いきなり婚約破棄されましたが、ちょっと待って下さい

谷川ベルノー

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1 浮気の疑惑

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「ソンナ! 君との婚約を破棄させてもらおう!!」

 目鼻顔立ちが整った美形の青年は、怒りの眼差しを婚約者に向けて宣言した。


 御立腹の男性の名前は【コンヤ・クハキ・スルンダ】

 言われた言葉に呆然としている女性の名前は【ソンナ・ノイヤー・デスワヨ】


 伯爵である彼はソンナと共に愛し合い、将来を誓いあっていた。

だが、今は会うなり婚約破棄を言い渡すという暴挙を行なっている。


「そんな、どうしてですか! コンヤ様!! 一体、私に何の落ち度があるというのですか!?」

 本当にあまりにも突然過ぎる。
 ソンナは、目を白黒させながら悲鳴に似た疑問を叫んだ。

 自分が、何をしたというのかと。



 魔物を素手で仕留めて血塗れになった私を見ても、怯えることなく褒め称えて下さったり。

 誤って魔法を誤射してしまい瀕死の重症にしてしまっても「君は随分とお転婆なんだね」の一言で許してくださる程に優しく気遣いの出来る彼が、ここまで激怒しているのだ。

 余程のことがない限り、怒る筈がないということはそれ相応の原因がある。
 けれど、乱心する程の怒りを抱かせてしまった理由に全くもって心当たりがない。


「惚けないでもらおう! 俺は、昨日の昼過ぎに見てしまったんだ。
見知らぬ男と仲睦まじく歩いていただけでなく、抱擁され喜んでいた君を!!」

「あぁ、それでしたら」

「俺という婚約者がいなが────」

「その人、お兄様です」

「────えっ?」

「ですから、長らく流浪の旅に出ていた私のお兄様です。
昨日、事前の連絡もなく急にお帰りになられたんですよ」

「…………」



 事実を知ったコンヤ様は、私に素直に謝った。

────それは、己の罪を全身で余すことなく表していた。
過ちを一つの美として昇華した芸術品。
見ていて思わず拍手喝采を送りたくなる程の綺麗で美し過ぎる謝罪だった────。


 婚約破棄?
 勿論、無くなりましたよ。

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