【完結】私にだけ当たりの強い騎士様と1メートル以上離れられなくなって絶望中

椿かもめ

文字の大きさ
43 / 49

43.本音が聞こえる※

しおりを挟む

 ──気持ちが通じた。

 私の心はいつにも増して晴れやかで、幸福に満たされていた。熱い唇を重ね合い、お互いだけを求められることのなんて幸せなことか。嬉し涙が溢れそうなほど、今日という日に感謝した。



 バルテルの告白を断ったあと、その場に突如やって来たコルネリウスの言葉から逃げてしまった私はそのまま自宅へと帰った。彼の見つめる厳しい眼差しが瞳の奥に刻まれ、心を抉る。

 次第に涙が溢れて止まらなくなった。リーフが慰めるように周囲をぐるぐると飛び回っているのは気がついていたが、今は声をかける余裕すらなかった。

 しばらくすると部屋の扉がノックされた。

『俺だ、コルネリウスだ。……すまない、先ほどは酷いことを言ってしまった。直接謝罪がしたいんだ。どうか開けてくれないか?』

 涙を拭い、恐る恐る扉を開けると、そこにはくたびれた様子のコルネリウスがいた。額に汗を滲ませ、息をせき切らしている姿はきっと急いでここまで駆けつけてくれたのだろうと予想がつく。それだけでも私の心は期待してしまう。なんて浅ましいと自分を蔑みながら、彼の謝罪を受ける。

 ここでは泣いてはだめだと、呼吸を整えてから口を開こうとした。けれどそれよりも前に動いたのはリーフだった。

 彼女はコルネリウスとやりとりをしているようで、リーフの声が聞こえない私は置いてけぼりに二人の様子を伺っていた。すると突如光が弾け、コルネリウスがその光に呑み込まれていった。驚き目を見開いていれば、どうやらまた《妖精のイタズラ》が起こったようで。

 驚くのも無理なかった。
 なぜなら彼から感情がはっきりと伝わってくるのだ。

《以前受けた呪いは妖精にとっては魔法だったのか。一体なんの力を使われたのか》

 何を思考しているのかが鮮明に伝わってくる。言葉ではなく彼の感じている感情がそのままに流れ込んでくる感覚は今までに感じたことのない奇妙な感じだった。
 明らかにおかしな状況に動揺を隠せずいると、またもや新しい感情が流れんでくる。

《その表情が可愛いすぎる。食べてしまいたい》

 彼のきりりとした顔つきと噛み合ってない感情に赤面する。その顔でそんなことを考えているのかと、思わず茶々を入れたくなるほどだ。

 焦った私はひとまず彼を自分の自宅に避難させることにした。通りがかった大家などに今のコルネリウスを会わせるわけにはいかない。それに今は夜で、あまり外で騒がしくするのも近隣住人には迷惑だろう。

 手を引き、部屋に招き入れればまたおかしな感情が流れ込んできて、あまりの恥ずかしさにどうにかなってしまいそうだった。
 
《ステレの香りがする。部屋から充満してて幸せすぎる。ステレから触れてくれた。手のひらが柔らかくて気持ちいい。ずっと触れていたい》

 彼に考えが伝わってくるからやめてほしいことを告げれば、どうやらコルネリウスも羞恥心を掻き立てられてその場でうずくまった。なんだか不憫に思えて慰めようと背中をさすってあげれば《優しい。もっと触れていてほしい》と強い念が押し寄せてくる。

