2 / 3
中編
しおりを挟む「遅れてすいません!」
あの後、私は顔を洗いに、シューは着替えに行き、スヴェン教官の執務室に着いたのは17時を少し回ったところだった。
「遅いっ!!隊の規律を守れ!!時間厳守は絶対だ!!!」
最近聞いてなかった鬼教官の怒鳴り声、部屋の中だと迫力が増し過ぎる…!
聴力が戻るまで頭を下げていると、隣のリール先生がフォローしてくれた。
「まぁまぁスヴェン先生、彼女にも事情があったようですわ…ほら、顔を上げて…ね?」
リール先生の声に促され私が顔を上げると、泣き腫らした目が見えたんだろう、スヴェン教官が居心地悪そうに身動ぎした。
…ピーピー泣いてすいませんねぇ。
「…遅くなりました!申し訳ありません!」
シューも遅れて登場。
だけど、何かを察知したスヴェン教官は何も言わなかった。
「…まあいい。時間もねぇし、本題に入るぞ」
「エイナさん、シューロアさんに説明したと思っていいのかしら?」
「はい。ほとんど説明出来たと思います。ただ、ペアを解消するかどうかの話は出来ていませんが…」
「俺は!ペアを解消したくありません!」
私の言葉を遮るように、シューが被せてくる。
それを聞いて、スヴェン教官がニィと悪そうな顔をした。
「ほう?お前はいつもエイナを詰っているように記憶してるが?」
「…最初は、魔術は良くても体力のない、使えないヤツだと思いました。ですが、努力と根性は人一倍、彼女は叩けば叩くほど強くなります。今では…実戦に耐え得る体力と、身を守るレベルの武術は身につけたと思います」
そんなふうに評価してくれてたんだ…。
そりゃ私が強くないとシューも実戦に出れないし、最低限は身につけたつもりだけど、言葉にしてもらえると嬉しい。
「討伐なら…な。現状のエイナは牽制する方法がない。短刀や魔道具を持って行けば何とかなるだろうが、使いきったり、落とした時はどうすんだ?最後、自分を守れるのは自分の技や術だけだ」
スヴェン教官の言葉が、重く肩にのしかかる。
「だからこのままペアを解消しねぇとなると、シューロア、お前も一緒に後方支援という名の雑用に回るか?」
「…それは…」
「お前ぐらいの実力がありゃあ、すぐに討伐部隊に組み込まれるだろ。その名声をエイナの為に捨てるのか?その覚悟は出来てんのか?」
教官の言葉に押されるシュー。
そうだよね、そこまで深く考えずに言ってくれてたんだよね。
私も、シューの出世を阻んでまで組みたいとは思わない。
もう解散しよう…と言いかけたとき。
「それでも…俺は、エイナとペアを組みたいと思います。その為に戦略を考え、毎日訓練してきました…。披露せずに終わるのは…嫌です」
シューが、苦い顔をしながら、絞り出すように告げた。
でもその目には力があり、絶対自分の意思を曲げないという強さがあった。
「俺が「解消しろ」と、命令しても…か?」
「今回の哨戒は特例です。討伐まで保留にしていただけると信じています」
スヴェン教官とシューが睨み合う。
ピリピリとした空気に、思わず涙が出そうになる。
私が弱いから迷惑をかけてるのに…。
「…スヴェン教官、いじめるのはそれまでにしましょ?」
リール先生のほんわかした口調が、その場の空気を散らす。
それをきっかけに、スヴェン教官が威圧を解き、疲れた顔をしながらボリボリと頭を掻いた。
「…悪かった、お前ら。特にシューロアの覚悟を見たかったんでな。お前らのペアは維持で構わねぇよ」
ニッと悪意のある笑みを向けられたシューは、呆気に取られた後、ムッとした。
「…俺を試したんですね」
「お前はイイとこの坊っちゃんだろ?体面を取るのが普通だし、それならペアを解消して、違うヤツを宛がうつもりだったんだよ」
「それに、覚悟を見たかったのもありますわ。エイナさんの魔力を上げる可能性が少しでもあるのか…のね」
リール先生の言葉にはっとした。
そうだよ!魔力を上げる可能性を聞きに来たのに、スヴェン教官の威圧にやられてすっかり忘れてた…!
