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でも、ありがとう
しおりを挟むある日、わたしは風邪をひいてしまった。
なんてことはない、軽い風邪。
「ちょっと風邪になっちゃったみたい」
電話を掛けたわたしにとっては、大した事じゃない。
でも、電話向こうの彼はそう思わなかった。
『────────なっ、なんだって!? そりゃあ大変だあぁ────────!?』
そう大声で叫ぶなり、切れた電話。
よぎるのは、嫌な予感。
「ただいまぁっ!!」
しばらくして、息を切らして帰ってきてくれた彼は、両手にいくつもの大袋。
中身はどれもパンパンで、今にもすぐにはち切れてしまいそう。
「………………」
呆れるわたし。
その視線の意味に気付いて、荷物をそっと下ろしてから、バツが悪そうに頬を掻く彼。
「ごっ、ごめん! ………………君が病気になったと思ったら、居ても立っても居られなくて………………ついっ!!」
「いくらなんでも、こんなには買いすぎっ!!」
「………………うぅっ………………おっしゃるとおりでございますです………………はぃ………………」
イケメンで格好いいけど、とってもおっちょこちょいでかなりの心配性。
溜め息は、いくつも吐いた。
────────だからといって、彼を嫌いになんてなれない。
仕方ないなぁと苦笑して、気に掛けてくれる優しさに微笑んで言った。
「────────でも、ありがとう」
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