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北の遺跡 6
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十一階の部屋に転送された。
周囲は薄暗く良く見えないが、気配から全員傍に居るのは分かった。カサカサと嫌な音が近づいて来るのが聞こえ、上からはブーン、ブーンと何かが飛ぶ音がしている。不気味な物音にいつでも攻撃態勢に入れるように、それぞれ背中を合わせた。
鞘から聖剣を抜いたカレンは、サーシャに魔法で明りが欲しいと伝えた。
「闇を照らす光よ集え【初級魔法】ライト!」
サーシャの持つ杖から光の玉が、頭上に向けて放たれた。
輝きながら宙に浮く50センチほどの玉は、太陽光に似た自然な光を放つ。
部屋の中を照らす光により、彼等の視界は良くなったが、音の正体に彼等は絶句する。それは床一面に虫が蠢く、気持ちの悪くなる光景が広がっていたからだ。
「きゃあー、何あれ。もしかして害虫の軍隊アリじゃないの?」と、カレンは後退りする。
軍隊アリは、隊列を組み集団で襲い掛かってくる獰猛な害虫だ。体長は15センチから20センチほどの虫なので、単体なら剣や槍で難なく退けられる。しかし、集団で攻撃されると厄介な相手で、この害虫に遭遇した冒険者は、通常なら戦わず逃げる。何せ下手に戦って噛まれると、毒で体中が痺れ暫く動けなくなる。もし、そんな事になったら奴らの格好の餌食となり、熟練の冒険者であっても命を落としかねないからだ。
天井を見ていたジルは、上から飛んで来た一匹の虫を剣で切った、「上には、ジャイアントビーが飛んでいるな」
「うっ、嫌だ! 虫は嫌いなのに、こんなに沢山居るなんて」
両手で体を包み込むような仕草をしたカレンは、腕に鳥肌が立った。
「カレンさん、ここは私に任せてください!」、自信に満ちた顔を見せるサーシャは、虫達に仲間が襲われないように防御魔法を使った。
「此処に集いし風よ、我が友を守れ【中級魔法】エアーシールド!」
ドーム状の風の防壁に包まれた彼等は、迫りくる害虫から身を守る事が出来た。
「どうする、今は攻撃態勢に入っていないが、軍隊アリは一匹でも殺されると、一気に襲って来るぞ。それに天井には、ジャイアントビーの巣があるし」、クリスの心配を余所に、何やらサーシャが積極的に自分を使えとアピールしていた。
そう言えばと、クリスは北の遺跡へ出発する前に、モーガンが話していた事を思い出した。カレン達と一緒に弟子を連れて行って欲しいと頼んできたモーガンは、必ず魔法が必要になるからとも話していた。
クリスは、もしかしたらモーガンは、勇者の試練の内容を知っていたのかもと考えた。そして、ここ十二階は魔法が無ければ攻略するのが難しい部屋なのだと。大事な弟子を同行させた彼の真意を確かめるべく、手出しをせず黙ってクリスは彼らを見守る事にする。
「カレンさん、私に指示してください。こういう場面でこそ、魔法が重要になるのですから」
「分かった。ここは、素直にサーシャに任せるわ。私達は、どうしたら良い?」、仲間を信じる事も大事、昨晩のクリスの言葉がカレンの背中を押す。全て自分で対処しようとして、負担にしてはいけない。
カレンから得た信用は、自信に変わり、そしてサーシャの魔法の力となった。
「皆さん、私のサポートをお願いします。カレンさんは炎を纏えるので、私の魔法攻撃の後に天井のジャイアントビーの巣を駆除してください。それでは、行きますよ!」
エアーシールドを解くと、サーシャは、炎の魔法を唱えた。
「炎よ壁となりて我等を守れ【中級魔法】ファイアーウォール」
床から炎が立ち昇り、3メートルほどの高さの壁となった。
円形で燃え上がる壁は、近くに居た軍隊アリをジリジリと焼き殺していた。
「このまま、炎の壁の中で待機するのか」と、クリスはサーシャの肩を叩いた。
「いいえ、ここからが腕の見せ所です」、サーシャは細い腕で力こぶを出して見せた。
魔法使いに、力技は無いだろうに。お茶目な仕草をしたサーシャに、ジルが噴き出した。
「わ、ははは、面白い! 見せてもらおうか、お前の腕とやらを」、どこかで聞いた事のある様なセリフだ。
サーシャは、杖を前に向けクルっと一回転する。そして、両手で杖を握りしめると、杖の先を見つめながら何かを念じた。彼女の一連の動作が、これから見せる魔法に必要なのか、良く分からないが、いわゆる彼女のルーティーン見たいな物だろう。
「えいっ! 炎の火力を上げ、その動力となれ【複合魔法】パワーウインド」
