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冒険者
薄紫の女性
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結果として俺は孤児院?の中に引きずり込まれてしまった。
助けてくれ。どう考えても某遊園地にある某病院みたいな雰囲気がしてめっちゃ怖い。
応接間的な部屋に引きずり込まれた挙句、目の前に座っている女性が俯きながら笑っているせいで、その雰囲気が倍増されている気もする。なんて言ったらいいかわからないが、端的に言うと心霊スポットで降霊術をやっているような雰囲気かな。
何を言っているかわからないだろうが、俺も何を言っているかわからない。
「さて、盗賊か不審者かさっぱりですけど、この孤児院に何か用ですか?」
すでに俺が、この孤児院に何かすることが前提として話が進んでいらっしゃる。
「一つ訂正させてくれ。俺は盗賊でも不審者でもない」
ここで訂正できなかったら、俺は路頭に迷うだろう。いや、金がないからすでに路頭に迷ってるか。
「へぇ?では、何でこの孤児院に来たんですか?」
やはり、女性の表情は見えない。辛うじて口元は笑っているのが確認できるのだが、それでも目が笑っているか笑っていないかは確認できない。
女性の質問に、俺は正直に答えた。
「勇者として異世界から召喚されたけど悪魔として死刑されそうになったから脱獄したら偶然たどり着いた」
情報は端的に。もちろん嘘はなしで。
信用されたいからね。
「ごめん、なんだって?」
「いやだから、勇者として異世界から召喚されたけど悪魔として死刑されそうになったから脱獄したら偶然たどり着いたんだって」
「おっかしいなー。私の聞き間違いじゃなければ、『勇者』とか『悪魔』とか、『脱獄』とか危険ワードが聞こえた気がしたんだけど」
先ほどの丁寧語が消えたあたり、こちらが素なのだろう。
俺も堅苦しいのは好きじゃないからな。
「何をニヤニヤとしているんですか。気持ち悪い」
「失礼な」
ひでえ。この人、俺の愛想笑いを気持ち悪いと言い切ったぞ。
「とにかく、脱獄した人間を野放しにしておくのはいけませんね……今すぐ聖騎士に引き取ってもらわないと」
おや、どこで選択肢を間違ったのか、早くも俺の異世界ライフが終わる予感が。待て、エンディングソングを流すんじゃない。
「えーっと確かこのソファの裏に……」
女性はそう言って、俺に背を向けた。あ、背中に虹色の石が付いてる……見る角度で色が変わるのか。
じゃなくて、どうなってんだ異世界。ソファの裏に聖騎士を呼ぶボタンか何かがあるのか?だったらそのソファはかなりハイテクだな。剣と魔法が飛び交う異世界にあってもいいのかよ。
だめだ、早く何とかしないと。
「あ、そういえば訊ねたいことがあるんだけど、一つだけいい?」
「何でしょうか?3秒以内にお願いします」
早くね!?
女性はソファにあるボタンを探しているのか、俺に背を向けながらそっけなく答えた。
「と、とりあえず、あなたの種族は何ですか?」
「……」
おーっと俺氏、いきなりド直球な質問!
これは怒られても文句が言えないレベルだぁーっ!
しかし、効果はあったようで女性の動きが止まった。
この世界に召喚された直後から、人の肌の色は嫌でも目に付く。
召喚された場所にいた人間は、全てがペールオレンジ。つまり、何年か前まで『肌色』と呼ばれていた色だった。
つまり、日焼けでもしていない限り、この世界の種族『人』は、ほとんどが『ペールオレンジ』であることがわかっている。
だが、目の前の女性はどうだろうか。上半身は黒いポンチョのようなもので隠れているが、足は歩きやすさを重視したのか濃い青色のショートパンツを履いている。つまり、足が出ている。
顔も先ほど確認したが、やはり薄紫色だ。
しかし、女性は後ろ向きのまま固まっている。
そして、故障したロボットのようにぎこちない動きで元の姿勢、俺と対面した姿勢に座り直した。
「……」
「……」
しばらく無言の時間が過ぎたが、先に口を開いたのは女性だった。
「な、なんのことでしょうか?私は『人』ですよ?」
苦し紛れなのか、嘘がつけないのか、明らかに嘘と分かる言葉を顔を背けながら紡いでいた。
「いや、だけど……あなたの肌、どう見ても薄紫色ですよね?」
「え、水色のはずだけ……いや、今のなし」
女性は口を滑らしたのか、冷や汗をかきながら後ろを向いた。それは先ほどのように、聖騎士を呼ぶためではなく、さらなる追求から逃れるかのごとく素早い動きだった。
だが、今の言葉で引っかかったものがあった。
『水色のはず』。そう彼女は言った。
じゃあ、俺が見ているものは一体なんだ?
