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J-Side
僕の半分(J-Side)5
「ハソプさん、後ろ向きになってやった方が、僕は楽なんだ。」
「そうなんだ。じゃあ、そうしてもらって、いい?」
お尻だけ高く突き出して僕はベッドに顔を埋めたから、恥ずかしさはさっきよりは少しましだ。でも、ハソプさんに見られている事には変わりない。
「少しジェルを足すね。」
そう言われても、別に何の感触も無かった。後で知ったけど、僕の説明を受けてからずっと、ジェルのボトルをハソプさんが自分の足の間で温めてくれていたんだって。
「ハソプさん、僕の胸を触って。僕が息を吐いたタイミングで入れてくれると、楽なんだ。」
この行為のコツを、だんだん思い出して来た。
前の記憶で、相手が何かを加減してくれる事なんか滅多に無かったから、少しでも痛くないように、楽に出来るように、僕自身が編み出した対処法だ。
ハソプさんのゴム越しの指先が、僕のそこをゆっくり何度も円を描くように撫でて、僕はもうそれだけで声が出そうになってしまうから、唇を強く結んで堪えていた。ハソプさんは僕に言われた通り、僕の胸に当てた手の上下の波で、タイミングを見計らっている。
「うっ。」
「大丈夫?痛い?」
「平気。そのまま、呼吸の度に、指を進めてね・・・」
時折ちゅっちゅと音がするのは、僕の身体にキスしてくれてるからだよね?恥ずかしくて振り向けないけれど、きっとそう。じれったくてもどかしくて、こんな事してる間に萎えたりしないのかな・・・
「ああっ。」
自分で分からないうちに声が出て、びっくりした。
「随分、指が動かしやすくなってきたよ。もう一本、指を増やす?」
僕は頷いた。もう、別の感覚に支配されそう。喋るのもしんどくなってきた。ああ、こんな感じだったっけ?こんなに中が、むずむずしたっけ?ただ痛くて、辛くて、でも相手の人が気持ちいいって言うから僕はそのままずっとただ突かれ続けて、気紛れに僕のそれを扱いてくれたりした時だけは果てたけど、それ以外はずっと終わるのを待ってた。そんな記憶しか無いのに・・・
この感覚は何だろう?こんなに時間を掛けて中を弄られた事無いから、分からない。
「ねえ、少しは、感じる?」
僕の背に唇を滑らせながら聞くから、何だかぞくぞくして背中が反り返った。
「うん。」
「こんな小さなところに、俺のが入れるのかな・・・」
「そろそろ試してみますか?指を抜いたら、同じようにゴム着けて、ジェル一杯垂らして・・・来て。」
「ジユル君、お願いがあるんだけど・・・」
「なんですか?」
「顔見ながら、キスしながら、君と一緒になりたい。態勢、辛いのかな?」
僕はもう、諦めた。恥ずかしさよりも、嬉しさの方が勝っている。ハソプさんの言う事を全部聞いてあげたい。
僕は自分でベッドに仰向けになった。腰の下に枕を当てて、両手を差し出しキスを強請った。僕を気遣ってばかりのこの人が、話す度に好きになって来る。僕の心はとっくに波紋が幾重にも広がっている。その中心に立っているのが、ハソプさんだ。
「いい?」
僕は何度も頷いた。両足を開き、片足を胸に付く位折り曲げて、自分でハソプさんの熱い猛りを掴んでそこに押し当てた。
「怯まないで、僕を、捕まえて。」
僕は深く静かに息を吐いて、緩んだそこにハソプさんの先端を捩じり込ませた。少し痛かったけれど、たっぷり着けてくれたジェルのお陰で、あとは勢いさえあれば全部飲み込める。
片手で僕の腰を抱き抑え、片手で僕の指に指を絡ませたハソプさんは、僕の胸を見ていた。呼吸の上下で胸がへこんだ時に、ぐっぐっと身体を進めて来た。
ああ、僕の中が彼で一杯になってくる。胸も一杯だ。僕は、こんなにも大切にされている。幸せな気持ちが、痛みより上回っている。
「どうして、泣くの?辛い?止めようか?」
僕は泣きじゃくっていた。何度も首を振って、両足でハソプさんの腰を抱いた。もっと、好きなように僕を扱っていい。
「辛くて泣いてる・・・わけじゃない・・・から・・・いいんだ。僕を好きにして・・・」
後はどんどん粗くなるハソプさんの息遣いの合間にキスを繰り返して、汗で重なる肌がよりくっ付いて、それでも腕を離すつもりは全然無くて、僕はハソプさんにしがみ付いて身体を揺さぶられ続けた。
「ごめ・・・ん、優しく・・・出来ない・・・」
苦しそうなハソプさんの囁きは、僕の内側を震わせた。熱くて、びりびりと痺れて、何処かに飛ばされてしまうような、初めて知る感覚ばかりだ。それが全部、気持ちいい。
僕の猛りがハソプさんの身体で圧し潰されているのに、腰が動く度に強く擦られるから、多分、知らないうちに果てている。前の感覚よりも、僕の中でハソプさんの熱の感度が高いから、そっちに意識が持っていかれてしまうんだ。
「ああっ、こんなの知らない!」
僕の身体ががくがくといつまでも震えが止まらなくて、足先が凄く痛い。多分、攣ってしまったんだと思うけど、それより中が熱くて熱くて疼いて・・・突然、頭の中が真っ白になった。
「ジユル君、ジユル君、大丈夫?」
何度か優しく頬を叩かれて、僕は気を取り戻した。今のアレ、何だったんだろう?