「それじゃあ…!」
「ええ、特例で先に教えますわ。ただし、これはエイナさん一人では無理で、ペアでしか許可していないという事、そして他の方に絶対に話さない事、この点はしっかり守ると約束して下さる?」
「「はい!!」」
---
剣士と術師で説明が違うから…と、シューはそのままスヴェン教官の執務室で、私はリール先生と一緒に会議室へやってきた。
なぜか、私に話をするために貸し切ったそうだ。
「先生、政務室でお互い話を聞くだけじゃダメなんですか?」
「そうねぇ…大丈夫な人もいるけれど、あなた達には良くないと思いましたの」
「そうなんですか…?」
話が長くなるから…と、席を勧められ、先生自ら入れてくれたお茶を飲みながら話を聞く。
「まず、わたくしから言いたいのは…これを聞いても試さなくていいですし、本来なら勧めたくない内容だという事は理解して下さいましね?後方支援も大事な仕事には変わりありませんわ。先程スヴェン教官は脅していましたけれど、特例の哨戒だけでは出世なんて出来ませんわ」
「…はい、分かりました。でも先生、私の魔力を上げるのに、どうしてペアの力が必要なんですか?」
「それは…うーん、何から話そうかしら…。とりあえず、騎士が見習いから実戦に移る時に伝える事を言いますわね。「ペア間で魔力の受け渡しが出来る」事と、「ペア以外の魔力の受け渡し禁止」って事ですわ」
「えっ!?魔力の受け渡しが出来るんですか!?」
そんな技や術を聞いたことがないので、ビックリしてしまった。
それが出来るなら、戦場で魔術師に魔力を渡せば、魔力切れを起こさずに戦い続ける事が出来る。
「もちろん誰でも出来るものではありませんわ。あと組み合わせもあるので…絶対に無理なペアと、自分たちで無理と判断したペアと…ってとこですわね」
魔力が必要ない術師なんていないだろう。
剣士は己の体力と武器だけでもなんとかなるが、術師は魔力枯渇を起こすと途端に何も出来なくなる。
「剣士側の魔力が少なくて、渡せる分がないとかですか?」
「それも理由の一つですわ。そういう場合は魔力の少ない騎士と、魔力の豊富にある術師とを組み合わせて、魔力の受け渡しはしないようにと通達しますのよ?」
そんな事もあるのか…と他人事のように聞いていたが、ふと、自分達の事が頭を過った。
「あの…先生、どうして私とシューは身分も出身も違うのに、ペアにされたんでしょうか…?以前スヴェン教官がワケあり的な事を言っていまして…」
「…あなた方に限らず、ペアを考える時は魔力の受け渡しが必要か、そうでないかを一番に考えていますわ。そしてあなた方のペアは…エイナさん、あなたを基準に組まれましたの」
「えっ!?私ですか?」
「そうですわ。あなたが前回入隊員の中で、一番「強力な魔術が使える可能性がある」と判断しましたの。これをわたくし達は「能力が高い」と言っていまして、能力が高い方には一番魔力の強い剣士をペアに付けますの。それがシューロアさんですわ」
私の能力が高い?私基準でシューとペアになった?