助けてくれ。どう考えても某遊園地にある某病院みたいな雰囲気がしてめっちゃ怖い。
応接間的な部屋に引きずり込まれた挙句、目の前に座っている女性が俯きながら笑っているせいで、その雰囲気が倍増されている気もする。なんて言ったらいいかわからないが、端的に言うと心霊スポットで降霊術をやっているような雰囲気かな。
何を言っているかわからないだろうが、俺も何を言っているかわからない。
「さて、盗賊か不審者かさっぱりですけど、この孤児院に何か用ですか?」
すでに俺が、この孤児院に何かすることが前提として話が進んでいらっしゃる。
「一つ訂正させてくれ。俺は盗賊でも不審者でもない」
ここで訂正できなかったら、俺は路頭に迷うだろう。いや、金がないからすでに路頭に迷ってるか。
「へぇ?では、何でこの孤児院に来たんですか?」
やはり、女性の表情は見えない。辛うじて口元は笑っているのが確認できるのだが、それでも目が笑っているか笑っていないかは確認できない。
女性の質問に、俺は正直に答えた。
「勇者として異世界から召喚されたけど悪魔として死刑されそうになったから脱獄したら偶然たどり着いた」
情報は端的に。もちろん嘘はなしで。
信用されたいからね。
「ごめん、なんだって?」
「いやだから、勇者として異世界から召喚されたけど悪魔として死刑されそうになったから脱獄したら偶然たどり着いたんだって」
「おっかしいなー。私の聞き間違いじゃなければ、『勇者』とか『悪魔』とか、『脱獄』とか危険ワードが聞こえた気がしたんだけど」
先ほどの丁寧語が消えたあたり、こちらが素なのだろう。
俺も堅苦しいのは好きじゃないからな。
「何をニヤニヤとしているんですか。気持ち悪い」
「失礼な」
ひでえ。この人、俺の愛想笑いを気持ち悪いと言い切ったぞ。
「とにかく、脱獄した人間を野放しにしておくのはいけませんね……今すぐ聖騎士に引き取ってもらわないと」
おや、どこで選択肢を間違ったのか、早くも俺の異世界ライフが終わる予感が。待て、エンディングソングを流すんじゃない。
「えーっと確かこのソファの裏に……」
女性はそう言って、俺に背を向けた。あ、背中に虹色の石が付いてる……見る角度で色が変わるのか。
じゃなくて、どうなってんだ異世界。ソファの裏に聖騎士を呼ぶボタンか何かがあるのか?だったらそのソファはかなりハイテクだな。剣と魔法が飛び交う異世界にあってもいいのかよ。
だめだ、早く何とかしないと。
「あ、そういえば訊ねたいことがあるんだけど、一つだけいい?」
「何でしょうか?3秒以内にお願いします」
早くね!?
女性はソファにあるボタンを探しているのか、俺に背を向けながらそっけなく答えた。
「と、とりあえず、あなたの種族は何ですか?」
「……」
おーっと俺氏、いきなりド直球な質問!
これは怒られても文句が言えないレベルだぁーっ!
しかし、効果はあったようで女性の動きが止まった。
この世界に召喚された直後から、人の肌の色は嫌でも目に付く。
召喚された場所にいた人間は、全てがペールオレンジ。つまり、何年か前まで『肌色』と呼ばれていた色だった。
つまり、日焼けでもしていない限り、この世界の種族『人』は、ほとんどが『ペールオレンジ』であることがわかっている。
だが、目の前の女性はどうだろうか。上半身は黒いポンチョのようなもので隠れているが、足は歩きやすさを重視したのか濃い青色のショートパンツを履いている。つまり、足が出ている。
顔も先ほど確認したが、やはり薄紫色だ。
しかし、女性は後ろ向きのまま固まっている。
そして、故障したロボットのようにぎこちない動きで元の姿勢、俺と対面した姿勢に座り直した。
「……」
「……」
しばらく無言の時間が過ぎたが、先に口を開いたのは女性だった。
「な、なんのことでしょうか?私は『人』ですよ?」
苦し紛れなのか、嘘がつけないのか、明らかに嘘と分かる言葉を顔を背けながら紡いでいた。
「いや、だけど……あなたの肌、どう見ても薄紫色ですよね?」
「え、水色のはずだけ……いや、今のなし」
女性は口を滑らしたのか、冷や汗をかきながら後ろを向いた。それは先ほどのように、聖騎士を呼ぶためではなく、さらなる追求から逃れるかのごとく素早い動きだった。
だが、今の言葉で引っかかったものがあった。
『水色のはず』。そう彼女は言った。
じゃあ、俺が見ているものは一体なんだ?
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