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舞い上がったり落ち込んだり
街から城に帰った俺とアックスは、早速騎士棟に行き肉まんを同僚達に渡した。そして執務室で話しながらそれを食べ、仕事終わりに部屋にやってくる騎士達に差し入れだと渡した。
全てを渡し終えた頃には外が暗くなっていたため、俺はそのまま彼らと食事をして帰ってきたのだ。
「はぁ~、楽しかった……。」
歩いて宿舎近くまで戻って来た俺は、つい今日の感想を漏らす。しかし部屋に近づくにつれ、考えなければいけないことがあったのだと思い出した。
(そうだ……今日のイベントの事、確認しようと思ってたんだ。)
部屋に帰ってリビングに入る。父は今頃、元仕事仲間と騒いでいる頃だろう。明るい父がいない部屋はシーンとしていて少し寂しい。
暖房を付けそのまま自室へ入り、椅子に座ると一目散に攻略ノートを開いた。
今日、初めてアックスがゲーム通りの行動をしなかった。自分が何か会話の選択肢を間違えたのかと思ったが、ノートを確認する限りそれはない。
ゲームでは、特に主人公が何かを言ったから隣に座ったわけではなく、自然とアックスが座ってきたようだ。
そのままパラパラとノートをめくる。
(特別何かする必要があったわけじゃないんだ……。だったら、)
「俺がダンスの時、寸止めできなかったからかなぁ?」
思い当たる部分はそこしかない。街での会話は全て完璧だったし、踊りも、別の曲を踊ってしまったがおおむね流れは良かったように思う。ーーとなると、やはりあのキス?が原因かもしれない。
(どうしよう。このままだと本当に告白してくれるのか怪しい。)
最後のハグも、ドキドキしていたというよりは俺の奇怪な行動に笑い、冗談で抱き返してきたようだった。
(ゲームでは、どんな感じだったっけ。)
俺はノートに事細かに書いてあるメモ隅々に目を通す。それと同時に、ゲームの記憶を思い出そうと頭をひねった。
「馬車のシーンはぼんやり覚えてる。たしか、1枚絵もあって……。」
はっきりとは思い出せないが、目元を少し赤くしたアックスがこちらをじっと見ている絵であったように思う。
(うーん、やっぱり俺の時とは雰囲気が違うような……。)
考えながら、意味もなくノートをめくっていると、電話が鳴った。
「あ、シバだ!」
俺はドタドタと走って電話を取りに行く。
「はい!セラ・マニエラです!」
つい張り切った声を出してしまった。これではまたシバに揶揄われてしまう……。顔をしかめつつ相手の声を待っていたが、聞こえてきたのは聞き慣れた人物のものだった。
「セラさん?ああ、帰ってたんですか。良かった~。」
「ラルクさん?どうしたんですか?」
「いや、今日騎士棟に来てたでしょ。知り合いからセラさん達が外にご飯食べに行ったって聞いたんですが、ちゃんと帰ってきたのか心配で。」
「あの、俺もうすぐ20歳ですよ。ちゃんと帰れます。その、心配してくれたことは嬉しいですけど……。」
「そうなんですけどね。今日はシシルさんもいないし、一応連絡しとこうと思って。」
兄のような立場から、若干父2号になりつつあるラルクは、声の感じからして本当に俺のことを心配していたようだ。
「ラルクさんって、やっぱりいい人ですね。」
「え、なんですか急に!」
「急じゃないです。いつも父とラルクさんのいいところ話してますよ。」
「え!シシルさん、俺のこと何か言ってるんですか?!例えばどんな……?」
「職場体験の時にラルクさんが剣を振るのを見て、かっこいいって言ってましたよ。」
「ええ!そうなんですか!? そういうの、もっと……あります?」
俺が中途半端に情報を与えたせいで、期待させてしまったようだ。「小さなことでもいいんで!」とぐいぐい聞いてくる。
「えっと……、」
俺の言葉をワクワクと待っているラルクをがっかりさせないようにと、俺は最近の父との会話を思い出すことに集中した。
「セラさん、おやすみなさい。」
「ラルクさんも。また明日の夜待ってます。」
明日の夜は泊まりに来るというラルクに挨拶をし、ガチャンと電話を切る。あれからずいぶんと話してしまい、気付けば夜の11時だ。
「ふぁ……。」
あくびも出てきたところで、もう寝るかと洗面所に向かい鏡を見た時、思い出した。
「あ! シバの電話!」
ラルクとの長電話で、シバと話す貴重なチャンスを逃してしまった。
(癒しの時間が……。)
がっくりとうなだれながら、マイナスな気持ちが膨らむ前にさっさと寝ようと洗面台にある歯ブラシに手を伸ばした。
「セラ、元気ないね。」
「え、そんなことないけど。」