「でも、私より高難度の術を使ってる人もいますけど…」
「それは現時点でその方の術が優れているのであって、最終到達点はエイナさんの方が高くなる、という事ですわ」
頭がこんがらがりそうだ。
「…理解は出来てませんが…とにかく、シューは私のせいで身分の低い私とペアにさせられたと言うことですね?」
「シューロアさんは被害者ではありませんわ。むしろ能力の高い将来有望株とペアになれてラッキーですのよ?まぁ、最初はお互いを嫌がっていましたので、エイナさんが自力で強い魔術を放てるようになれば、ペアは解消しようと思っていましたの。その前に今の状況になってしまいましたし、もうあなた方も解消する気はなくなったようですけれど」
「つまり、私はシューから魔力を貰えば、今まで以上に強い魔術が使える…と言うことですか?」
「ええ、確実に」
着いていけてない私を見て、リール先生がお茶を継ぎ足してくれる。
「さあ、飲んで?一息つきましょ」
頭の中は疑問だらけだが、上手く纏める事が出来ないので諦めた。
温かいお茶が身体に染み渡る。知らず知らず力が入っていたのか、肩が軽くなった気がする。
「そして…ここからが重要な話です。魔力の渡す方法についてですわ」
…せっかく肩が軽くなったのに、今度は背筋が伸びる。
「もう濁しても仕方ないので、ハッキリ申し上げますわね。騎士団の実戦部隊は全員知っている事ですし。「男性の精液に魔力が宿り、女性の子宮で吸収する」これが魔力の受け渡し方法ですわ」
…へ?今何とおっしゃいました?
「つまり、セックスをする事により、男性から女性に魔力を渡すことが出来るって事ですわ」
よほど私の目が点になっていたのだろう。リール先生が丁寧に説明してくれた。
「えっ…ちょっ、それは、あの、」
「あなたのような訓練中の女性には伝えたくなかったのですが…これが魔力の受け取り方法ですわ。もちろん、するもしないも自由です。ただ、した場合は魔力の上がり幅や、使える魔術の種類を把握したいので、申請をお願いしていますの。精液に宿る魔力量も、受け取る子宮の吸収量も、すごく個人差がありますのよ」
「ええっ!?申請…!?」
行為だけでも恥ずかしいのに、それを申請するとか、どんな公開処刑…!
「…ごめんなさいね、でもあなたが求めている魔力を上げる方法は、現状これしかありませんの。だから無理せず、今回は後方支援でいいと、わたくしは思いますわ」
リール先生が少し困ったような、悲しい微笑みで私を見ている。
…なるほど、騎士団の裏側にはこういう犠牲もあった訳だ。
今の私は自分で選べるけど、魔物が押し寄せてきていて、有無を言わさず望まぬ性交を強要していた事もあったのだろう。
先生の顔を見ていると、段々冷静になってきた。
「あの…例えばですが、魔力を含んだ、せ…精液…を、自分で入れるのは…?」
「もちろんそれも試しましたわ。ですが精液に魔力が宿る方法は筋肉強化と同じで、男性の身体を離れた数秒後に魔力は霧散してしまいますの」
数秒…それじゃあ無理か…。
「あと…恐らく直接…しないとダメだと思うのですが、その、妊娠とかは…?」
「魔力を含んだ精液は、子種が魔力に変換されますの。妊娠の心配はありませんわ。ただ、騎士団に所属している間は、魔力の受け渡しはペアのみに限定していますので、避妊に使えると思わないで下さいませ?」
「そんなことしませんよ!」
私が真っ赤になっているので、リール先生にからかわれたのだろう。
こちとらぁ、年齢=彼氏いない歴のウブな女だよ!
私が内心プンプンしていると、リール先生の笑い声が聞こえた。
「…ふふっ、笑ってごめんなさいね。わたしく、あなたがもっと絶望したり、無理だと泣きわめいたりするかと思っていましたので…。落ち着いているようで安心しましたわ」
「落ち着いてなんかいませんよ!」
「でも、あなたはシューロアさんの事を嫌と思いまして?しかも、その行為を受け入れようとしていません?」
先生に言われてハッとした。
確かに私、シューとそういうコトをするって事、嫌だと思ってない…。
「そ、れは…シューの気持ちもありますし…」
「そうですわね、お互いの気持ちが一番大事だと思いますわ。この方法を使っても使わなくても、あなた達がペアであることには変わりませんわ。良く話し合って、決めて下さいね」
それでは行きましょうと、リール先生が席を立つ。
…シューのいる政務室に戻る事になるんだよね…。
私は魔力を貰う側だし、シューと、その、することは多分無理じゃない。それぐらいの信頼関係はあると思ってる。
ただ…シューの方はどうだろう?
