滅んでしまった王国の元騎士は自由気ままな暮らしを満喫したい

川村直樹

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ダンディルグ王国 8

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 カレンを見ると、決断したのか目を閉じながら歯を食いしばり、ガチガチになった顔をクリスに近づけて来た。何がしたいのだろう、クリスが動かずにじっとしていると、カレンは閉じた口をクリスの唇に重ねて来た。

 驚いたクリスは、カレンの両肩に手をやると、彼女を自分から引き離した。

「ど、どうした。カレン、気は確かか?」

「何か間違っていましたか? 私の素直な気持ちを伝える方法を取ったのに」、そう話す彼女は、指を下唇に当てた。

「気持ちを伝える? 君は俺の恋人にでもなりたいのか?」

「そうです、・・・いや、違います。魔族の女は、強い男と添い遂げるのを夢見ています。勇者の私より強い男は居ないと諦めていましたが、クリスが私の前に現れた。だから、私はあなたと添い遂げます」

 そう話すカレンは、恋する少女の様にほんのり赤くなった顔で、上目遣いでクリスを見た。

 クッソー、綺麗な顔立ちで上目遣いをするとは、可愛すぎる。
 そんな心の叫びが、クリスには聞こえた。

「そう言われても、結婚には順序があるだろ。飛び越えすぎていないか?」

「魔族の結婚は、相手が見つかり思いが伝わったら、直ぐに実行となるのですが。何かおかしい所は、有りますか?」

「そうなんだ、人族とは考え方が少し違うのかな? 恋愛はともかく、結婚は時間をかけてお互いに理解を深めてからするものだと、人族は認識しているよ」

「そうですか。幾ら時間をかけても、結局一緒になるのなら早くても問題は無いと思います」

「確かにそうだけど、俺の気持ちは良いのか?」

「ふぇ」、カレンは変な声を出し恥ずかしそうに口に手のひらを当てた、「ク、クリスは、私の事が嫌いですか?」

 駄目だ、カレンは天然なのか、それとも小悪魔なのか、クリスは理性を失いかける。しかし、彼女は考えた末に此処に来たのだ。そんな彼女の気持ちに答えられない、情けない男にはなりたく無いクリスだった。
 
 クリスが答えに困っていると、再び目を閉じたカレンが顔を近づけて来る。

 ハァと、ため息を付いたクリスは、カレンの鼻をつまんだ。
 息が出来なくなったカレンは、目と口を開けた。

 左手を彼女の後ろに回し、右手で彼女の手を握ると、クリスは半開きになったカレンの唇を奪った。カレンの唇は柔らかい、ゆっくり優しく彼女の下唇を吸った。

「上手に出来ただろ、カレン」

「う、うん」と、カレンは恥ずかしそうに下を向いたが、勢いよくクリスに抱き付き彼をベッドの上に押し倒した。

 マウントを取ったカレンは、自分の服を脱ぎながら覚えたてのキス攻撃をクリスに実践する。何度も何度も彼女は、クリスの唇に吸い付く。うっとりとした表情になったカレンは、とうとう舌を絡めて来た。

 キス攻撃を終えたカレンは、パンティを残し全ての服を脱ぎ捨てた。
 クリスの手を取ると、自分の小ぶりな胸に触れさせる。
 柔らかく張りのある乳房の奥から、彼女の心臓の鼓動が伝わってきた。
 
 女性にここまでさせておいて、無理だと拒否するのは、彼女に恥をかかせる行為になる。この状況でクリスは、気持ちの奥底でカレンに惹かれていく自分に気が付いていた。

「俺で良いいのか? 後悔しないよな」

「もちろんです。あなたは、私が決めた人ですから」

 カレンをベッドの上に寝かせたクリスは、ディープキスをする。

 彼女の唇から離れると、ゆっくり時間をかけてクリスは、首筋から胸を愛撫した。
初めて異性に触れられる部分から、彼女の身体は熱くなった。
 
 彼女の体は、徐々にクリスを受け入れる準備が整っていく。

 もう、悩んでも仕方が無い。彼女が望んだ事だし、俺もそうしたいと思ってしまった。

 この思いを止めてはいけない、いや、もう止められない。

「あ、温かいです。私の中からクリスの温かさが伝わってきます」

 そう話すカレンをクリスは抱きしめると、彼女の体はひんやりとして冷たく気持ちが良い。魔族は、人族より体温が少し低い。クリスが冷たくて気持ちが良いと感じるのと同じに、カレンはクリスの体を温かくて気持ちいいと感じていた。

「カレン、どうやら俺は、君の事が好きみたいだ」

「嬉しい、私はあなたの事が大好きになったよ」

 お互いの体がより密着するように、クリスはカレンの体を起こした。
 戸惑う表情をする彼女を抱きしめ、クリスは彼女の綺麗な黒髪を撫でる。 

 クリスは、カレンの思いと体を受け入れてしまった。この既成事実が、彼の自由をほんの少し奪う事になるとは、後で気が付くのであった。

 黙って出ていく事に対して、クリスはカレンに悪いと思う。その気持ちに嘘は無かったが、荷物をまとめた彼は、こっそりダンディルグを出発しようとしていた。

 彼はモーガンに挨拶をする為、馬を引きながらギルド会館へ向かう。自由に生きたい彼にとって、暇を持て余してしまうのは、束縛されるぐらい苦痛だったのだ。

「ミルフィーナ、モーガン館長に会えるか?」

「お急ぎでしょうか?」、受付で椅子に座り事務処理をするミルフィーナは、クリスに目を向ける事無く答えた。

「急ぎでは無いが、此処を出ようと思ってな。モーガン館長に挨拶をしたいんだ」

「ダンディルグは、お気に召されませんでしたか?」

「良い国だよ、此処は。でも、暇なんだよな。特にやる事も無くなったし」

「それなら、ギルドの依頼を引き受けてくだされば良いのに」

「ギルドの仕事をするなら、アルフェリアでも出来るからな。ここに残る理由にならないよ」

「ふぅ、残念ですわ」と、手を止めたミルフィーナは受付を離れた。

 クリスは、カウンターにもたれながら室内を見渡す。

 パーティーの仲間を待つ獣人族の若者、一緒に依頼を受けてくれるパーティーを探す魔法使い、朝から憂鬱な顔をして項垂れる中年の剣士など、此処には様々な人が集まってくる。

 みんな生きるために、これから命を張るのだろう。今日が最後になるかもしれない、そんな気持ちを心の奥底に抱きながらギルド会館に集まる冒険者達を見ると、クリスは毎日悔いを残さない様に生きたいものだとつくづく思う。

 ソロでの活動を好むクリスは、今までパーティーを結成したいと思った事は無かった。仲間が死んでいく姿を見るのは、嫌だったからだ。

 騎士として戦場で戦った仲間達は、誰一人生きてはいない。しかし、気の合う仲間と依頼をこなし、気ままな旅をするのは楽しいかもしれないと想像した。

 あり得ないか、そんな言葉が彼の頭に浮かんだ時、ミルフィーナの声が聞こえた。

「館長がお会いになるそうです。奥へどうぞ」

「有り難う」、クリスは奥の館長室へと向かった。

 館長室のドアを開けると、ソファに座るモーガンは、クリスにお茶を勧めた。

「また、荷物をまとめて出て行く準備をしてから来たか。しかし、お前は、つくづく自分の思いとは違う方向へ導かれるな。残念だが、今回も此処を離れる事は出来ない様だ」

 ソファに座ったクリスは、煎れ立ての紅茶の入ったティーカップを手に取り香りを楽しむ。

「ダンディルグから離れられないとは、どういう事ですか?」

「王は、お前をよほど気に入ったのだろうな。指名の依頼が、ギルドに届いたよ」

「俺を指名して来たのか、ラングスは友人だ。彼の頼みなら引き受けるけど」

「仕事の内容も聞かずに引き受けるのか?」

「友人が俺に頼るのは、理由があるからだと思っている。王の依頼では無くて、友人として頼みを聞くだけだ」

「ははは、羨ましいな。若き王に忖度しない友人が出来るとは」

「それで、依頼の内容は?」

「依頼は、北の遺跡に眠る勇者専用の防具の一つ、カルラの鎧を探し出す事だ。カレン達に同行して欲しい」

「勇者誕生に合わせて女神が準備し、試練と共に封印する武具か」

「そうだ、勇者が心身ともに成長していれば、難なく手に入れられる力だな」

「試練は、勇者自身が打ち破らないと駄目なんだろ。なら俺は、旅の護衛なのか?」

「勇者に護衛は、要らないだろ。多分、王自身が旅に同行したかったのでは無いだろうか。それが出来ないから、友人である君にこのイベントを見届けて欲しいのだと思うよ」

「ラングスの目となり、試練を見届けるのか。信用してくれるのは嬉しいが、大役だな」

 紅茶を飲むクリスにモーガンは、「言いにくいのだが・・・」と、話しかけた時にバンと大きな音を立ててドアが開いた。
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