アックスとダンスを踊ったあのイベントから1週間が過ぎた。
俺はシュリと2人で作業室で昼ごはんを食べている。週末は何も考えないように無心で料理をしたが、ずいぶんと作り過ぎてしまったため、朝シュリの分もとお弁当を作って渡したのだ。食べたいと騒ぎそうな他の先輩達の分も用意して渡したところ、予想以上に喜んでいた。
「落ち込んでる理由は分かってるけどね!」
「え、な、なんだよ。」
シュリがふふんと笑っている。
(シュリに分かるわけないよ。だって、俺の悩みは……、)
考えるとまた溜息をつきそうになる。
俺が沈んでいる原因は、シバからの電話が無くなってしまったということだ。あの日、ラルクと長々話したことでシバと会話をすることはできなかった。そして次の日、絶対に出るぞという気持ちでリビングでスタンバイしていたのだが、シバはいつもの時間になっても電話をしてこなかった。
それから毎日ソワソワと待っていたものの、電話は1度も鳴ることはなく、だんだんと待っているのが悲しくなってきた。
(俺があの時出なかったからかな……。でも、だからってこんなに連絡しないことってある?)
シバは俺と話して楽しいのだといつも言ってくれる。その言葉に嘘はなかったように思うが、何か理由があるのだろうか。
(それか、単純に忙しいとか?)
そう考えて、最初は苦労しているであろうシバを心配していたのだが、眼鏡先輩にシバから仕事の事で連絡があったと聞き、俺は漫画であれば『ガーン!』と背景に音がつきそうなくらい落ち込んだ。
「なんでもないよ。」
そう言っておかずを箸でつまんだ俺に、目の前のシュリは衝撃の一言を放った。
「アインラス様のことでしょ?」
俺は持っていた唐揚げをポロッと落とす。それは弁当を包んでいた布にコロッと落ちた。
「あ、良かったね、床じゃなくて。無事だよ!」
明るく言うシュリの顔を無意識にじっと見る。
「セラ、アインラス様から連絡が来ないことで悩んでるんでしょ。」
「え、ど、どうして!」
俺の今一番の悩みを言い当てる彼女に、俺の目が見開く。
「だって、セラ最初も連絡無かった時元気なかったし、さっき先輩が電話あったって言った時、ショックな顔してたから。」
(か、顔に出てたのか!)
「でも、気にしなくていいと思う。アインラス様はセラのことちゃんと、」
「あの!ち、違うから!」
シュリは驚く俺を置いてどんどん話を進めようとしてくる。これ以上勝手な想像をしてもらっては困ると、俺は強く否定した。
「違うって?」
「だ、だから、アインラス様のことじゃないっていうか……第一、落ち込んでない!」
「え~、絶対そうでしょ。私そういうの分かるんだから!」
得意げに言うシュリの言葉は全て正解なのだが、「うん!俺、シバに片思い中♡だから電話が来なくて寂しいんだ……。」など言えるはずがない。
「えっと、そもそもなんだけど……俺は他の人よりちょっと仲良くさせてもらってるだけで、別に、その……、」
焦る俺に、シュリはにやにやしながら顔を近づける。
「まぁ、認めなくてもいいけど……いいこと教えてあげよっか。」
「…………なに。」
話の流れからシバに関することだろう。俺は小さい声でシュリの言葉を待った。
「あのね……アインラス様、あっちの国の人達にセラのこと『恋人』だって言ってるみたい。」
「は???!!!」
俺は叫んで立ち上がる。ガタッと揺れた椅子が後ろに倒れ大きな音が出るが、気にせずシュリに詳細を聞いた。
「どういうこと?なんでシュリがそんなこと知ってるの?」
「先輩から聞いたの。仕事の事で連絡があったって言ってたでしょ。それで先輩が詳しく聞いたら、『ここ1週間、仕事終わりに食事やパーティに誘われる事が多くなって大変だ。』って言われてたらしいの。だから、単純に時間が無くてセラに連絡しないんだと思うよ。」
「だから、俺は別にそんなの気にしてないから。」
(夜、パーティに出て……そうだったんだ。)
ごまかす俺を「はいはい。」とあしらったシュリは、そのまま『恋人』とはどういう意味かを教えてくれた。
「アインラス様ってかっこいいじゃない?本人はおっしゃってないけど、そういうお誘いが多いんだと思う……。でも、恋人がいるって伝えてるから大丈夫なんだって。」
「それが……俺?」
「うん!名前も出したらしいよ。」
「それ、本当……?」
(それって、まさかシバは俺のこと……。)
結局は結ばれることのない運命だが、想い人であるシバに恋愛感情で好かれているかもしれないというのは、正直言って凄く……かなり……いや、凄く嬉しい。
(って、何喜んでんだよ!俺はアックスと恋人同士にならなきゃいけないのに!)