これから上位貴族の令嬢と婚約するのに、私のような小者がペアで、定期的にする…とか、受け入れられるんだろうか…?
シューに拒絶されたら…ちょっと悲しいかな…。
「お待たせ致しました」
心ここにあらずでリール先生の後ろを歩いていたら、もう着いてしまったらしい。
「ずいぶんと話し込んでたようだな。きっちり細部まで説明を聞いたか?」
「ナイーブな事ですもの、もちろんですわ。そんな質問をなさるから女性にモテないのですわ」
「ぐっ…」
図星だったようで、スヴェン教官の呻き声を聞きながら…失礼だと分かっているけど、顔を上げる事が出来ない。
なんとなく視線を感じる気はするけど…今はちょっと見れないです…。
「さて、ここで話す内容じゃねぇだろ。会議室をまだ借りてるから、そこでじっくり話し合え」
「…分かりました。ありがとうございます」
シューが答え、先に退室しようとする。
「あっ!ありがとうございました!」
「また明日、相談に乗りますわ。遠慮なく訪ねていらっしゃいな」
リール先生の優しい微笑みに勇気付けられながら、シューの後に続く。
やっぱりドキドキして、顔は上げられないんだけど。
シューも無言でスタスタ歩くし、私も小走りで着いていった。
---
「…ここか」
「…失礼します…」
無言で私がお茶を用意して…でもどうしようかオドオドしてると…
「エイナ、座らないか?」
「…はい…」
観念して、2人分のお茶を持って、さっきまで座ってた場所に座った。
「さて…教官の話を聞いて、お前はどう思った?」
「それは…その…」
「ずるずる伸ばすのも良くない。今後もペアを組むのは変わりないしな。嫌だったらハッキリそう言ってくれ」
そう告げたシューは、顔にまで力が入っているようで、表情が全く読めない。
シューはどう思ってるんだろ…。
「あの…私はシューの足を引っ張りたくないし…魔力は欲しいんだけど…」
モジモジと下を向いて話す私を、シューは何も言わずに待ってくれている。
「…正直、予想外の方法だったし、騎士団の為にそこまでしなくていいんじゃないかなと思うんだけど…」
まだシューは無言だ。
シューの意見も聞きたい、けど、先に私の意見を言わないのはフェアじゃないでしょ。
思いきって顔を上げて、シューを見ながら告げた。
「私は!シューさえ良ければ、魔力が欲しい!強くなりたい!」
予想外の回答だったのだろう、シューが目を見開いてビックリしてる。
シューのこんな顔、初めて見たなぁ。
「…お前、分かってるのか?その、俺とするって事だぞ?」
「こんな小者と関係持ったら、シューが婚約出来ない?迷惑…かな?」
「おまっ…!そんな事あるか!それよりお前の評判に傷が付くかもしれないんだぞ!?」
そう言えば、私も婚約前の令嬢だった。
地方過ぎて一応貴族な事を忘れてたよ。
「地方の弱小貴族だし、親が騎士団に入れたようなものだし、政略結婚は期待してないんじゃないかな…?それに弟もいるから家は安泰だよ、多分」
「…はぁ」
私の答えを聞いて溜め息を付くシュー。
「なっ、何よ!こっちだって仕事とはいえ身分の違いとか、私が魔力もらう為に悪いなとか、色々考えたのよ!」
「…そうじゃねぇだろ。普通は好きでもない男にヤられるなんて、無理だろ」
シューの言葉を聞いて、ピースがはまった気がした。
「え…?嫌じゃない…?むしろ好き…?」
「…は?何で疑問系なんだよ。絶対拒否られると思って身構えてた、俺の気になってみろよ…!」
シューが怒りながら…抱き締めてきた。
大切な物を抱え込むように、しっかりと。
「…好きだ。俺の物になってくれ」
「えっ!?何で?いつから?」
「返事は!」
「はいっ!」
顔を見合わせて笑ってしまう。
シューの笑い顔なんてレアだなぁと思っていると、顔が近付いてきて…チュッと軽い音をたてて離れた。
私のファーストキス…!
