎と風を魔法で創り出せた。
継続して風を送り込むと、風は下から上空へと渦を巻きながら上昇し、炎を大きな火柱へと変化させた。
周りの建物も巻き込み、次々に延焼していく。しかし、これではただの火災だ。全ての工場と倉庫を焼き尽くすには、時間がかかる。
「順調なんだけど、どこも爆発しないな」、春馬の顔が炎で赤く照らされる。
そろそろ火事に気付き人が集まるかも知れないので、少し離れた3階建てのビルの屋上へ魔法に集中するリリカを抱きかかえて移動した。
「後は上手く風を操り、火災旋風が発生したら御の字なのだけど」
ざわざわと、人が集まり始めた。どうやら火を消そうと、魔法士と消防士が消火作業にやって来たようだった。
「まずいな、早く火薬庫に火が回らないのか、爆発を起こさないと」
火災から発生した熱風が、ビルに吹きつける。皮膚にじりじりと熱が伝わり、春馬が目を細めた時、目の前の火柱に異変が起こった。
風は渦を成し火柱を上空へ巻き上げ始めた。
そしてそのまま火を纏う竜巻となりうねり出す。その姿は、まるで竜だ。まさに火竜が口を開き唸りながら天に伸びていく姿だった。
「春馬、何あれ、何が起こったの」
「あれは、火災旋風だよ。よし、集中して、そのまま風を送り込んでくれ」
これだけの威力に成長した炎なら、そう簡単に消火できない。
懸命にリリカが魔法で風を送り込み続けると、更に2つの火災旋風が出来た。
炎を纏う3つの火竜は、それぞれ静止したまま轟音を響かせた。
リリカから見て一番遠くにある火災旋風が、ゆっくりと動き出し、奥の工場に向かって移動を始めた。
その工場はレンガ造りの建物で、入り口は鉄製のドアで守られていた。
重要な物を保管しているのか、他の建物と異なる外観だった。その工場を火災旋風が、風と炎で破壊して行く。建物の中が炎で包まれると、直ぐに爆発音が響き渡った。
工場の爆発は、花火工場の火災と同じ光景を作り出した。花火が夜空に打ち上げられるように、パッと明るく空で光ると少し遅れて爆発音が耳に届く。
工場内に保管されていた火薬や弾丸が爆発し弾け、周囲の工場や倉庫を次々に破壊して行く。
「あわわわ、大火事になっちゃたけど、これって成功?」
「もういいぞ。奇襲攻撃は、無事成功だ」
リリカは額から流れ落ちる汗を手で拭った、「ふう、結構、疲れたね」
炎を巻き上げる火災旋風だ、3つも発生させたのだから、消化にあたる魔法士も消防士も苦戦を強いられるだろう。これでこの一帯の工場も倉庫も全滅するはずだ。
最後まで気を抜かず、誰にも見つからないように、後はこの場所から離れなければならない。暫く消えそうにない炎と爆発音を背に二人は、来た道を戻って行った。
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