「ああ、起きた。良かった・・・ごめん。最初から飛ばし過ぎて。もう、君の中が凄くて・・・狂いそうだった・・・今も・・・」
僕はまた泣いていた。涙が止まらない。嬉しくて、幸せで、こんな事が僕に起きるだなんて。
「辛い?ごめんね・・・」
「謝らないで、僕の涙、吸ってくれるんでしょう?安心して、一杯泣きます。」
ハソプさんは、暫く僕の顔中キスの雨を降らせてくれた。勿論、涙も吸い取ってくれた。
「身体は平気?」
「はい。ハソプさんは?いけましたか?」
「うん。ありがとう。」
そっと抱き締めてくれた時、僕の中でハソプさんがぐぐっと存在をアピールしてきたから、僕はビックリして思わず肩を叩いてしまった。
「ゴム、替えないと。」
「うん。抜きたくない・・・君の中にこのままずっと居たい。」
また更に存在感を訴えて来るから、僕は笑って身体を押し退けた。
「大丈夫。僕の中、ハソプさんの形に空いてるから、一旦抜いても大丈夫。」
「すぐに、抱いてもいいの?」
「僕も、同じです。」
求められるのは、欲望?僕自身?そんなのどうでも良くなる程、ハソプさんは僕を丁寧に扱ってくれた。
何度でも勃つのは、僕が飽きられていない証でもあるから、それだけで良かった。
以前は、相手が一度か二度果てたらそれで終わり。僕の事は気にしないから、一度も果てずに終わったり、一人で後始末をしている時に何だか悲しくて悔しくてやり切れなかった事を思い出した。
「時々、俺じゃなくて、何処か遠くを見てるのは、何故?」
何度か目の果てた後、僕の身体をタオルで拭ってくれながらハソプさんは僕に聞いてきた。
「・・・僕の何かを知って、幻滅されるのが怖いです。」
僕は正直に、目を見てそう答えた。
「目の前に居る人じゃない事を考えて、ごめんなさい。」
本心だったから、そうも答えた。ハソプさんは困ったような笑顔を浮かべて、僕の頭を撫でた。
「俺の方がずっと年上だから、その分、幻滅どころじゃ済まない話が沢山ある。それでも、少しずつ君に知って欲しいとも思うよ?今の俺の成分の一つだから。でも、それを君に強要出来ない事も知ってる。だから、もう、何も謝らないで。君は俺に謝ってばかりだ。悪い事なんか一つもしていないのに。」
僕はまた泣いてしまった。こんなに温かくて、全てを受け入れようとする人に初めて会ったから。嬉しくて、涙が勝手に出るんだ。
「えへへ、僕の涙を吸ってくれる人が居るから・・・安心して泣いちゃって・・・ごめ・・・」
突然唇で言葉を遮られた。
「君がそうやってごめんなさいと言う度に、キスする事にした。何処でもだよ?街中で俺にそうされたくなかったら、もう、禁止。」
僕は笑って何度も頷いた。
「ちょっと聞いて欲しくなりました・・・でも、その前にトイレ。」
ベッドから降りようとして、僕は床に座り込んでしまった。足に、全く力が入らない。
「無理させちゃったかな・・・それこそ、ごめん。」
ハソプさんは僕を軽々と抱き上げて、バスルームに連れて行ってくれた。トイレの便座に腰掛けさせて
「ついでにお風呂溜めようか?」
と言うから、用足ししている側に居られるのは抵抗があったから
「シャワーだけ浴びます。」
と言って出て行って貰った。
ドアが閉まってから、僕は両手で顔を抑えて、思い切り泣いた。
着替えを持って入らなかったから、僕はバスタオルだけ身体に巻いてベッドに戻った。
ベッドサイドにハソプさんが作った軽食が置いてあり、入れ替わりにシャワーを浴びに出て行った。僕はスマホの電源を入れた。22時?そんなに長い時間、やってたの?信じられない・・・
「あれ?」
シーツが綺麗になっている事に気が付いた。僕がシャワー浴びている間にハソプさんが取り換えたんだ。色々・・・汚したんだろうな・・・僕も何度果てたか覚えて無い位、そうだったし・・・辺りを見回しても前のシーツが見当たらないから、きっと僕に気遣わせないようにしてくれたんだね。
優しいのは、僕にだから?誰にでも?
