女神に裏切られたので、世界を救うことをやめたいと思います

プロローグ

召喚の直前に

『突然ですが、あなたたちは勇者として選ばれてしまいました』

　そんなことを言われたのは、俺が散歩に出かけて3分経つか経たないかで白い光に飲まれた直後のことだった。

　気づくと、俺は真っ白な世界にいた。いや、正確に言うと俺だけでなく、高校生か中学生くらいの男女が数人いたが、それどころではなかった。

　目の前に、白い布でできた衣を着た、金髪の女性がいたからだ。

　俺は目の前の光景に、信じられないという思いから言葉を失っていた。

『突然のことで混乱しているようですから、手短に説明いたします。

　まず、私の名前はリュミエール。光の女神です』

　異世界？勇者？女神？頭がついていかない。

『私の管理する世界、ナトゥーラに危機が迫っているのです。

　そのため、あなたたちには申し訳ないのですが、勇者に選ばれてしまったため、異世界に召喚させてもらいます』

　危機が迫っているなら、その世界の人でなんとかなるだろ。なんで俺たちなんだよ。

「「異世界召喚キター！！」」

　中学生くらいの男子二人が、勇者の召喚と聞いて、テンションが上がってしまったらしく奇声を上げていた。

「マジで！？これ本物！？」

　ドッキリではないかと疑うが、どこか喜んでいるように見える高校生男子と……

「志望大学が……将来の夢が……」

　自身の輝かしい未来が奪われて、絶望に打ち拉がれている高校生女子が……もしかして受験生か？

『さて、そろそろ時間です。
　私からお詫びとして、あなたたちの世界で『チート』と呼ばれているものを付与しておきます。

　どうか、私の世界を救ってください！！』

　最後に、女神と名乗った女性は俺たちに頭を下げて、そして俺たちは再び白い光に呑み込まれた。

　そして俺は……光が視界を埋め尽くす直前に見た、女神の視線がこちらに向いているのを確認して意識を失った。