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ボジェク15
しおりを挟む過ごしていくうちに、少しずつ距離が近づいているのは気がついていた。
最初は近くにいるだけでも顔を青ざめさせていたヘドヴィカだったが、今ではある程度ならそばにいても平気そうだ。
ボジェクも彼女に寄り添った言葉をかける心づもりではあったが、なかなか思い通りにはいかなかった。
全て自分の面倒くさい性格が邪魔をしてきて、自分を呪いたいと思ったのは初めてのことだ。
そんなふうに暮らしていくなか、突如彼女が新婚旅行の提案をしてきたのだ。
ヘドヴィカにつけた使用人がどうやら口を滑らせたようだ。実は婚姻の儀を執り行う前に新婚旅行の予定を立てていたことを、バラされてしまったらしい。
あの頃はヘドヴィカの現状も知らなかったし、自分も過去の過ちから逃避していたように思う。
それを反省し、彼女に気を遣われないように新婚旅行はすぐに取りやめ、なかったことにしたはずだったのに。
ヘドヴィカから新婚旅行に誘われたのは素直に嬉しかった。
例え男性不信を治すためだけであったとしても、その相手としてボジェクを選んでくれた。その事実が何より心を満たしてくれる。
馬車の中では膝が重なりそうなほどの距離で長時間何を会話するべきなのかわからず、当たり前のように緊張してしまい、仕事の資料をわざわざ用意させて気を散らせた。
(ヘドヴィカと同じ空間にいられるだけで、心臓がはじけそうだ。バレねぇようにしないと)
スマートな一面をアピールしたくてやっていた節もある。
10年前からこれほどまでに変わったのだということを、ヘドヴィカに理解して欲しかった。
久しぶりに到着したベークマンの別荘はきちんと手入れが施されていた。それもそのはず。
婚姻の儀の前にヘドヴィカを招くのを想定して改装をしたからだ。
実を言うと、王都の屋敷も彼女の好みを気にして内装を変えてみたりもしていた。
陛下から聞いたヘドヴィカの好きなジャンルの本を置き、日差しの気持ちがいい部屋を選択し、好みの色を取り入れた家具をオーダーメイドして至急造らせた。
10年前、植物の手入れも好きだといっていた経緯から部屋の中にも植物を置き、物置を一つ潰して庭園を拡大させた。
それもあってか、ヘドヴィカはボジェクの屋敷に引っ越してきてから比較的居心地良さそうに過ごせているように見える。自分が勝手にやってることだから、ヘドヴィカは知る必要はない。
今まで二人の屋敷が心安らぐ空間であればと願っている。
大改造の甲斐もあってか、窓際から庭園をよく眺めていると使用人より報告を受けている。
旅行先であったアルディラにつき、共に街を散策したり花畑を見にいったりして過ごした。
ヘドヴィカとの甘くときめく一日を過ごす中で、突然アダムが別荘を訪ねてきたことには大層驚いた。
「久方ぶりだね、ボジェク」
使用人にアダムの訪問を伝え聞いた時は嘘かと思った。
あいつは留学先の滞在を誰よりも楽しんでいるように見えたし、ギリギリまで帰国はしないと粘るものかと考えたいた。
数年前、ボジェクも留学を決めたとき。
アダムの留学予定の国の隣国へと赴くと決まったのだが、あの男は休みのたびに遊びに来ていた。
予期せず訪ねてきたと思えば『数日間こっちに滞在することになったんだ。少しの間だけどよろしくね』とにこやかに告げてくる。
懐かしい思い出が蘇った。
だが、今はそんな思い出よりも優先すべきことがある。
「今すぐここから立ち去れ」
冷静さを心がけ、淡々と述べた。
けれど外国での経験を経て、さらに小狡くなったアダムはまるで聞こえていないかのようにボジェクの思いを受け流す。
「相変わらずボジェクはつれないね。1番の親友が結婚を祝いに来たのにそんな膨れっ面してさ。そんな様子では、きっとヘドヴィカ嬢も窮屈に違いないよ」
余計なお世話だと思った。
アダムがヘドヴィカについて言及することが憎らしい。
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