どうして、嬉しいのと同時に疑心暗鬼になるんだろう。僕の癖なのかな・・・分からないや。
「どうしたの?先に食べてて良かったのに。」
濡れた髪をタオルで拭きながら戻って来たハソプさんも、腰にバスタオル一枚巻いただけの姿だ。何だか又恥ずかしくなって目を逸らした。
「一緒に食べようかと思って。あの、随分長い時間・・・その・・・」
「んふふ、長い時間かな?俺には足らない位だけど。」
「あの、シーツ、汚しちゃって、ごめ・・・」
また、キスで言葉を奪われた。そうか、さっき言われた通り、僕らのルールなんだ。
「今、洗濯機スイッチ入れて来た。すぐに乾くから、何度交換しても平気。さあ、食べよ?」
ベッドの上で、裸で、用意してくれた軽食を食べながら少し僕の事情を話した。ハソプさんは、僕の話が途切れ途切れになっても、最後まで黙って聞いてくれた。
大学一年生の時に女の子と付き合ったけれど、ベッドの前で僕が不能で関係が自然消滅した事。
大学三年生の時に好意を寄せていた先輩から告白されて、初めて同性と付き合って関係を持って、でもどんどん粗雑に扱われるようになって、先輩が卒業してから音沙汰が無くなった事。それが二人の最後を迎えたんだと僕には分からなくて、いつまでも当ても無く待っていて、そんな自分に嫌気が差して、その後”凪”の人生を歩もうと努力した事。
そして今、人生にも心にも”あびき”が起きてしまった事などなど。
「僕の話なんか、退屈じゃないですか?その・・・ずっと・・・リアクション無いから。」
「ああ、君の気持に近付きたくて、頭の中で映像化してた。職業病かな、ごめん。」
僕は口の中に梨を入れたままだったけど、ハソプさんの唇に唇をぶつけた。
「あはは、俺が謝っても君はこうするのか?」
ハソプさんは、自分から軽くキスし直してくれた。
「君、いい子なんだね。相手を全く悪く言ってない。」
「そんな事、無いです。僕が足りないから、そうなってしまったと分かっているし。」
「自己肯定感、低いの?勿体ない。君みたいに可愛くて・・・だから、あの時、俳優を辞めてしまったの?」
「自分から始めた事じゃないから、続ける意味が分からなくて。」
「演じてる時、ライトを浴びている時、楽しく無かった?」
「その時々では楽しくて、高揚感があったと思います。でも、それだけ。出来上がった映像チェックして、自分の演技をチェックして、向上心に繋げる作業が出来ませんでした。」
「ふうん、そうなんだ・・・マネージメントが上手く無かったんだな・・・」
「そんな僕を、あの時、何度も引き留めて下さった事には感謝しています。そこまでして頂くような僕じゃなかったのに。」
「引き留めてた俺を覚えていなかったのに?」
これにはどう反応も出来なくて、僕は愛想笑いで頭を下げた。
あの頃、どういう分けか人の顔が覚えられなかったから。出来事を思い出しても、登場人物の顔は皆真っ白だった。
ハソプさんは僕の手をそっと握った。
「俺との事は、君が、君の意思で始めた事だから・・・続ける意味も、ちゃんとあるよね?」
「・・・はい。僕の意思です。」
「もう、俺は、君無しじゃ居られなくなってるんだよ。」
「はい。ありがとうございます。」
「淡々とし過ぎじゃない?」
ハソプさんは笑って、握った僕の手を引き寄せた。
さっきと違って、シャワーを浴びたサラサラの肌がくっ付いて、これはこれでとても気持ち良かった。ハソプさんの裸の胸に凭れ掛かる僕の頬を大きな掌で抱いて、親指で何度も頬を撫でてくれた。