「無防備にしてるお前が悪い」
ニヤリと笑うと、私の手を掴んで会議室の奥にある扉に向かって行く。
そこは何…?と思いながらふわふわした気持ちで着いていくと、目の前に飛び込んできたのは大きなベッド…!
「えっ!?ちょ…!」
私の抗議なんて聞いてないかのように、ベッドに転がされる。
「ちょ…!待って!心の準備が…!」
「あと1週間もないんだ。お前の魔力を増やして、どんな風魔術が使えるか、明日から検証するぞ」
「何で会議室にベッドがあるのよ…!」
「魔力を渡す、逢い引き室になってるらしいぜ」
「シュー、何か手馴れてる…!」
「そりゃあ男の嗜みってやつだ…って、ごちゃごちゃうるせーぞ」
両手を頭の上で纏めてベッドに縫い付けられ、足の間にシューの膝を捩じ込まれ、動けなくてパニクっているところにキスを落とされる。
表面が触れあうだけの、優しいキス。
ベッドの上で押さえ付けられてるのに、もう逃げられないのに、優しい口付けが私から警戒心を奪っていく。
「…初めてだろ?優しくしてやるから、お前はただ感じてろ」
チュ、チュと、角度を変えて何度も口付けられる。
いつの間にか手は解放されていたが、それにも気付かないほど余裕がない。
心臓がドキドキ音をたてて、今にも破裂してしまいそう…!
ゆっくりとシューの手が私の頬をなぞる。
その慈しむような手つきと、初めて見る柔らかい表情に、脳が湯だる。
「私…シューのこと、凄い好きだったんだな…」
「おまっ…!今言うの、反則…!」
何も考えずに口から出た言葉だったんだけど…シューに抱き締められた。
シューの心臓もドキドキしてるのが伝わってくる。
何だか嬉しい。
「あー!くそ!俺の方が先に好きだったんだよ!優しくされたいなら余計な事言うなよ!?」
そういうと、唇に噛みつかれ、舐められる。
さっきの優しいキスとは一変、食べられそうで怖いのに、シューの舌が触れた所がジンジン痺れて…もっとして欲しくなる。
「…っは、くち、開けろ」
口って?と脳で考える前に、反射的に身体が従う。
と、にゅるんと何か入ってきて、それが凄く気持ちいい。
でもありえないぐらいドキドキしてるし、目もキツく閉じてるからか、何だか意識が…
「ぷはっ、ゴホッ、ゴホッ」
口が解放され、気付いたら激しく咳き込んでいた。
「おい、大丈夫か?鼻で息すんだよ。ほらこんなふうに…」
今度はゆっくりと口付けられ、合わさった唇の間から私の咥内を味わうように、ねっとりと舌が移動する。
歯列をなぞられるとゾクゾクするし、上顎を舐められると声が漏れてしまう。
奥で縮こまっていた私の舌を優しく撫でると、ぬるっとした感触が気持ち良く、思わず自分からも追いかける。
舌同士をこすり合わせるだけで、どうしてこんなに気持ちいいんだろ。
「…んっ、ふっ、」
ぬちゃぬちゃと唾液が混ざる音が羞恥心を煽る。
気持ち良さと恥ずかしさが入り交じり、思わず涙がこぼれた。
「…どうしたんだ?」
「…恥ずかしくて…気持ちイイの、怖い…」
私の涙を舐め取り、チュっと軽いキスをして、耳元で囁く。
「恥ずかしいのか…可愛いな。でも俺が気持ち良くしてやるんだ、心配せずに感じとけ、な?」
耳や髪にもチュッチュッと落とされ、シューのいつもと全然違う様子に心臓ドキドキだし、顔は真っ赤になってるよ…!
