そうしてわたしは無視をするの

谷川ベルノー

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そうしてわたしは無視をするの

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「助けてくれっ!! 助けてくれよぉっ!?」 
「………………」

 涙と鼻水が混じった悲鳴が聞こえるけれど、わたしは聞こえないフリをし続けて自分の部屋にいる。



 彼は、世間という外では完璧な恋人に見られている。


 愛する人だけでなく誰にでも優しく、親切。
 誰かに怒ることもない素敵な人格者。


 でも、それはあくまで外での話。
 少しだけ詳しく言うと、誰かが見ている場合限定。



 彼の愛してるは、自分の言いなりであることを強要する。

 暴力と罵倒が愛の鞭だと言わんばかりに理不尽を振り下ろし続ける毎日。

 自分の物になったら、自分の思い通りであることが当たり前という感覚であるのだろうかは知らないけれど。


 偶然で手に入れた呪いの道具。

 恨みと怒りが目に見える形となって相手に襲いかかるというもの。

 そんなことは有り得ないと思いながらも、どこか助けを求めるように使った。



 きっと、わたしは限界だったんだろうね。



 結果は、本物だった。
 確かめに行く必要なんてない。
 使ってすぐに彼の部屋から初めて聞く言葉の数々が溢れかえったのだから。



「おいっ! 助けてくれ! 助けろって言ってるだろう!? いい加減に来いよ! 役立たずがよぉっ!!」 
「………………」

 悲鳴が脅迫の怒声になっても、またすぐに情けない涙声に変わる。


 はいはい、ちゃあんと助けてあげるわよ。

「 今まで俺が悪かった」

 そんなふうに謝ってくれたらだけど、ね。
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