「君を俺の者にしたくてジタバタしている間も、ちょっとだけそうなってたけど・・・君を抱いて、本格的に、気が狂いそうになってる。」
「気が狂うって、分からない・・・」
「ダメだって分かっている事を沢山妄想して、一人で悶絶する事。」
「・・・例えば?」
「君をこの家に閉じ込めて、一か月位ただ抱いて毎日過ごしたい、とか。」
「え!?僕、壊れちゃうじゃないですか!」
「ふふっ。だから言ったでしょ?叶わない願望を夢見て、一人でもがき苦しむ事だって。ドMだな。」
笑いながら、僕の首筋に顔を埋めて短いキスを繰り返して・・・いつの間にかハソプさんの下敷きになっていた僕は、何だか背筋がぞくぞくとして息が上がった。
「君の中がどうなっているか、どんな風に入り込んだ俺を抱いて離さないか、自分で知らないでしょ?」
「やだ・・・恥ずかしい・・・」
「気持ちと身体が連動した瞬間、その妄想が止まらなくなって・・・それが気が狂うって事。もう、誰にも治せない。」
「じゃあ、どうしたら治るんですか?」
僕の言葉に、ハソプさんは唇の動きを止めて、僕を間近に見下ろした。
「治す必要、あるの?」
その眼差しが余りにも真剣で、僕はただ首を振った。
「俺はさ、正直、想像出来なかったんだよ。君を抱いた後、どうなるのかを。」
「はい・・・」
「信じられる?君の小さな、ここ。ここに俺全部が翻弄されてるんだ。」
ハソプさんはそう言って、さっきまで僕の中に入ってきたその入り口に指を当ててさわさわと撫で回した。僕はビックリして、その手を掴んで動きを止めさせた。
「俺が君を愛しいと思う気持ちと、君の身体に溺れたい欲望と、せめぎ合ってる。だから苦しいし、狂うんだよ。」
ハソプさんの言葉の意味を、全部は理解出来ない。でも、僕を求めてくれているのだけは分かった。
「君は、僕とのセックスを、どう感じたの?」
真正面からそんな事を直球で聞かれて、僕は面食らい、顔がかっかと熱くなった。耳まで熱い。もう、目を見ていられない。
「ちゃんと答えて。」
顎を掴まれて、強制的に目線を合わす羽目になった。乱暴なのかと一瞬竦んだけれど、そうじゃない、僕に真剣なんだと分かった。嬉しかった。
「そうなんだ。じゃあ、そうしてもらって、いい?」
お尻だけ高く突き出して僕はベッドに顔を埋めたから、恥ずかしさはさっきよりは少しましだ。でも、ハソプさんに見られている事には変わりない。
「少しジェルを足すね。」
そう言われても、別に何の感触も無かった。後で知ったけど、僕の説明を受けてからずっと、ジェルのボトルをハソプさんが自分の足の間で温めてくれていたんだって。
「ハソプさん、僕の胸を触って。僕が息を吐いたタイミングで入れてくれると、楽なんだ。」
この行為のコツを、だんだん思い出して来た。
前の記憶で、相手が何かを加減してくれる事なんか滅多に無かったから、少しでも痛くないように、楽に出来るように、僕自身が編み出した対処法だ。
ハソプさんのゴム越しの指先が、僕のそこをゆっくり何度も円を描くように撫でて、僕はもうそれだけで声が出そうになってしまうから、唇を強く結んで堪えていた。ハソプさんは僕に言われた通り、僕の胸に当てた手の上下の波で、タイミングを見計らっている。
「うっ。」
「大丈夫?痛い?」
「平気。そのまま、呼吸の度に、指を進めてね・・・」
時折ちゅっちゅと音がするのは、僕の身体にキスしてくれてるからだよね?恥ずかしくて振り向けないけれど、きっとそう。じれったくてもどかしくて、こんな事してる間に萎えたりしないのかな・・・
「ああっ。」
