魔力が足りない!?同僚から分けてもらおうと思います

誘真

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後編

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"あの"あと、疲れたのか、魔力が身体に馴染まなくて強制シャットアウトされたのかは分からないが、気付いたのは明け方で。
夕食を食べる間も無く怒涛の展開だったから、空腹のせいで起きた気がするけど。
体力勝負の騎士では正常な事だよ。うん。

起きた瞬間ここがどこか分からなくて、喉はカラカラだし、起き上がろうにも腰も足もそしてアソコも鈍く痛んで動けないし、そしてお腹は鳴りそうだし、体調最悪…と思って横を向くと、端正なシューの顔が目の前にあって。
思わず悲鳴を上げなかった私を褒めたいよ、本当に。

今までマジマジ見ることもなかったし、昨日もそれどころじゃなかったけど、本当に男とは思えないぐらい綺麗な顔してるのよね。
金髪碧眼ってだけで王子様感あるけど、物腰も(私以外には)柔らかいし、なのに前回入団の剣士の中でもかなり強い方だし。
あ、睫毛まで金色なんだ!
そりゃあ、お嬢様方がほっとくわけないよね…。

なんて考えてると、ぱっと睫毛が動いて、青い目が現れた。
綺麗な青。深い湖の色。宝石みたい。

「うわっ!お前…ビックリした…!」
「おはよー。ごめんね、昨日寝ちゃったみたいで…」
「いや…それは構わないが…身体は大丈夫か?」
「へっ?」

…そう言えば今の鈍痛に繋がる事をしたんだった…!
意識すると、一気に顔に熱が集まる。
思わず両手で顔を隠した。けど、きっと耳も赤いからバレてる気がする。

「えっ…あの、ダイジョウブ、デス」
「…何だよ、その反応は…」

そう言いながら頭を優しく撫でてくれる。
子供扱い…と思ってたけど、シューの手は大きくて気持ちいいから嫌じゃない。

「昨日は無理させて悪かったな。考える時間を与えるとお前が逃げる気がして…。正直、かなり焦ってた」

声に後悔の色が混じってる気がして、指の間からそっと覗くと、何だか泣きそうな顔をしたシューと目があった。

「…大丈夫だよ、好きだし、魔力も貰えたし、き、気持ち良かったし…」

自分で言っておいて、恥ずかしくて布団に潜る。
女性って普通はこんな事、言わないんだっけ!?
バクバクしながら耳を澄ましてると、溜め息をついたシューが私にのし掛かってきた。

「ちょっ…!何なの…!」
「男にそんな事言うもんじゃねぇよ。朝から襲われたいなら別だけどな」
「どうせ私は淑女の嗜みとかないですよ!どいてよね!」

くくっと笑いながらシューの重みが引いていく。

「その、突っついたら噛みついてくるのが可愛いよなぁ」
「ちょ…!」
「俺、お前の事、結構最初から気に入ってたんだぜ?わざわざ魔術の訓練場に見に行く程度には…な」

そう言えば…私が訓練中に魔力枯渇で倒れた時、運んでくれたのはシューだったな。
あの頃はまだ仲が悪いと思ってて…まさかそんな頃から気にかけてくれてたの?

「本当に魔術が凄くて。あんなに高温で綺麗な炎は初めて見た。なのに体力がないからペアを解消し、お前をさっさと後方支援に配属する、ってスヴェン教官に言われてな…。お前の魔術が戦場に出ないなんて、ありえないと思った」
「そんな事が…」
「お前が負けず嫌いの努力家で助かったよ。貶せば貶すだけ強くなって来るんだからな。そうでなきゃ流石の俺も早々にペアを解消してたぜ?」

私の昔の努力が、無駄になるところだったんだ…。
シューのおかげで前線に残せて貰えてたなんて、全く知らなかった。

「…ありがと。私の事見捨てないでくれて…」
「でも、貶し過ぎたとは思ってるんだがな…。お前が好きだと自覚した時、反骨精神で俺に食らい付いてるって知ってたから、好きになってもらえる未来なんて絶対ないと諦めた。それでも信頼関係はあると思ってたし、ペアで十分だと納得させた」

シューのいつもより低い声が、重みを増す。
私が「妹でもいい」と思った気持ちと似てるのかも。

「…私も、シューに好かれてるとは思えなかったけど、それでも構って貰えて嬉しかったから、自然と妹でいいかって思ってた…。きっと好きな気持ちに気付かないよう、勝手に隠したんだね…」
「エイナ…」
「シューに名前で呼んでもらうの、嬉しい」
「…これからは呼んでやるよ…」

