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49.差し出されのは【完】
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「これって……綺麗な指輪」
手に持っていた小さな箱に入っていたのは銀色の細かい装飾が施された指輪だった。よく見れば植物の蔦と花がデザインされていて、非常に凝っていていかにも高級品だった。虚を突かれた私は美しいそれに思わずため息を吐き、すっと手を差し出す。
「──どうせならはめてください」
「ああ、もちろんだ」
ひんやりとした指輪の硬い感触が薬指を通る。
大きさもぴったりで、いつの間にこんなものを準備していたのかと感銘に瞳を揺らした。
「お前の父に認められたら渡そうと考えていて、以前から準備していたんだ。とてもよく似合っている」
「っ、ありがとうございます! すごく嬉しいです。こんな綺麗な指輪……一生大切にします」
目の奥がぐっと熱くなり、視界が潤む。
たった数ヶ月で私の周りは激変した。
愛する人がが出来、その人と結ばれる。
ずっと夢見ていたことが叶ったのだ。
目端に溜まった涙を節くれだった指で掬ったコルネリウスは、他の指で私の頬をさすり上げる。甘えるように擦り付ければ、彼はぐっと喉の奥を鳴らした。
「……あまり可愛い真似はよしてくれ」
「どうしてですか」
「ここで襲ってもいいのならばそうするが?」
お得意の仏頂面が顔を出す。
慌てて首を横に振れば、コルネリウスは不敵に微笑み、私の耳元で囁いた。
「──仕方がない。帰ってから、じっくりとお前を味合わせてもらうとしよう」
「っ、」
真っ赤に染まった顔を隠すように私は先に道を歩き出す。
気配で背後から遅れたコルネリウスがついてきているのを感じ取った。
艶やかな雰囲気から切り替えなければと、私は思いついた言葉を唐突に吐き出す。
「っ、そういえば! あのとき解呪されたのって、何がきっかけだったんでしょうか? 結局有耶無耶になってましたよね。禁書にも書かれていないっておっしゃってましたし……」
「ああそれか」
突如コルネリウスの声色がガラリと変わった。
変化に驚いて振り向けば、半眼になって顔を歪めている。あからさまな変化に私は気になって問い詰めてみる。
「教えてください! コルネリウス様のその様子から察するに、へんてこりんな感じですかね?」
「……まあな」
コルネリウスの広い肩を揺さぶり、上目遣いで突き詰めれば、仕方がないといった様で口を開き始めた。
「お前の飼ってる妖精から聞いた。あいつが言うには……」
「言うには?」
「……の…………で……することだ」
小声過ぎて聞こえず、「え?」と聞き返せば。
「何度も言わすな! し、下の口で……そのキスすることだそうだ!」
「…………」
冷たい風が吹き付ける。
先ほどのコルネリウスの表情が移ったかのように、私は半眼になりながら淡々と告げた。
「なにそのエロ親父が考えそうな解呪方法は……聞いて損しました。というか耳が穢れました」
「お、お前が無理に言わせたんだろう」
「普通に口じゃダメだったんですか。誰がそんなおかしな解呪方法考えたんでしょうか。きっとそれを思いついた人は碌でもない人でしょうね」
顔を紅潮させながら言い訳を繰り返すコルネリウスを置き去り、私は帰り道を歩み始める。
確かにくだらない解呪方法だが、あの《妖精のイタズラ》があったからこそ、今がある。
追いついてきたコルネリウスから顔を背け、私は口元に笑みを浮かべて歩き出すのだった。
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