自分で分からないうちに声が出て、びっくりした。
「随分、指が動かしやすくなってきたよ。もう一本、指を増やす?」
僕は頷いた。もう、別の感覚に支配されそう。喋るのもしんどくなってきた。ああ、こんな感じだったっけ?こんなに中が、むずむずしたっけ?ただ痛くて、辛くて、でも相手の人が気持ちいいって言うから僕はそのままずっとただ突かれ続けて、気紛れに僕のそれを扱いてくれたりした時だけは果てたけど、それ以外はずっと終わるのを待ってた。そんな記憶しか無いのに・・・
この感覚は何だろう?こんなに時間を掛けて中を弄られた事無いから、分からない。
「ねえ、少しは、感じる?」
僕の背に唇を滑らせながら聞くから、何だかぞくぞくして背中が反り返った。
「うん。」
「こんな小さなところに、俺のが入れるのかな・・・」
「そろそろ試してみますか?指を抜いたら、同じようにゴム着けて、ジェル一杯垂らして・・・来て。」
「ジユル君、お願いがあるんだけど・・・」
「なんですか?」
「顔見ながら、キスしながら、君と一緒になりたい。態勢、辛いのかな?」
僕はもう、諦めた。恥ずかしさよりも、嬉しさの方が勝っている。ハソプさんの言う事を全部聞いてあげたい。
僕は自分でベッドに仰向けになった。腰の下に枕を当てて、両手を差し出しキスを強請った。僕を気遣ってばかりのこの人が、話す度に好きになって来る。僕の心はとっくに波紋が幾重にも広がっている。その中心に立っているのが、ハソプさんだ。
「いい?」
僕は何度も頷いた。両足を開き、片足を胸に付く位折り曲げて、自分でハソプさんの熱い猛りを掴んでそこに押し当てた。
「怯まないで、僕を、捕まえて。」
僕は深く静かに息を吐いて、緩んだそこにハソプさんの先端を捩じり込ませた。少し痛かったけれど、たっぷり着けてくれたジェルのお陰で、あとは勢いさえあれば全部飲み込める。
片手で僕の腰を抱き抑え、片手で僕の指に指を絡ませたハソプさんは、僕の胸を見ていた。呼吸の上下で胸がへこんだ時に、ぐっぐっと身体を進めて来た。
ああ、僕の中が彼で一杯になってくる。胸も一杯だ。僕は、こんなにも大切にされている。幸せな気持ちが、痛みより上回っている。
「どうして、泣くの?辛い?止めようか?」
僕は泣きじゃくっていた。何度も首を振って、両足でハソプさんの腰を抱いた。もっと、好きなように僕を扱っていい。
「辛くて泣いてる・・・わけじゃない・・・から・・・いいんだ。僕を好きにして・・・」
後はどんどん粗くなるハソプさんの息遣いの合間にキスを繰り返して、汗で重なる肌がよりくっ付いて、それでも腕を離すつもりは全然無くて、僕はハソプさんにしがみ付いて身体を揺さぶられ続けた。
「ごめ・・・ん、優しく・・・出来ない・・・」
苦しそうなハソプさんの囁きは、僕の内側を震わせた。熱くて、びりびりと痺れて、何処かに飛ばされてしまうような、初めて知る感覚ばかりだ。それが全部、気持ちいい。
僕の猛りがハソプさんの身体で圧し潰されているのに、腰が動く度に強く擦られるから、多分、知らないうちに果てている。前の感覚よりも、僕の中でハソプさんの熱の感度が高いから、そっちに意識が持っていかれてしまうんだ。
「ああっ、こんなの知らない!」
僕の身体ががくがくといつまでも震えが止まらなくて、足先が凄く痛い。多分、攣ってしまったんだと思うけど、それより中が熱くて熱くて疼いて・・・突然、頭の中が真っ白になった。
「ジユル君、ジユル君、大丈夫?」
何度か優しく頬を叩かれて、僕は気を取り戻した。今のアレ、何だったんだろう?