 そうしていると、彼は突如ばっと顔をあげたかと思えば、私を壁へ押し付けてきた。突然の事態に頭が真っ白になる。

『っ、そうだ。俺はお前が好きすぎて、四六時中ステレのことばかり考えてるんだ。悪いか? まあ、悪いと言われてもどうにもならないから諦めるだな!』

 その言葉を聞いたときは、都合の良い夢を見ているのではないかと疑ってしまった。けれどそう言った彼の顔は紅潮し、真っ直ぐな視線に身体が縫い止められる。

《好きだ。ステレのことが大好きだ。近い。可愛い。幸せだ。好きすぎて死にそうだ》

 感情が直接伝わってくることで、コルネリウスの口にした言葉が真実だと証明されていた。真剣な面持ちに胸が苦しく愛おしさで溢れ、自ら唇を押し当ててしまう。

 久しぶりの彼との口付けは甘く、心が満たされていく。
 自然と自分の素直な気持ちを打ち明けていた。彼を好きな気持ちが溢れ、留まることを知らない。

 コルネリウスは自分のことを愛称で呼んでほしいと言った。きっと素面で呼び捨てにはできないだろうが、このときばかりは雰囲気に流されたのもあって『コリィ』と呼ぶ。

『ステレ、大好きだ。誰よりも愛してる』

 その言葉がずっと欲しかった。
 何よりも求めていた愛を与えてくれた彼は、さらに私の全てが欲しいと懇願する。

『ステレのすべてをくれ。お前を抱きたいんだ』

 捧げたい。
 体も心も一生あなたものなのだとわかって欲しい。

 私はそんな気持ちを込めて頷いた。

  彼は私をその場で抱き上げ、ベッドへと移動する。

「前はソファで押し倒してしまったからな。あのときは興奮で頭がどうかしてたんだ。今回は前よりもずっと優しくする。どうかお前を愛させてくれ、ステレ」

 ぱふりとシーツの上に寝ころばされ、耳元で囁かれる。私の前髪を掻き分け、額にちゅっと唇を落とした。

「コリィ、大好き」

 私は彼の気持ちに応えるべく小さく頷き、言葉にする。そうするとコルネリウスも「俺の方がずっと大好きだ」と紡ぎ、唇を重ねた。最初は触れるような優しい口付けだった。何度もバードキスを繰り返し、次第に舌を絡めあうようにして深く互いを求め合う。
 
 コルネリウスが私の口内の全てを貪るよう、余す箇所なくその分厚い舌で舐めとっていく。くちゅくちゅと唾液の水音が耳を犯すたび、腹の底がきゅんと疼くのを感じた。

 息もつけないほどの激しい口付けに酸欠寸前で、ぎゅっと彼の服の裾を掴めばようやく唇が離れていった。
 肩で息をしながら瞳を潤ませる私を見て、コルネリウスは申し訳なさそうに呟いた。

「すまない。止まらなくなった。お前があまりにも可愛すぎて。……もっと触れさせてくれないか」

 サファイアのような蒼い瞳から滲み出る欲望が私の欲をも掻き立てる。こくりと頷く私を見たコルネリウスは、そっとブラウスのボタンに手をかけた。
 同時に首元に顔を埋め、肌をなぞるように唇を押し当ててくる。ちくりとした痛みが連続で続き、目を丸くして彼に視線を向ければ「痛かったか? 俺のだって印を残したかったんだ。許してくれ」と眉尻を下げながら言う。

「ふふっ、可愛いです。コルネリウス様」

「コリィだろ? ほら、俺の名を呼んでくれ」

 甘やかな視線にかっと身体が熱くなり、言われた通りに彼の愛称を呼ぼうとするも。

「んんっ」

 声に出す前に唇を食べられてしまった。もう、と怒る私にくすくすと笑うコルネリウス。
 すでにボタンは外され、象牙色の肌が欲望を孕む男の目前に晒されていた。視線が肌をなぞるだけで、下腹部がきゅっと疼く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

初恋をこじらせた騎士軍師は、愛妻を偏愛する ~有能な頭脳が愛妻には働きません!~

如月あこ
恋愛
 宮廷使用人のメリアは男好きのする体型のせいで、日頃から貴族男性に絡まれることが多く、自分の身体を嫌っていた。  ある夜、悪辣で有名な貴族の男に王城の庭園へ追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥る。  懸命に守ってきた純潔がついに散らされてしまう! と、恐怖に駆られるメリアを助けたのは『騎士軍師』という特別な階級を与えられている、策士として有名な男ゲオルグだった。  メリアはゲオルグの提案で、大切な人たちを守るために、彼と契約結婚をすることになるが――。    騎士軍師(40歳)×宮廷使用人(22歳)  ひたすら不器用で素直な二人の、両片想いむずむずストーリー。 ※ヒロインは、むちっとした体型(太っているわけではないが、本人は太っていると思い込んでいる)

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

処理中です...