恥ずかしい…!
「…脱がせていいか?」
羞恥から両手で顔を覆ってしまった私に、シューが優しく聞いてくれる。
決して胸が大きい訳でもないし、裸を見られるのもボディラインに自信がなくて凄く恥ずかしいが…シューと先に進むには、頷くしかない。
「イイコだ」
また髪にキスされながら、訓練で着ていたシャツをたくし上げ、そっと抜き取られた。
戦闘で胸が邪魔にならないよう胸を押し潰す役目の、固い色気のない下着姿になる。
こんな事なら、普通の可愛い下着を着ておけば良かった…!
「あ、あのっ、訓練だったから…!私も可愛いのとか、あるから…!」
「ほう…?それは是非見てみたいな。次は期待してるぜ?」
ニヤリと笑うと、早々に背中のホックを外した。
え!? もしかして墓穴掘った!?次って何よ…!
窮屈な下着から解放され、ふるんっとお碗型の胸が揺れる。
思わず手で隠そうとするが、その動きを読んでいたシューに捕まれた。
「…あの下着に押さえ付けられてたんだな、思ってたより大きくて、形も綺麗だ…」
「ちょっ、恥ずかしいこと言わないでよ…!」
「本当の事だろ。それより手を離すからな、もう隠そうとするなよ?」
シューの手が離れていく。羞恥で脳が焼き切れそうだが、顔を横に向け目を瞑ることで、何とか手を動かさずにジッとすることが出来た。
胸にシューの手の熱を感じる。
最初は指先でそっと形をなぞったり、掌で包み込むようにゆったり触っていたのに、だんだん下から掬い上げるように揉まれたり、揺すられたりと、動きが大胆になってきた。
「どうだ?気持ちいいか?」
「恥ずかしくて…よく分かんない…」
「そうか、ならここは?」
そう言ってシューが触れたのは、胸の先端の桜色。
ふにんっと軽く押されただけなのに、急に電気が走った気がした。
「っ!?」
「ここは感度が良さそうだな。ゆっくりしてやるから心配すんな」
両胸の先端をゆっくり押し込んで戻す、それだけなのにその度に身体に力が入る。
馴れてきた頃には、摘ままれて引っ張られたり、弾かれたり、転がされたり、色々な方法で私の反応を確かめられた。
もちろんどれも気持ち良かったんだけど…
「舐めるぞ」
「あっ!」
ぬるっとした舌で右胸の先端をつつかれると、今まで我慢していた声が出てしまった。
何これ、指より気持ち良くてヤバい…!