シバは、恋人であると公表してしまうくらいに俺のことが好きなのか……?そう思うと胸がジワッと熱くなり、シュリの顔がまともに見れない。
「えっと、そうなんだ?」
照れた顔や声はどうしようもなく、シュリに上ずった声でそう返した。
「先輩は『女避けにセラを使った』って笑ってたけどね。」
(…………あ、そういう事か。)
一瞬舞い上がった気持ちがスンと冷めていく。
(俺の名前を使ったってだけか……。)
「うん。……先輩の言ってることが真実だと思う。俺相手ならそう言ってもいいって思ったんだよ。」
「え!それはないでしょ。アインラス様は真面目な方だし。」
「真面目ならそもそも嘘つかないでしょ。俺は恋人じゃないんだし。」
「……えっと、本当に付き合ってない、の?」
(シュリは本気で、俺とシバが恋人同士だと思ってたのか!)
「あのさ、誤解してるみたいだけど、付き合ってないよ。」
「え?あの、本当に?」
「うん。」
今度はシュリが焦りだした。
先輩の話を聞いて、嘘や冗談を言わないシバが言ったとなれば本当だろうと思っていたらしい。
(はぁ……俺の喜びを返してよ……。)
俺は包みに落ちた唐揚げを拾って、ふっと息を吹きかけると静かに口に運んだ。
全てを渡し終えた頃には外が暗くなっていたため、俺はそのまま彼らと食事をして帰ってきたのだ。
「はぁ~、楽しかった……。」
歩いて宿舎近くまで戻って来た俺は、つい今日の感想を漏らす。しかし部屋に近づくにつれ、考えなければいけないことがあったのだと思い出した。
(そうだ……今日のイベントの事、確認しようと思ってたんだ。)
部屋に帰ってリビングに入る。父は今頃、元仕事仲間と騒いでいる頃だろう。明るい父がいない部屋はシーンとしていて少し寂しい。
暖房を付けそのまま自室へ入り、椅子に座ると一目散に攻略ノートを開いた。
今日、初めてアックスがゲーム通りの行動をしなかった。自分が何か会話の選択肢を間違えたのかと思ったが、ノートを確認する限りそれはない。
ゲームでは、特に主人公が何かを言ったから隣に座ったわけではなく、自然とアックスが座ってきたようだ。
そのままパラパラとノートをめくる。
(特別何かする必要があったわけじゃないんだ……。だったら、)
「俺がダンスの時、寸止めできなかったからかなぁ?」
思い当たる部分はそこしかない。街での会話は全て完璧だったし、踊りも、別の曲を踊ってしまったがおおむね流れは良かったように思う。ーーとなると、やはりあのキス?が原因かもしれない。
(どうしよう。このままだと本当に告白してくれるのか怪しい。)
最後のハグも、ドキドキしていたというよりは俺の奇怪な行動に笑い、冗談で抱き返してきたようだった。
(ゲームでは、どんな感じだったっけ。)
俺はノートに事細かに書いてあるメモ隅々に目を通す。それと同時に、ゲームの記憶を思い出そうと頭をひねった。
「馬車のシーンはぼんやり覚えてる。たしか、1枚絵もあって……。」
はっきりとは思い出せないが、目元を少し赤くしたアックスがこちらをじっと見ている絵であったように思う。
(うーん、やっぱり俺の時とは雰囲気が違うような……。)
考えながら、意味もなくノートをめくっていると、電話が鳴った。
「あ、シバだ!」
俺はドタドタと走って電話を取りに行く。
「はい!セラ・マニエラです!」
