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2 愛への裏切り
しおりを挟む「ソンナ! 君との婚約は破棄だっ!!」
そう言い放った眉目秀麗のハンサムな青年は、強い気持ちを瞳に込めてソンナを見つめた。
「次は、どういった勘違いですか?」
一度目は唐突でかつ一生言わないであろう台詞によって狼狽えてしまったが、二度目となるので今度は冷静だ。
「昨日のことだ、妙な奴が俺の前に現れた。
なんでも、君が本当に愛しているのは自分だとソイツは言い張ったんだ」
「自称恋人なら、今まで何人も現れましたよね」
コンヤ様に言い掛かかったあげく、逆恨みして襲いかかるなり軽くあしらわれた者は今まで何人もいる。
私とは違い、相手を血溜まりに沈めて病院送りにすることは決してないのだから、なんと慈愛に満ちた方なのだろうか。
「俺も最初は、ただ妄想を拗らせているだけの可哀想な
奴だと思っていた。
だが、奴は自慢気に話しながらこの写真を渡してきたんだ」
(……写真……?)
はて、どういうことなのか。
お兄様帰還記念として執事に家族写真を撮ってもらってはいたが、それ以外となると最近の心当たりは全くもってない。
証拠だと渡された写真を確かめてみれば、そこには自身のプライベートな光景が何枚も写し出されていた。
『格闘技のススメを読書中』
『お姉様やお母様と共にお気に入りの店の新作の紅茶を堪能しつつ、色々なケーキを味わい尽くしている楽しい女子会』
『ペットであり番犬のイヌデスワンと戯れている鍛錬の光景』
他にも色々とあるそれは、私のなんということはない日常の一コマが切り取られている光景だった。
「こ、これって……!?」
「俺にも見せたことのない君の姿。
つまりこれは、俺よりも君は彼を────」
「コンヤ様、この撮影者はただの犯罪者です!」
「────えっ?」
「写真をよく見て下さい。
普通に撮ったのでは有り得ない角度とアングルのものばかりではありませんか?」
「……い、言われてみれば確かに。
ハッ!? つまり、この写真は盗撮で得た物だということなのか!?」
「えぇ、そうです!!」
そうハッキリと断言されて被写体、つまりソンナや家族の皆がレンズの方ではなくあらぬ方向を見ていてはおかしい写真もあることにコンヤは気付いてしまった。
これは、本人達も知らずに撮られていたということに他ならない証明。
恐らく、何らかの存在隠蔽の魔法を使って行われた下卑た行為の結果ということになる。
変態犯罪者の言葉を信じてしまっていたコンヤ様は、歌に真心を込めて私に謝った。
────その耽美な歌声は謝罪を固有のハーモニーに乗せて、独特な旋律で紡がれていく。
この世に、こんなに美しいメロディーがあったなんて。
そう思う程に素敵な声色。
感動のあまり涙が溢れて止まらない。
生まれて初めて味わう神秘的な体験。
そう、それは隠れ見ていた自称恋人がむせび泣いて出てくる程に心を穿つひとときだった────。
その後、婚約破棄は破棄されました。
変態犯罪者?
勿論、逮捕されましたよ。
…………私が、これでもかと懲らしめた後にですけど。
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