シューもそれに気付いているのか、指よりもじっくりと同じ事を繰り返して馴らされる。
初めは舌先で撫でるように触れて、次は少し強く下から上に舐め上げられる。
先端が弾かれる度に背中を浮かしてしまう。
胸を付き出して催促しているようで恥ずかしい…が、身体が言うことを聞かない。
「はっ…あっんっ…」
「声、我慢するなよ。気持ちいい証拠だ」
先端にかぷりと噛みつかれ、ちゅうちゅう吸い上げられるともうダメだった。
「あぁっ…!だめっ…やっ!」
「悪い、いきなり強すぎたか…?」
下腹部に、今まで感じた事のない疼きを感じる。
どうしたらいいのか分からないが、シューに触って欲しいと強く思った。
「っは…、大丈夫、だから…」
今度は左胸に吸い付かれ、右胸の先端を指で愛撫される。
初めて覚えたばかりの快感を両胸で一度に味わされ、目の奥がチカチカした。
なのに愛撫は止まらなくて、腰がびくびく跳ね続ける。
「やあぁぁっ…!はっ、あぁっ…!」
ようやく解放された時には、両胸の先端はぷっくりと立ち上がり、紅く色付いていた。
こんなの、私の身体じゃないみたい。
初めて染まる快楽に翻弄され、朦朧としている間に、下半身からスカートが剥ぎ取られていた。
「…しっかり濡れてるな」
何の事か理解が追いつかないが、シューが私の足を広げようと、太ももに手を置き力を入れてくるのが怖い。
「心配すんな、気持ち良くしてやるから…」
私の気持ちを解すように、欲望を隠した目で見つめ、優しいキスをしてくれる。
ああ、私、大事にされてるんだな…。
シューになら委ねてもいいや…。
チュッチュッと軽いキスから、また深いキスへと移る。
優しく舌を合わせるだけでクチュクチュと音が鳴り、私、シューとキスしてるんだ…と幸福感が増す。
思わず両手をシューの首に回し、ギュッと抱き付く。
ピタリと身体が重なり、少しだけ感じる重さが愛おしい。
キスの間に足が広げられ、シューの身体が収まっている。
パンツはいつの間にか脱がされていた。
「っは、俺も脱いでいいか…?」
今度は欲望を隠さず、ギラついた目で先を促す。
その目が怖いのに…下腹部がキュンとなった。
もう頷くしかない。
初めて見るシューの身体は、全身がしなやかな筋肉で覆われ、とても綺麗だった。
割れた腹筋から目が離せない…が、その下にあるモノが目に入りそうになって、思わず顔を背ける。
今見たら、きっと怖じ気づいちゃう…!
また私にのしかかり、髪を撫でながら甘い声で告げる。
「最初は痛いが、しっかり馴らしてやる。心配すんな、ちゃんとイかしてやるから…」
そうだよね、最初は痛いんだよね…。
でもこれを乗り越えないと魔力を貰えないし、何よりシューが優しくしてくれるから、私もそれに応えたい。
「うん…大好きだよ、シュー…」
それからは…今までと比べ物にならないくらい、処女には恥ずかしくて痛くてでも気持ち良くて、未知の体験でした…。
馴らすためにシューが指を唾液で濡らし1本入れようとするも、狭くて全然入らなくて。
力を抜いてって言われるんだけど、どうするか分からなくて泣きそうになると、右胸の先端を舌で執拗に愛撫された。
また目の前がチカチカする頃には、下半身は愛液でぐちゃぐちゃになり、気付けば痛みもなく指が2本入っていた。
「一回イッとけ」って意味が分からないんだけど、指が入れられている秘裂の上の花芯を触られると、今までで一番強烈な快感に襲われる。
花芯を優しく転がしながら中の指を動かされると、今まで違和感しかなかったが、だんだん鈍い快感を拾うようになってきた。
時々中のある場所を掠めると、腰が跳ねる。
触らないでほしい…けど、もっと触って欲しいような。
シューもその場所に気付き、片手は中のそのイイ場所を3本に増えた指の腹で執拗につつき、外はもう片手で花芯の皮を剥き…あろうことか舌で小刻みにねぶられた。
こんな快楽、我慢できるはずがない。
「やっ、あぁぁぁっ…!つっ、きちゃうっ…、なにかきちゃうっ…!」
中の指はじゅぼじゅぼ激しく出し入れされ、
花芯をねぶる舌の動きはどんどん早くなっていく。
心臓はドキドキ張り裂けそうだし、積もる快楽に脳に痛みすら感じた、その時。
「あっ、あああぁぁぁぁっ…!!」
張り詰めた何かが流れ出していくような、身体が宙に浮いたような、今までに味わった事のない快感が全身を駆け抜ける。
「あっ、はあっ、はぁっ…」