つい張り切った声を出してしまった。これではまたシバに揶揄われてしまう……。顔をしかめつつ相手の声を待っていたが、聞こえてきたのは聞き慣れた人物のものだった。
「セラさん?ああ、帰ってたんですか。良かった~。」
「ラルクさん?どうしたんですか?」
「いや、今日騎士棟に来てたでしょ。知り合いからセラさん達が外にご飯食べに行ったって聞いたんですが、ちゃんと帰ってきたのか心配で。」
「あの、俺もうすぐ20歳ですよ。ちゃんと帰れます。その、心配してくれたことは嬉しいですけど……。」
「そうなんですけどね。今日はシシルさんもいないし、一応連絡しとこうと思って。」
兄のような立場から、若干父2号になりつつあるラルクは、声の感じからして本当に俺のことを心配していたようだ。
「ラルクさんって、やっぱりいい人ですね。」
「え、なんですか急に!」
「急じゃないです。いつも父とラルクさんのいいところ話してますよ。」
「え!シシルさん、俺のこと何か言ってるんですか?!例えばどんな……?」
「職場体験の時にラルクさんが剣を振るのを見て、かっこいいって言ってましたよ。」
「ええ!そうなんですか!? そういうの、もっと……あります?」
俺が中途半端に情報を与えたせいで、期待させてしまったようだ。「小さなことでもいいんで!」とぐいぐい聞いてくる。
「えっと……、」
俺の言葉をワクワクと待っているラルクをがっかりさせないようにと、俺は最近の父との会話を思い出すことに集中した。
「セラさん、おやすみなさい。」
「ラルクさんも。また明日の夜待ってます。」
明日の夜は泊まりに来るというラルクに挨拶をし、ガチャンと電話を切る。あれからずいぶんと話してしまい、気付けば夜の11時だ。
「ふぁ……。」
あくびも出てきたところで、もう寝るかと洗面所に向かい鏡を見た時、思い出した。
「あ! シバの電話!」
ラルクとの長電話で、シバと話す貴重なチャンスを逃してしまった。
(癒しの時間が……。)
がっくりとうなだれながら、マイナスな気持ちが膨らむ前にさっさと寝ようと洗面台にある歯ブラシに手を伸ばした。
「セラ、元気ないね。」
「え、そんなことないけど。」
アックスとダンスを踊ったあのイベントから1週間が過ぎた。
俺はシュリと2人で作業室で昼ごはんを食べている。週末は何も考えないように無心で料理をしたが、ずいぶんと作り過ぎてしまったため、朝シュリの分もとお弁当を作って渡したのだ。食べたいと騒ぎそうな他の先輩達の分も用意して渡したところ、予想以上に喜んでいた。
「落ち込んでる理由は分かってるけどね!」
「え、な、なんだよ。」
シュリがふふんと笑っている。
(シュリに分かるわけないよ。だって、俺の悩みは……、)
考えるとまた溜息をつきそうになる。
俺が沈んでいる原因は、シバからの電話が無くなってしまったということだ。あの日、ラルクと長々話したことでシバと会話をすることはできなかった。そして次の日、絶対に出るぞという気持ちでリビングでスタンバイしていたのだが、シバはいつもの時間になっても電話をしてこなかった。
それから毎日ソワソワと待っていたものの、電話は1度も鳴ることはなく、だんだんと待っているのが悲しくなってきた。
(俺があの時出なかったからかな……。でも、だからってこんなに連絡しないことってある?)
シバは俺と話して楽しいのだといつも言ってくれる。その言葉に嘘はなかったように思うが、何か理由があるのだろうか。
(それか、単純に忙しいとか?)