サーシャの足元から風が舞い上がって行く。初めは緩やかだった流れが、炎に近づくにつれ次第に強く渦を巻き、内側から炎の壁を押す。吹き込む風により炎の色は、青白く変化した。
高温で移動する壁は、軍隊アリを全て焼き尽くしながらゆっくりと進む。
「それじゃあ、私の番ね。あなた達は、飛んで来るジャイアントビーを倒してね。剣技! 迦楼羅炎舞」と、炎を纏ったカレンは、天井に向かって大きくジャンプした。
天井に貼り付く巣は、聖剣で簡単に切り離された。落下する巨大なジャイアントビーの巣を宙に舞うカレンが一刺すると、聖剣の炎が巣に引火し瞬く間に火の玉と化した。巣の素材は燃えやすいのか、落下しながら炎の勢いが増していく。
全身を捻った彼女は、回転しながら炎に包まれる巣を見事に切り刻んでしまった。
バラバラと火の粉が上から落ちてくる。細かく切り刻まれた巣は、床に落ちるまでに全て燃え尽きてしまった。真っ白い灰が上からひらひらと落ちてくる光景は、真冬の雪原の様だった。
「しかし、いい匂いだな。この虫は食べられるのか?」、焼け死んだ害虫からは、何やら香ばしい匂いがしていた。
匂いを嗅いだジルがそう話すのも仕方が無かった。休憩なしで戦っていたものだから小腹が、空いていたのだ。
「害虫など食ったら腹を壊すぞ」と、こんな時にふざけるなと言わんばかりにギリは、眉間にしわを寄せた。
こんがり焼き上がった虫達は、確かに良い匂いを漂わせていたが、見た目はグロテスクだった。そんな物を見て食べたいなどと考えるジルの発言に、仲間達は引いてしまった。
軍隊アリは駆除したが、冗談を言っている場合では無かった。
巣を失ったジャイアントビーは、彼等の頭上を飛び回り狙いを定めると、体を九の字に曲げ尻の針で次々と攻撃して来る。
ジルとギリは、剣と槍でジャイアントビーを突き刺し、闘気を纏ったチェンは繰り返しジャンプしながら拳で叩き落としていた。
「数が多い。サーシャ、飛び回る害虫を一掃できる魔法は無いのか?」、ジルは一匹ずつ倒していくのが面倒に思えた。
「そうですね、カレンさんが戻って来たので、風で切り刻みますか」
そう話すサーシャは、ウインドカッターを放ちブーメランの様に頭上で乱舞させた。
バラバラになったジャイアントビーが落ちて来るので、ジルとギリは右往左往しながら逃げ回った。カレンとクリスとチェンは、サーシャの傍に居れば、そんなに逃げ回らなくても良いのにと思いながら彼らを眺めていた。
周囲は薄暗く良く見えないが、気配から全員傍に居るのは分かった。カサカサと嫌な音が近づいて来るのが聞こえ、上からはブーン、ブーンと何かが飛ぶ音がしている。不気味な物音にいつでも攻撃態勢に入れるように、それぞれ背中を合わせた。
鞘から聖剣を抜いたカレンは、サーシャに魔法で明りが欲しいと伝えた。
「闇を照らす光よ集え【初級魔法】ライト!」
サーシャの持つ杖から光の玉が、頭上に向けて放たれた。
輝きながら宙に浮く50センチほどの玉は、太陽光に似た自然な光を放つ。
部屋の中を照らす光により、彼等の視界は良くなったが、音の正体に彼等は絶句する。それは床一面に虫が蠢く、気持ちの悪くなる光景が広がっていたからだ。
「きゃあー、何あれ。もしかして害虫の軍隊アリじゃないの?」と、カレンは後退りする。
軍隊アリは、隊列を組み集団で襲い掛かってくる獰猛な害虫だ。体長は15センチから20センチほどの虫なので、単体なら剣や槍で難なく退けられる。しかし、集団で攻撃されると厄介な相手で、この害虫に遭遇した冒険者は、通常なら戦わず逃げる。何せ下手に戦って噛まれると、毒で体中が痺れ暫く動けなくなる。もし、そんな事になったら奴らの格好の餌食となり、熟練の冒険者であっても命を落としかねないからだ。
天井を見ていたジルは、上から飛んで来た一匹の虫を剣で切った、「上には、ジャイアントビーが飛んでいるな」
「うっ、嫌だ! 虫は嫌いなのに、こんなに沢山居るなんて」
両手で体を包み込むような仕草をしたカレンは、腕に鳥肌が立った。
「カレンさん、ここは私に任せてください!」、自信に満ちた顔を見せるサーシャは、虫達に仲間が襲われないように防御魔法を使った。
「此処に集いし風よ、我が友を守れ【中級魔法】エアーシールド!」
ドーム状の風の防壁に包まれた彼等は、迫りくる害虫から身を守る事が出来た。
「どうする、今は攻撃態勢に入っていないが、軍隊アリは一匹でも殺されると、一気に襲って来るぞ。それに天井には、ジャイアントビーの巣があるし」、クリスの心配を余所に、何やらサーシャが積極的に自分を使えとアピールしていた。