「気持ち良かったか?イケたみたいだな」
「はぁっ…今のが…?」
全力疾走した後のような、初めて感じる快楽と疲労が混じった状態に混乱する。
でもあの瞬間はスゴかった。
と、余韻に浸ってると、足がぐいんと持ち上げられ…
「十分馴らしたからな、行くぞ」
欲望で余裕のない壮絶な色気を感じさせる顔を近付け、私の悲鳴を飲み尽くすような深いキスをしながら、先端が中に入ってきた。
しとどに濡れたソコは、痛みはないものの、圧迫感と違和感と若干のひきつれを感じる。
「んっ、んんんんっ」
ゆっくりと奥に向かう圧迫感に耐えられず、抗議するも声にならず、ぬちゃぬちゃと咥内の深い場所で出る音を聞かされると、頭にもやがかかる。
やがて圧迫感が最高潮に達し…お尻に、ざらりとした下生えを感じた。
「ああっ…!はぁっ…、はっ…」
「…っ、全部、入ったぞ…痛くないか?」
声を出すと悲鳴を上げそうで、頷くだけで精一杯。
「ちょっとこのまま、馴らすからな…」
最奥で動きを止め、時々息を詰めながらシューは大きく息を整えるが、中の熱がびくびくと動いている。
男の人は出さないと辛いんだよね。
「…シュー…もう、痛くないから…」
「っ、大丈夫か…?」
悪い、と言いながら、シューはゆっくりと腰を浮かす。
ずるりと熱が引いていって、ホッとするような、寂しいような。
すると次の瞬間、またゆっくりと中に圧し入られ、圧迫感に呻く。
「っつ、あぁっ…!」
「…くっ、深呼吸して、俺にしがみついとけ…」
力が上手く抜けなくてカチコチになっていた身体が、大きな呼吸で弛緩していく。
シューの背中に抱きつくと、えも言われぬ安心感で、もう全てを委ねていいかな…。
私が弛緩して動きやすくなったのだろう、ゆっくりと丁寧に抜き差ししていたのが、だんだん早くなっていき…結合部からぐっちょぐっちょと愛液が溢れるまで、そう時間はかからなかった。
「…あっ!…あっ、やっ、あんっ…!」
圧迫感や違和感はまだあるものの、熱が往き来する度に鈍い快感が生まれる。
最奥を衝かれると悲鳴のような声を抑えられない。
そのとき、シューの熱の先端が、指で散々なぶられたあの一点を強くえぐった。
「あああぁぁぁっ…!」
怖い、気持ち良い、やめて、もっと…
自分でも相反して固まらない思考の中、シューは同じところばかり攻めてくる。
摩られすぎて感覚が麻痺してるように、身体も思考もふわふわしてきて。
上手く動かない身体で助けてと言わんばかりに強く抱きつけば、シューの動きが早くなった。
「あっ、あっ、やっ、はぁっ…!」
「っ、出すぞ、エイナっ…」
掠れた声で耳元で囁かれ、ぎゅうっと抱き締められると、
快感とは違う幸福感で満たされた。
「ああああぁぁぁぁぁっ…!!」
「…うっ、くっ!」
目の前が真っ白になり、身体が大きく仰け反る。
声を出してる感覚もないのに、聞こえてるのは私の悲鳴のような嬌声。
荒波に揉まれたような全く自由の利かない中、シューと触れあってる肌の暖かさが、私を現実に引き留める。
「…っはぁ、大丈夫か?」
まだ荒い息を吐いてるシューが、私の中から出ていく。
ドサッと隣に寝転ぶと、そっと私を抱き込んだ。
「…上手く魔力を乗せれたと思うが、どうだ?感じるか?」
そう聞かれて、初めて身体の中に暖かな気配があるのを感じた。
そういえば魔力を受け取るためにしてたんだった。
途中から何が何やら…。何か凄かった…。
「…多分、だけど、身体の中がぽかぽかするよ?」
「それなら良かった…。でも明日には魔力値を計って、本当に渡せてるか確認しないとな…」
「…そうだね、上手く行くといいんだけど…」
シューが何か言ってるけど、私の意識はベッドに吸い込まれていった。
---
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。
石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。
ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。
そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。
真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる