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あいさつ
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川に沿って歩いていると、堤の上からしゃがれた声がしました。
「おはよう、マコトちゃん」
船着き場に続く大通りの四つ角にある屋敷のお婆さんです。今朝はこんな遠くまで散歩に来たのでしょうか。
「おはようございます、キクノさん」
マコトくんは、堤を登って道に戻ると、キクノさんに朝の挨拶をしました。きちんと挨拶すること、それが先生との約束です。
白髪のキクノさんは、柔らかく微笑んでマコトくんに話しかけてきます。
「今朝はずいぶんと暖かいね。もう春だねえ」
マコトくんには気がきいた返事はできません。
「うん、あったかい」
恥ずかしそうにそれだけぼそぼそと返すと、キクノさんの目の前で、だっと駆け出しました。
しばらく走っているうちに、今度は、柴犬のコロを連れたハルエ小母さんに出会いました。
小母さんはにこやかに笑いかけてきました。
「おはよう。今日はずいぶんと急いでるね」
マコトくんはおじぎをしながら、そうでもないけど……と小首をかしげてみせました。
道はしだいに下り坂になり、山の斜面に沿って、船着き場まで続きます。
両側の高い石垣の上には、深い緑が生い茂る生垣が広がり、縁石から続く石の階段の先に、朝陽に照らされた青い瓦葺きの門がいくつも見えます。
各々の門の奥には、屋敷があります。門は閉ざされていますが、生垣の切れ間から見える庭には、クロマツが植わっていたり、コイが泳ぐ池があったりと、綺麗に整えられています。
船着場に着くと、マコトくんは、テトラポッドを積んだ堤防に沿って、その先にある赤い灯台へと歩いていきました。
入江の際で寄り添うように並ぶ何十軒もの二階建ての小屋は、一階が海に向かって開いていて、古びた白い漁船が繋ぎ留められているのが見えます。
この小屋は舟屋というんだ、と漁師のヨウスケ小父さんが教えてくれたのを思い出しました。
「おはよう、マコトちゃん」
船着き場に続く大通りの四つ角にある屋敷のお婆さんです。今朝はこんな遠くまで散歩に来たのでしょうか。
「おはようございます、キクノさん」
マコトくんは、堤を登って道に戻ると、キクノさんに朝の挨拶をしました。きちんと挨拶すること、それが先生との約束です。
白髪のキクノさんは、柔らかく微笑んでマコトくんに話しかけてきます。
「今朝はずいぶんと暖かいね。もう春だねえ」
マコトくんには気がきいた返事はできません。
「うん、あったかい」
恥ずかしそうにそれだけぼそぼそと返すと、キクノさんの目の前で、だっと駆け出しました。
しばらく走っているうちに、今度は、柴犬のコロを連れたハルエ小母さんに出会いました。
小母さんはにこやかに笑いかけてきました。
「おはよう。今日はずいぶんと急いでるね」
マコトくんはおじぎをしながら、そうでもないけど……と小首をかしげてみせました。
道はしだいに下り坂になり、山の斜面に沿って、船着き場まで続きます。
両側の高い石垣の上には、深い緑が生い茂る生垣が広がり、縁石から続く石の階段の先に、朝陽に照らされた青い瓦葺きの門がいくつも見えます。
各々の門の奥には、屋敷があります。門は閉ざされていますが、生垣の切れ間から見える庭には、クロマツが植わっていたり、コイが泳ぐ池があったりと、綺麗に整えられています。
船着場に着くと、マコトくんは、テトラポッドを積んだ堤防に沿って、その先にある赤い灯台へと歩いていきました。
入江の際で寄り添うように並ぶ何十軒もの二階建ての小屋は、一階が海に向かって開いていて、古びた白い漁船が繋ぎ留められているのが見えます。
この小屋は舟屋というんだ、と漁師のヨウスケ小父さんが教えてくれたのを思い出しました。
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