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プロローグ
城からの脱出
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……うん。今までの話を振り返ってみたら、確かにそんなことは一言も言っていない。
「まあ、脱出は実に簡単なものでな」
このジメジメとした牢屋のどこを見ても、脱出するのは簡単そうではない。
だが、このままだとどのみち死んでしまうため、俺は爺さんの言葉に耳を傾ける。
「お主の後ろに、石造りの壁があるじゃろ?」
その言葉に、俺は後ろを振り向く。
うん、確かに石造りの壁があるな。
長方形の石が、隙間なく敷き詰められている。
石の表面には苔がびっしり生えていて、どこか触りたくない雰囲気を醸し出している。
まさかとは思うが爺さん、これを触れと?
このジメジメとして黴も一緒に生えていそうなこの苔を触れと?
しかし、じっと見つめているとあることに気づいた。
「なあ爺さん、俺には魔法の知識が全くないんだが……」
「言ってみなされ」
「……この苔、認識を阻害する魔法か何かなのか?」
俺のこの言葉に、爺さんは「ふむ」といい、続きを促した。
「いやだって俺の目にゃ、この苔が半透明に見えていて、その後ろの石壁に数字が描かれているのも見えるんだ」
何を言っているかわからないって?
それであっている。俺も何を言っているかわからない。
しかし、それを聞いた爺さんは「ふむふむ」と頷いて口を開いた。
「うむ。お主の見た通りの情報であっているぞ。
ちなみに、そこがこの牢の脱出口じゃよ」
「待てやこら」
皆さんは、俺が召喚された当時のことを覚えているだろうか。あの王様らしき男性を支えていた、棒倒しの棒に使われそうな男が言った「どうせ牢屋から出られない」という言葉を。
しかし、この牢屋には認識を阻害する魔法がかかっているらしい。が、魔法は爺さんが使ってたから、実はこの中でも使えるんじゃないか?俺の魔力は無いに等しいし、使い方も知らんからわからんけど。
まてよ?半透明に見えるってことは、触ってもジメッとした感触はしないってことだよな……?
それなら簡単だ。数字の通りに触れば……てうぇい!?
「感触が!苔特有のファサッとしてジメッとしてズニッって感触が!!」
「……ブフォッ」
おい爺さん。今笑ったな?吹き出して笑ったな?
おい、目をそらすな。こっち見ろ。
「すごいじゃろ?これが魔法じゃ。感触から匂いまで全て本物と同じように作られておる」
誤魔化すように今頃説明するな。無表情を保っているようだが、肩が震えているぞ。笑ってんだろ、な?
「……フッ」
また笑いやがっ……もういい。諦めよう。
この魔法を消すにはどうすればいいか考えるか。
そうだな。スキルに[消魔]とかあったな。これ使ってみるか。
そう考えて、俺は手のひらを苔に押し付けるように……何も変わらん!
どうやって使うんだろうか。
「なあ爺さん。スキルってどうやって使うんだ?」
俺はスキルの使い方を爺さんに聞くことにした。
笑いが収まっていないらしく、未だに震えが治まらないらしい爺さんは、端的に俺に説明してくれた。
曰く、ステータス同様念じれば使えるらしい。
ってことでやってみた。
すると……なんということでしょう。
あんなにファサッとしてジメッとしてズニッとしていた半透明の苔が、跡形もなく消えてしまったではありませんか。
そしてその後ろに隠れていた石造りの壁がはっきりと見えるようになりました。
これは先ほどまで笑いをこらえていた爺さんもびっくり……してねえな。
未だに笑いをこらえている。一体何がツボに入ったのだろうか。きっと常人にはわからないことなんだろうな。
とりあえず、数字の順番に石を触ってみようと思う。
石に書かれた数字は10まで。なぜ異世界に、地球で使われていた数字が使用されているのか疑問だったが、先ほどのステータスを思い出して納得した。
ああ、言語学習か。
そして今、頭の中で『ピコーン』という、某巨大ヒーローがピンチの時の音みたいなものが聞こえた。
「なあ爺さん、俺は今から脱出するが、俺が脱出した後どうなるんだ?」
俺は石に書かれた数字を順番に触りながら、今後のことを訊いた。
悪魔が逃げ出すんだ。大騒ぎになるだろう。
「ふむ。おそらく、お主を探すために騎士が動くじゃろう。
後は暗殺者やら、殺し屋やら、最悪他の勇者までもが動くじゃろうな」
爺さんの言葉を尻目に、俺は全ての石を触り切った。
その瞬間、石があった場所が消え、そしてそこに奥の見えない穴が出現した。
「じゃあな、爺さん。世話になったぜ」
穴に入る前、爺さんにお礼を言う。
短い間だったが、世話になったのは事実だし、この世界のことも少しだけ知ることができた。
「ああ、お主も気をつけてな。まあ、お主は簡単には死なんじゃろ……ブフォッ」
我慢しろよ。色々と台無しだ!!
俺は次に爺さんと会った時、絶対に一発顔面にくれてやることを心に決め……いや、なんでもない。
ところで、足元に置いてあった、例のキャベツの芯もどきを練習がてら[看破]してみたら、<キャベツの芯(睡眠魔法付与)>とか書かれていた。本当にキャベツの芯だったのかよ。
危なかった。が、とりあえず数個持ってくことにした。
いえ、何も怪しいことなぞ考えていませんともさ。
「まあ、脱出は実に簡単なものでな」
このジメジメとした牢屋のどこを見ても、脱出するのは簡単そうではない。
だが、このままだとどのみち死んでしまうため、俺は爺さんの言葉に耳を傾ける。
「お主の後ろに、石造りの壁があるじゃろ?」
その言葉に、俺は後ろを振り向く。
うん、確かに石造りの壁があるな。
長方形の石が、隙間なく敷き詰められている。
石の表面には苔がびっしり生えていて、どこか触りたくない雰囲気を醸し出している。
まさかとは思うが爺さん、これを触れと?
このジメジメとして黴も一緒に生えていそうなこの苔を触れと?
しかし、じっと見つめているとあることに気づいた。
「なあ爺さん、俺には魔法の知識が全くないんだが……」
「言ってみなされ」
「……この苔、認識を阻害する魔法か何かなのか?」
俺のこの言葉に、爺さんは「ふむ」といい、続きを促した。
「いやだって俺の目にゃ、この苔が半透明に見えていて、その後ろの石壁に数字が描かれているのも見えるんだ」
何を言っているかわからないって?
それであっている。俺も何を言っているかわからない。
しかし、それを聞いた爺さんは「ふむふむ」と頷いて口を開いた。
「うむ。お主の見た通りの情報であっているぞ。
ちなみに、そこがこの牢の脱出口じゃよ」
「待てやこら」
皆さんは、俺が召喚された当時のことを覚えているだろうか。あの王様らしき男性を支えていた、棒倒しの棒に使われそうな男が言った「どうせ牢屋から出られない」という言葉を。
しかし、この牢屋には認識を阻害する魔法がかかっているらしい。が、魔法は爺さんが使ってたから、実はこの中でも使えるんじゃないか?俺の魔力は無いに等しいし、使い方も知らんからわからんけど。
まてよ?半透明に見えるってことは、触ってもジメッとした感触はしないってことだよな……?
それなら簡単だ。数字の通りに触れば……てうぇい!?
「感触が!苔特有のファサッとしてジメッとしてズニッって感触が!!」
「……ブフォッ」
おい爺さん。今笑ったな?吹き出して笑ったな?
おい、目をそらすな。こっち見ろ。
「すごいじゃろ?これが魔法じゃ。感触から匂いまで全て本物と同じように作られておる」
誤魔化すように今頃説明するな。無表情を保っているようだが、肩が震えているぞ。笑ってんだろ、な?
「……フッ」
また笑いやがっ……もういい。諦めよう。
この魔法を消すにはどうすればいいか考えるか。
そうだな。スキルに[消魔]とかあったな。これ使ってみるか。
そう考えて、俺は手のひらを苔に押し付けるように……何も変わらん!
どうやって使うんだろうか。
「なあ爺さん。スキルってどうやって使うんだ?」
俺はスキルの使い方を爺さんに聞くことにした。
笑いが収まっていないらしく、未だに震えが治まらないらしい爺さんは、端的に俺に説明してくれた。
曰く、ステータス同様念じれば使えるらしい。
ってことでやってみた。
すると……なんということでしょう。
あんなにファサッとしてジメッとしてズニッとしていた半透明の苔が、跡形もなく消えてしまったではありませんか。
そしてその後ろに隠れていた石造りの壁がはっきりと見えるようになりました。
これは先ほどまで笑いをこらえていた爺さんもびっくり……してねえな。
未だに笑いをこらえている。一体何がツボに入ったのだろうか。きっと常人にはわからないことなんだろうな。
とりあえず、数字の順番に石を触ってみようと思う。
石に書かれた数字は10まで。なぜ異世界に、地球で使われていた数字が使用されているのか疑問だったが、先ほどのステータスを思い出して納得した。
ああ、言語学習か。
そして今、頭の中で『ピコーン』という、某巨大ヒーローがピンチの時の音みたいなものが聞こえた。
「なあ爺さん、俺は今から脱出するが、俺が脱出した後どうなるんだ?」
俺は石に書かれた数字を順番に触りながら、今後のことを訊いた。
悪魔が逃げ出すんだ。大騒ぎになるだろう。
「ふむ。おそらく、お主を探すために騎士が動くじゃろう。
後は暗殺者やら、殺し屋やら、最悪他の勇者までもが動くじゃろうな」
爺さんの言葉を尻目に、俺は全ての石を触り切った。
その瞬間、石があった場所が消え、そしてそこに奥の見えない穴が出現した。
「じゃあな、爺さん。世話になったぜ」
穴に入る前、爺さんにお礼を言う。
短い間だったが、世話になったのは事実だし、この世界のことも少しだけ知ることができた。
「ああ、お主も気をつけてな。まあ、お主は簡単には死なんじゃろ……ブフォッ」
我慢しろよ。色々と台無しだ!!
俺は次に爺さんと会った時、絶対に一発顔面にくれてやることを心に決め……いや、なんでもない。
ところで、足元に置いてあった、例のキャベツの芯もどきを練習がてら[看破]してみたら、<キャベツの芯(睡眠魔法付与)>とか書かれていた。本当にキャベツの芯だったのかよ。
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いえ、何も怪しいことなぞ考えていませんともさ。
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