そう言えばと、クリスは北の遺跡へ出発する前に、モーガンが話していた事を思い出した。カレン達と一緒に弟子を連れて行って欲しいと頼んできたモーガンは、必ず魔法が必要になるからとも話していた。
クリスは、もしかしたらモーガンは、勇者の試練の内容を知っていたのかもと考えた。そして、ここ十二階は魔法が無ければ攻略するのが難しい部屋なのだと。大事な弟子を同行させた彼の真意を確かめるべく、手出しをせず黙ってクリスは彼らを見守る事にする。
「カレンさん、私に指示してください。こういう場面でこそ、魔法が重要になるのですから」
「分かった。ここは、素直にサーシャに任せるわ。私達は、どうしたら良い?」、仲間を信じる事も大事、昨晩のクリスの言葉がカレンの背中を押す。全て自分で対処しようとして、負担にしてはいけない。
カレンから得た信用は、自信に変わり、そしてサーシャの魔法の力となった。
「皆さん、私のサポートをお願いします。カレンさんは炎を纏えるので、私の魔法攻撃の後に天井のジャイアントビーの巣を駆除してください。それでは、行きますよ!」
エアーシールドを解くと、サーシャは、炎の魔法を唱えた。
「炎よ壁となりて我等を守れ【中級魔法】ファイアーウォール」
床から炎が立ち昇り、3メートルほどの高さの壁となった。
円形で燃え上がる壁は、近くに居た軍隊アリをジリジリと焼き殺していた。
「このまま、炎の壁の中で待機するのか」と、クリスはサーシャの肩を叩いた。
「いいえ、ここからが腕の見せ所です」、サーシャは細い腕で力こぶを出して見せた。
魔法使いに、力技は無いだろうに。お茶目な仕草をしたサーシャに、ジルが噴き出した。
「わ、ははは、面白い! 見せてもらおうか、お前の腕とやらを」、どこかで聞いた事のある様なセリフだ。
サーシャは、杖を前に向けクルっと一回転する。そして、両手で杖を握りしめると、杖の先を見つめながら何かを念じた。彼女の一連の動作が、これから見せる魔法に必要なのか、良く分からないが、いわゆる彼女のルーティーン見たいな物だろう。
「えいっ! 炎の火力を上げ、その動力となれ【複合魔法】パワーウインド」
サーシャの足元から風が舞い上がって行く。初めは緩やかだった流れが、炎に近づくにつれ次第に強く渦を巻き、内側から炎の壁を押す。吹き込む風により炎の色は、青白く変化した。
高温で移動する壁は、軍隊アリを全て焼き尽くしながらゆっくりと進む。
「それじゃあ、私の番ね。あなた達は、飛んで来るジャイアントビーを倒してね。剣技! 迦楼羅炎舞」と、炎を纏ったカレンは、天井に向かって大きくジャンプした。
天井に貼り付く巣は、聖剣で簡単に切り離された。落下する巨大なジャイアントビーの巣を宙に舞うカレンが一刺すると、聖剣の炎が巣に引火し瞬く間に火の玉と化した。巣の素材は燃えやすいのか、落下しながら炎の勢いが増していく。
全身を捻った彼女は、回転しながら炎に包まれる巣を見事に切り刻んでしまった。
バラバラと火の粉が上から落ちてくる。細かく切り刻まれた巣は、床に落ちるまでに全て燃え尽きてしまった。真っ白い灰が上からひらひらと落ちてくる光景は、真冬の雪原の様だった。
「しかし、いい匂いだな。この虫は食べられるのか?」、焼け死んだ害虫からは、何やら香ばしい匂いがしていた。
匂いを嗅いだジルがそう話すのも仕方が無かった。休憩なしで戦っていたものだから小腹が、空いていたのだ。
「害虫など食ったら腹を壊すぞ」と、こんな時にふざけるなと言わんばかりにギリは、眉間にしわを寄せた。
こんがり焼き上がった虫達は、確かに良い匂いを漂わせていたが、見た目はグロテスクだった。そんな物を見て食べたいなどと考えるジルの発言に、仲間達は引いてしまった。
軍隊アリは駆除したが、冗談を言っている場合では無かった。
巣を失ったジャイアントビーは、彼等の頭上を飛び回り狙いを定めると、体を九の字に曲げ尻の針で次々と攻撃して来る。
ジルとギリは、剣と槍でジャイアントビーを突き刺し、闘気を纏ったチェンは繰り返しジャンプしながら拳で叩き落としていた。
「数が多い。サーシャ、飛び回る害虫を一掃できる魔法は無いのか?」、ジルは一匹ずつ倒していくのが面倒に思えた。
「そうですね、カレンさんが戻って来たので、風で切り刻みますか」
そう話すサーシャは、ウインドカッターを放ちブーメランの様に頭上で乱舞させた。
バラバラになったジャイアントビーが落ちて来るので、ジルとギリは右往左往しながら逃げ回った。カレンとクリスとチェンは、サーシャの傍に居れば、そんなに逃げ回らなくても良いのにと思いながら彼らを眺めていた。
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