そう考えて、最初は苦労しているであろうシバを心配していたのだが、眼鏡先輩にシバから仕事の事で連絡があったと聞き、俺は漫画であれば『ガーン!』と背景に音がつきそうなくらい落ち込んだ。
「なんでもないよ。」
そう言っておかずを箸でつまんだ俺に、目の前のシュリは衝撃の一言を放った。
「アインラス様のことでしょ?」
俺は持っていた唐揚げをポロッと落とす。それは弁当を包んでいた布にコロッと落ちた。
「あ、良かったね、床じゃなくて。無事だよ!」
明るく言うシュリの顔を無意識にじっと見る。
「セラ、アインラス様から連絡が来ないことで悩んでるんでしょ。」
「え、ど、どうして!」
俺の今一番の悩みを言い当てる彼女に、俺の目が見開く。
「だって、セラ最初も連絡無かった時元気なかったし、さっき先輩が電話あったって言った時、ショックな顔してたから。」
(か、顔に出てたのか!)
「でも、気にしなくていいと思う。アインラス様はセラのことちゃんと、」
「あの!ち、違うから!」
シュリは驚く俺を置いてどんどん話を進めようとしてくる。これ以上勝手な想像をしてもらっては困ると、俺は強く否定した。
「違うって?」
「だ、だから、アインラス様のことじゃないっていうか……第一、落ち込んでない!」
「え~、絶対そうでしょ。私そういうの分かるんだから!」
得意げに言うシュリの言葉は全て正解なのだが、「うん!俺、シバに片思い中♡だから電話が来なくて寂しいんだ……。」など言えるはずがない。
「えっと、そもそもなんだけど……俺は他の人よりちょっと仲良くさせてもらってるだけで、別に、その……、」
焦る俺に、シュリはにやにやしながら顔を近づける。
「まぁ、認めなくてもいいけど……いいこと教えてあげよっか。」
「…………なに。」
話の流れからシバに関することだろう。俺は小さい声でシュリの言葉を待った。
「あのね……アインラス様、あっちの国の人達にセラのこと『恋人』だって言ってるみたい。」
「は???!!!」
俺は叫んで立ち上がる。ガタッと揺れた椅子が後ろに倒れ大きな音が出るが、気にせずシュリに詳細を聞いた。
「どういうこと?なんでシュリがそんなこと知ってるの?」
「先輩から聞いたの。仕事の事で連絡があったって言ってたでしょ。それで先輩が詳しく聞いたら、『ここ1週間、仕事終わりに食事やパーティに誘われる事が多くなって大変だ。』って言われてたらしいの。だから、単純に時間が無くてセラに連絡しないんだと思うよ。」
「だから、俺は別にそんなの気にしてないから。」
(夜、パーティに出て……そうだったんだ。)
ごまかす俺を「はいはい。」とあしらったシュリは、そのまま『恋人』とはどういう意味かを教えてくれた。
「アインラス様ってかっこいいじゃない?本人はおっしゃってないけど、そういうお誘いが多いんだと思う……。でも、恋人がいるって伝えてるから大丈夫なんだって。」
「それが……俺?」
「うん!名前も出したらしいよ。」
「それ、本当……?」
(それって、まさかシバは俺のこと……。)
結局は結ばれることのない運命だが、想い人であるシバに恋愛感情で好かれているかもしれないというのは、正直言って凄く……かなり……いや、凄く嬉しい。
(って、何喜んでんだよ!俺はアックスと恋人同士にならなきゃいけないのに!)
シバは、恋人であると公表してしまうくらいに俺のことが好きなのか……?そう思うと胸がジワッと熱くなり、シュリの顔がまともに見れない。
「えっと、そうなんだ?」
照れた顔や声はどうしようもなく、シュリに上ずった声でそう返した。
「先輩は『女避けにセラを使った』って笑ってたけどね。」
(…………あ、そういう事か。)
一瞬舞い上がった気持ちがスンと冷めていく。
(俺の名前を使ったってだけか……。)
「うん。……先輩の言ってることが真実だと思う。俺相手ならそう言ってもいいって思ったんだよ。」
「え!それはないでしょ。アインラス様は真面目な方だし。」
「真面目ならそもそも嘘つかないでしょ。俺は恋人じゃないんだし。」
「……えっと、本当に付き合ってない、の?」
(シュリは本気で、俺とシバが恋人同士だと思ってたのか!)
「あのさ、誤解してるみたいだけど、付き合ってないよ。」
「え?あの、本当に?」
「うん。」
今度はシュリが焦りだした。
先輩の話を聞いて、嘘や冗談を言わないシバが言ったとなれば本当だろうと思っていたらしい。
(はぁ……俺の喜びを返してよ……。)
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