ネックレスとブレスレット【改】 魔法少女に召喚された青年は彼女を守る事になりました!

川村直樹

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商業都市ナルラカ 1

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リユー王から貰った礼金の入った袋を前に、リリカは悩んでいた。

出発前に新しい服や靴が欲しい、買い物に行きたい。

でも無駄遣いにならないか、春馬に小言を言われないか心配になっていた。

真剣に悩むリリカが可愛くてしょうがなかったエメリンは、仕事をするのを止めてリリカを町に連れ出した。

「悩まないの、どうせ春馬も同じだけお礼を貰ってるんだから。今日は、女同士、買い物を楽しみましょうよ」

「えーと、どうしようかな」

「良いの、お金はね、使う為にあるのよ」

エメリンに手を引かれるリリカは、色々なお店に入り買い物を楽しんだ。
お昼はマラガ王国で流行っているカフェでランチ。
本当の姉妹のように、二人は楽しい時間を過ごした。

あっという間に時間は過ぎてしまい、マラガ王国を出発する日になった。

「新たな出会いがあるからこそ、旅は面白いのよね」と、見送るエメリンは笑顔でリリカを送り出した。

市民に扮した兵士が御者を務める馬車に、リリカは乗っていた。

ナルラカでの市場調査を命じられた彼等は、行き先が同じだったリリカを途中まで護衛する任務も兼務していたのだ。

経済強化を図るための第一歩を獣人達は早々に踏み出した。

国境を越え商業都市ナルラカが一望できる丘の上で、リリカは馬車から降り兵士達と別れた。

彼女は、美しい海と港の景色で有名なナルラカを暫く眺めていたかったから。
海風が吹く丘の上からは、高台の上に造られた都市と港が一望できる。
オリーブ園が、城壁の外側で広がっていた。

城壁の中は、大小様々な箱型の建物がひしめき合い、活気ある雰囲気が伝わってくる。

木々の緑、白い建物、青い海が際立つ光景は、見る者の目を奪う。

「うわー! すごっく大きな街。海もキラキラしてて、綺麗」

沖の方には、小さな島がある。島の塔は、灯台の役割と海賊を監視する為に作られたと本に書かれてあったのを思い出した。

「あれは、港で働いている人達が暮らしてる家なのかな」

高台の下にある港に、リリカは目を向ける。高台と港の間にある緩やかな傾斜は、赤い屋根と白壁の住居で埋め尽くされる。

遠くから眺めているだけで、色々な想像が膨らむ。

迷路の様な町並みやそこでの暮らしを想像する少女は、手を大きく広げて深呼吸をした。

「う、うーん、やっぱり、気持ちいい」

素晴らしい景色を眺めていると、誰かと一緒に感動を分かち合いたくなる。

今のリリカもそう言う気持ちだった。そんな誰かを強く念じた彼女の思いに答えられるのは、春馬しか居ない。

不意に召喚された春馬は、草むらの上で寝転がっていた。

深夜の日雇いバイトから帰った後、そのままベッドの上で寝てしまったはずなのに。
目を開けると青空が見え、暫く惚けていた。

「外か・・・、どうして外に居るんだ?」、我に返り起き上がった。

眠たそうに欠伸をした春馬は、目を擦りながら周囲を確認した。

「ふわぁー、マラガを出たのか? 潮の匂いがするけど、港町か」

「ナルラカですよ。海路と陸路が交わる商業都市なんです」

「へえー、素晴らしい景色だな」

寝ぐせで跳ねた髪の毛、ラフなジーパンとTシャツ姿にリリカが笑い出した。

「いつもと違うね、今日はどうしたの?」

「深夜のアルバイトをしてたから、さっきまで寝てた。何か変か?」、テンションが高いのか、あまりにもリリカが笑うので気になった。

「ううん、初めて見る服装だったから。それに・・・」

「それに、何だ? まだおかしな所があるか?」

「靴を履いてないから・・・」と、足元を指さした。

「はあー、家の中だったからな、しょうがないよ」

「家で靴を履かないの?」

「俺の世界と言うか国では、家の中は土足禁止だ」

「ウソみたいだけど、そんな文化もあるんだ」

「悪いが、靴を履いてくるから1時間ぐらいしたら、もう一度呼び出してくれ」

寝起きで頭の回らない春馬は、忘れ物を取りに自分の世界へ一旦戻った。

自分の部屋に戻った春馬は、異世界へ持って行くために買っておいた品物を帆布製のショルダーバッグに突っ込んだ。

祖母の富子からのアドバイスを参考に、自分なりに考えて必要になるであろう物を準備していたのだ。

帝国を奇襲攻撃した後、自分の世界に戻った春馬は、向こうの世界の事に無知なのは、かなりまずいと感じていた。

疲れていたが質問もあるし、とにかく直ぐに祖母と会って話を聞いた方が早いと思ったのだ。

それに、いつリリカに呼び出されるか分からないし。

そんな訳で、車を飛ばし2時間かけて田舎で暮らす祖父母の家を訪ねた。

「この間、怪我をしたんだけど、エルフに魔法で治してもらった」

「危なっかしいね。怪我したのかい、気を付けないと。夢の世界じゃないんだからね、全て現実なの。ここと同じなのよ」

「分かったよ、次から油断しないように気を付ける」

富子は何か思い出した、「そうだ、向こうで必要な物は無いのかい?」

「必要な物? えっ、こちから持ち込み出来るの」

「出来るわよ、鞄に入れて一緒に召喚されたら良いのよ」、富子が素っ気なく言い放った。

「それなら一つアドバイスをしてあげる。専用の武器は、出せるわよね?」

「ああ、ばあちゃんの槍とは違うけど剣を出せたよ」

「ふーん、剣なの。まあ、良いわ。私の時はね、槍の柄にいつもカバンを結び付けてたの。そうすると、槍と一緒に出したり消したり出来たのよ。お菓子と薬を何時も持ち歩いていたわ。でも、いざ槍を使わないといけない時に、一緒に出て来るカバンが邪魔になったけどね」

「なるほど、そんな事が出来るのか」

夜遅くまで富子と春馬の会話は続いた。

行く前に教えてくれたら良かったのにと思う所は多かったが、疑問に思った事や気になる事が聞けたのは大きかった。

祖母に会いに来たのは、正解だった。やはり、先人のアドバイスは役立つ。

思った通り薬は、必需品だった。それに旅先での食料を考慮すべきだと聞いたので、缶詰やお菓子なども忘れず準備しておく事にした。

半袖のシャツを羽織い寝ぐせを直した春馬は玄関で靴を履いた。

ドアを開ける前に足元に魔法陣が現れ、良いタイミングでリリカに呼び出された。

「うん! さっきより、カッコよくなりましたよ」

「そうか、あまり変わらないけど、取り敢えず有り難う。さっきと違う場所だよな、少し先に進んだのか?」

「はい、あの門に向かってます。あそこかがナルラカの入り口なの」

リリカが指さす方向を見ると、門が見える。
二人が立つ場所からは、はるか遠くに感じる距離だ。
入り口は、都市を取り囲む壁の真ん中あたりにあった。

「今から急いで行っても日が暮れるんじゃないのか、本当に入れるのか?」

「そうですよ、日が暮れてしまうと、閉まっちゃうから急いでるの。でも、間に合わなかったら、外で野宿して朝に門が開くのを待ちます。だから門の前に着いたら、春馬は帰っても良いよ」

不用心なリリカに春馬は怒り気味に答えた、「駄目だ!」

「どうして? 一人で野宿するのは、慣れてるから平気よ。それに同じように、門が開くのを待つ人が居るんだから」

「分かってないな。人が居ない方が、安全なんだよ。動物より人の方が怖いの、悪いことを考える奴は、自分より弱い人間を狙うからな。とにかく間に合わなかったら一緒に野宿する」

妹を心配する世話付きの兄との会話になっていた。
そんなつもりじゃないと、リリカは分かっていたが笑いが込み上げてくる。

でも正直、傍にいてくれるのは嬉しい。一人で寂しく過ごすより、信頼する人が一緒だと心強いからだ。
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