女神に裏切られたので、世界を救うことをやめたいと思います

何歳

文字の大きさ
6 / 12
冒険者

脱出した場所は

しおりを挟む
 やあ、俺は召喚されたにも関わらず、なぜか女神に裏切られて悪魔呼ばわりされた挙句牢屋に入れられたけど、そこで出会った爺さんに手助けされて脱出できたものの、予想していなかった場所に出たし着ている服がどう考えてもこの世界風ではないため一人浮いている勇者だよ。

 すまん。長くなった。

 つまりだな。
 あの牢屋にあった穴は、城の裏に繋がっていたわけだ。
 つまり、どういうことかわかるよな?
 ろくに情報を得ないまま出たから、城の裏に何があるかわからず、目の前にある建物に驚愕しているんだ。

 わかるか?この、事前にヤマを張って勉強していたから、自身の勘が外れてヤマを張った場所とは違う場所が出て焦っている状態。まさにこれだよ。

 わからなかったやつ。すまん。簡単に言えば、予想外って意味だ。

 なぜ浮いているかって?

 灰色の石畳に灰色の壁、そして灰色の壁に囲まれた何やら怪しい教会のようなものが目の前に鎮座しておりまして、それがリュミエルなんちゃらの協会だったら嫌だなあと思っているんだよ。
 でも、この教会らしき建物、屋根とか壁に十字架みたいなマークがないから、本当に教会かどうかがわからないんだよね。
 お化け屋敷?いやいや、こんな城の裏にお化け屋敷なんて……いやいや、この歳でお化けが怖いとかないですよ。ええ、怖くなんかないです。何か建物の中から無数の目がこちらを見ているように感じますが、気のせいです。ええ、きっと恐怖で幻覚が見えているだけです。

「あの……」

「なぁ!?」

「ひゃあ!?」

 気配もなくいきなり後ろに立たれ、さらにいきなり声をかけられたら驚くに決まっている。え、俺だけ?

 俺の大声に驚いたのか、後ろの声も悲鳴をあげた。
 気のせいか女性の声に聞こえた。ええ、幽霊はいると思いますけど見たいとは思いません。今後ろを振り向いたか後悔すると思いますともさ。

「あ、あの!」

 しかし、俺の思いは伝わらなかったのか、後ろの女性は気にせず俺に声をかけてくる。
 いや、口に出して言わなければ伝わらないことくらいわかっていますともさ。

「私の孤児院に何か用でしょうか!」

「え、孤児院?」

 孤児院と聞いてうっかり振り向いてしまった。しっかりしろよ俺の意思。

 そして、振り向いたそこには、俺より少し背の小さい、黒髪で肌が薄紫の女性がいた。
 流石にアレだよな。振り向いてそこにいたのが女性だったわけだけども、そこでさらに驚いた声をあげたら失礼だよな。うん。失礼だから我慢したさ。考えただけでも失礼だって?そんなことは知らん。

 さて、孤児院とはなんぞ?
 地球じゃ、児童養護施設という名前だった気がしないでもないんだが、どうも俺の記憶力は信用ならんな。

「孤児院ですよ!どこからどう見ても孤児院でしょう!?」

 俺には、どこからどう見てもお化け屋敷にしか見えない。
 お前んちがお化け屋敷!とか、某少年のように叫びたい。

「とにかく!見てしまったからには逃がしませんから!」

 女性は俺の両手をガシッと掴むと、引きずるようにして孤児院?に連れ込もうとした。

「いやちょっと待て。俺が何をした?」

「何もしていませんが、何かしそうだったので」

 失礼きまわりない。間違えた、失礼極まりない。
 俺のどこが怪しいというんだ。

 ちょっと服装が地球で暮らしてた時のままで、城の牢屋から脱獄してきた直後で、目の前に建っている建物を訝しげに観察して、幽霊がいないかキョロキョロと辺りを見回していただけじゃないか。

 はい、立派な不審者です。

 こうして俺は、異世界の一般市民第一号と出会ったのであった。

 え、城にいたやつ?棒倒しの棒だと思ってる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

処理中です...