甘い雰囲気になって、お互い顔を近付けたところで…きゅるるる~と気の抜ける音が鳴った。私のお腹から。

「…ぎゃぁぁぁー!!聞かないでぇぇー!!」
「ぶはっ!良い音が鳴ったなぁ~?」
「シューの意地悪!お腹空いたの!」
「わりぃわりぃ、もう食堂も開いてるだろ。食べ物と回服薬を持って来るから、その扉の向こうにあるシャワーでも浴びとけ。あと、服も着ろよ?」

ニヤリと悪い顔をして、シューは扉から出ていった。

え?シューは服着てたよ??なんで??と見下ろすと…

「…ぎゃぁぁぁー!?」



2回目の悲鳴が部屋に響いた。





---




「おはようございます!」

朝一番、私はリール先生に、シューはスヴェン教官に、それぞれ報告する事にした。

…まさかその日にすると思ってなかったもんね、申請の仕方とか知らないし。





腹ごしらえもし、一度部屋に戻って新しい服に着替え、
そして現在リール先生の部屋。

「…まさか昨日の今日で、してくるとはねぇ…?」

開口一番これだった。

えっ!?何でバレたんですか!?
私が目を白黒させていると、先生が種明かしをしてくれた。

「わたくしは、実戦向きの魔術はあまり使えないのですが、代わりに光属性の魔術が得意ですのよ。ほら、髪色がピンクでしょ?火と光の属性を持ってますの」

リール先生は生粋のエルフ族で、エルフは光魔術が得意だと聞いた事がある。
でも一般的な光魔術は回復とか、アンデットに有効とか、そういう効果だと思うんだけど。
私の不思議そうな顔に、リール先生はくすりと楽しそうに笑った。

「わたくしが得意なのは「解析」。人でも物でも、体力や魔力や状態を視れてしまいますのよ?」

えっ、つまるところ…

「エイナさんの今日の魔力は、昨日までの魔力の1.5倍ってところですわね。この伸び率は凄いですわ!シューロアさんがいいのか、エイナさんがいいのか、研究したいですわ…!」

リール先生の目が怪しく光って怖かった。
きっと本気だよ…涙が出そう…。

「先生…!そんな明け透けに言わないで下さい…!こほん、で、でも視えてるなら話が早いです。申請?の方法を教えてもらいに来ました。すぐにでも風魔術の練習がしたいです!」

きょとんとした表情になって、研究の妄想から帰って来たリール先生。

「そういえば、今日教えようと思っていましたのよ。最初だけは事前に魔力値を記録したかったのですが…まぁいいでしょう。あなた方は特例ペアということもあり、私も普段から記録していましたの」

そう言うと、2枚の紙を取り出した。

「こちらは、ペアが魔力の受け渡しを行うという申請書ですわ。本来は事前に書いて、この申請のない者が魔力の受け渡しを行うと罰せられますの。初回書いていただければ、後は年に1回意思確認するだけですのよ」

ざっと見ただけだが、ペア各々の署名欄や、受け渡し前の魔力や属性が記入出来るようになっている。
そして年々下の欄に書き足して行くようだ。

「そして、こちらが事後に使う報告書ですわ。これは毎回女性が提出しに来てくださいね。提出先は「視れる」者に限定されていますので、こちらで魔力値を記入しますわ。この訓練場ではわたくしになりますわね」

報告書に名前を書くように促され、リール先生に回収される。

「あの…魔力値は教えていただけないんでしょうか?」
「そうですわね…「これだけの魔力値=この魔術が使える」という先入観に繋がってしまいますので、本人にも教えていませんの。魔術は個人によって得手不得手があるので、魔術の形を決めるのは良くないですわ。もちろん隊列を組む上官になれば、自分のを含め隊員全員のを教えてもらえますの」

なるほど、私だって火と風の混合で、独自の魔術だもんね。
これを同じ魔力値の人が使えるワケがないし、逆に私の魔力は風属性にも配分されちゃうから、純粋な火力だけだと負けるだろうし。
魔力値がそういうのの指針になっちゃマズイって事ね。

