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一瞬の嵐
しおりを挟む「………………」
カツンッ。
カツンッ、カツン。
カツンッ、カツン、カツン。
小さな靴音が連続して鳴る。
決して大きくないその音が、何故か空間中に響き渡っているように錯覚するのは、こちらへツカツカと早歩きで近付いてくる少女が迫力のオーラを身体中から噴出しまくっているせいだろう。
「────────よくも。よくも、あたくししか愛していないなどと大嘘を言いましたわね!! 婚約なんて破棄しますわっ!!」
「ばっ、馬鹿な!? お前、どうしてここにいるんだ!?」
「成敗いぃっ!!」
「げぶふぁっ!?!?」
重たい音が叫び声を上げた男から聞こえたが、近距離から強烈な魔法の一撃を喰らわしたようだ。
その証拠に、男は閃光が収まるなりもんどり打って倒れた。
暫く目覚める様子はない。
「皆様方、コレはこちらで処理します。ですので、魔法警察への通報は必要ありませんわ」
そう言った少女の顔は、この場にいる全員に向けて微笑んでいる。
だが、目が。
────────目だけが全く笑っておらず、氷よりなお冷たく夜より暗く少しも輝いていなかった。
(────────逆らったら殺されるっ!?!?)
少女の異様な雰囲気によって心が一つになった皆の返事は一つしかなかった。
「「「「「「分かりましたあぁっ!!」」」」」」
「ふむ、よろしくってよ。では、あたくしはこれで失礼しますわ」
ペコリと行儀よく、斜め四十五度の角度で一礼。
それから少女は男を引き摺って去って行った。
「「「「「「………………」」」」」」
少女の姿が完全に消えた時。
一瞬の嵐のような突然の出来事に、皆の心は再び一つとなった。
((((((………………何だったんだろう?………………今のは………………??))))))
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