「では、申請書の署名だけお願いしますわ。後の数値はこちらでやっておきますので」

そう言うとリール先生は立ち上がる。

「えっ?これで終わりですか?」
「そうですわ。それより早く、エイナさんの魔術がどれだけ強くなるか、確かめに行きましょう!」

いつになくワクワクした様子のリール先生だけど、これ、絶対実験材料として見られてるよね…。

一応他の人に内緒なハズなんだけどな…と思いながら、訓練場に向かうのでした。





---




「遅かったな!エイナ!」

訓練場は既に人払いされ、中央に仁王立ちで待ってるスヴェン教官と、横で何故だか小さくなってるシューがいた。

「お待たせ致しました。エイナさんの魔力値を計りましたわ」
「そうか!早速やってみてくれ!」

リール先生に続き、スヴェン教官もすごく期待してる気がする。
こんなに見られるとやりにくいんだけど…

「えっと、じゃあとりあえず、昨日まで出来なかった「つむじ風」にチャレンジしていいですか?」
「ええ、お願いしますわ」

腕を前に出し、手のひらを上に向ける。
ふーっと深呼吸。大丈夫、出来る。
意識を指先に集中させ、魔力を流し、手のひらに気流を生み出す。
ここまではいつも通り。
ここから更に魔力を流し…いつもより大きな風の塊になった!

「いきます!つむじ風!」

地面の砂を巻き上げるように、作った上昇気流を地面に向けて放つ。
するとイメージ通りに砂を巻き込み、風が上空に上がっていく!

「やった…!出来た!!」
「やりましたわ!」

魔術はイメージ。とは言え、魔力が足りなければ実現出来ない。
シューのおかげで魔力が上がって、ほんとに嬉しい…!
いつも練習に付き合ってくれていたリール先生も喜んでくれた。

「良くやった!これで哨戒も牽制も問題ねぇな!」
「今程度の術でしたら、魔力の減りも少ないですわ。今日は10発ほど撃てると思います」
「やった!ありがとうございます!」

シューと前線に出れそうで本当に良かった…!

と、幸せを噛み締めていたのに。

「あとは…人から渡された魔力は、術で消費しなくても徐々に減っていくものですわ。大体3日程でなくなるのですが、エイナさんは何日なのか、検証する必要がありますわね?」
「そうだな。エイナ!今日は魔術を使いまくって、減らした状態でシューロアに渡してもらえ。んで、明日から貰った分の魔力が消えるまで、魔術の使用禁止な」

スヴェン教官がシューに視線を向けニヤリと笑うと、シューはまた小さくなった。
私は今の意味を理解したくなかったんだけど…

「え…?つまりは今晩も、するって事ですか…?」
「エイナ…悪い…。勝手に暴走した俺のせいだ…」

スヴェン教官がシューの背中をバンバン叩きながら、悪い顔で笑う。

「こいつにはな!昨日、先走るなってクギ刺したんだよ、俺は!…その言い付けを破りやがって!」
「だから、俺には覚悟があるって何度も言ったじゃないですか…!」
「お前はそのつもりでも、周りがどう出るか分かねぇんだぞ。…もう少しエサでいてもらうつもりだったのによぉ?」

覚悟?エサ?何の話だろう?

「ほら、2人とも!エイナさんが困ってますわ。続きは政務室でしてくださいな」
「すまねぇ。エイナは悪くないぞ!こいつの責任だからな!」

じゃあな!と、スヴェン教官は去って行った。

「わたくしも職務に戻りますわ。この訓練場はあと1時間は人払いをしていますので、その間に牽制の訓練と…例の為に魔力を減らして欲しいのです。終わりましたら、2人で私の部屋に来てくださいね」
「はい!」
「分かりました」

「あ!もちろんですが、受け渡しの件は誰にも内緒ですわ。破ったら…牢獄行きと思ってくださいませ?」

凄く爽やかな笑みで、爆弾を落として行かれました。

もちろん誰にも言うつもりないけどさ!牢獄級の秘密だったのか…思うと、今更だけど早まったな…とか。

「…大丈夫だ、リール教官は脅してるだけだ…多分」
「…そ、そうだよね。ってか、私たちが誰にも言わなきゃいいだけなんだし」

二人で溜め息をついた後、シューが私に向き直る。

「改めて言うのもアレなんだが…昨日の今日で悪いけど、今晩も宜しく頼む」
「…魔力貰ってるのは私だし、それに1週間ないし!早くシューの魔力に馴れて、いっぱい活躍したいね!」

はにかむシューに、満面の笑みの私。







これから先も色々な壁があるんだろうけど、シューと2人なら乗り越えられる気がする。



本当に、シューがペアで良かった!





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