「ああ、起きた。良かった・・・ごめん。最初から飛ばし過ぎて。もう、君の中が凄くて・・・狂いそうだった・・・今も・・・」
僕はまた泣いていた。涙が止まらない。嬉しくて、幸せで、こんな事が僕に起きるだなんて。
「辛い?ごめんね・・・」
「謝らないで、僕の涙、吸ってくれるんでしょう?安心して、一杯泣きます。」
ハソプさんは、暫く僕の顔中キスの雨を降らせてくれた。勿論、涙も吸い取ってくれた。
「身体は平気?」
「はい。ハソプさんは?いけましたか?」
「うん。ありがとう。」
そっと抱き締めてくれた時、僕の中でハソプさんがぐぐっと存在をアピールしてきたから、僕はビックリして思わず肩を叩いてしまった。
「ゴム、替えないと。」
「うん。抜きたくない・・・君の中にこのままずっと居たい。」
また更に存在感を訴えて来るから、僕は笑って身体を押し退けた。
「大丈夫。僕の中、ハソプさんの形に空いてるから、一旦抜いても大丈夫。」
「すぐに、抱いてもいいの?」
「僕も、同じです。」
求められるのは、欲望?僕自身?そんなのどうでも良くなる程、ハソプさんは僕を丁寧に扱ってくれた。
何度でも勃つのは、僕が飽きられていない証でもあるから、それだけで良かった。
以前は、相手が一度か二度果てたらそれで終わり。僕の事は気にしないから、一度も果てずに終わったり、一人で後始末をしている時に何だか悲しくて悔しくてやり切れなかった事を思い出した。
「時々、俺じゃなくて、何処か遠くを見てるのは、何故?」
何度か目の果てた後、僕の身体をタオルで拭ってくれながらハソプさんは僕に聞いてきた。
「・・・僕の何かを知って、幻滅されるのが怖いです。」
僕は正直に、目を見てそう答えた。
「目の前に居る人じゃない事を考えて、ごめんなさい。」
本心だったから、そうも答えた。ハソプさんは困ったような笑顔を浮かべて、僕の頭を撫でた。
「俺の方がずっと年上だから、その分、幻滅どころじゃ済まない話が沢山ある。それでも、少しずつ君に知って欲しいとも思うよ?今の俺の成分の一つだから。でも、それを君に強要出来ない事も知ってる。だから、もう、何も謝らないで。君は俺に謝ってばかりだ。悪い事なんか一つもしていないのに。」
僕はまた泣いてしまった。こんなに温かくて、全てを受け入れようとする人に初めて会ったから。嬉しくて、涙が勝手に出るんだ。
「えへへ、僕の涙を吸ってくれる人が居るから・・・安心して泣いちゃって・・・ごめ・・・」
突然唇で言葉を遮られた。
「君がそうやってごめんなさいと言う度に、キスする事にした。何処でもだよ?街中で俺にそうされたくなかったら、もう、禁止。」
僕は笑って何度も頷いた。
「ちょっと聞いて欲しくなりました・・・でも、その前にトイレ。」
ベッドから降りようとして、僕は床に座り込んでしまった。足に、全く力が入らない。
「無理させちゃったかな・・・それこそ、ごめん。」
ハソプさんは僕を軽々と抱き上げて、バスルームに連れて行ってくれた。トイレの便座に腰掛けさせて
「ついでにお風呂溜めようか?」
と言うから、用足ししている側に居られるのは抵抗があったから
「シャワーだけ浴びます。」
と言って出て行って貰った。
ドアが閉まってから、僕は両手で顔を抑えて、思い切り泣いた。
着替えを持って入らなかったから、僕はバスタオルだけ身体に巻いてベッドに戻った。
ベッドサイドにハソプさんが作った軽食が置いてあり、入れ替わりにシャワーを浴びに出て行った。僕はスマホの電源を入れた。22時?そんなに長い時間、やってたの?信じられない・・・
「あれ?」
シーツが綺麗になっている事に気が付いた。僕がシャワー浴びている間にハソプさんが取り換えたんだ。色々・・・汚したんだろうな・・・僕も何度果てたか覚えて無い位、そうだったし・・・辺りを見回しても前のシーツが見当たらないから、きっと僕に気遣わせないようにしてくれたんだね。
優しいのは、僕にだから?誰にでも?
どうして、嬉しいのと同時に疑心暗鬼になるんだろう。僕の癖なのかな・・・分からないや。
「どうしたの?先に食べてて良かったのに。」
濡れた髪をタオルで拭きながら戻って来たハソプさんも、腰にバスタオル一枚巻いただけの姿だ。何だか又恥ずかしくなって目を逸らした。
「一緒に食べようかと思って。あの、随分長い時間・・・その・・・」
「んふふ、長い時間かな?俺には足らない位だけど。」
「あの、シーツ、汚しちゃって、ごめ・・・」
また、キスで言葉を奪われた。そうか、さっき言われた通り、僕らのルールなんだ。
「今、洗濯機スイッチ入れて来た。すぐに乾くから、何度交換しても平気。さあ、食べよ?」
ベッドの上で、裸で、用意してくれた軽食を食べながら少し僕の事情を話した。ハソプさんは、僕の話が途切れ途切れになっても、最後まで黙って聞いてくれた。
大学一年生の時に女の子と付き合ったけれど、ベッドの前で僕が不能で関係が自然消滅した事。
大学三年生の時に好意を寄せていた先輩から告白されて、初めて同性と付き合って関係を持って、でもどんどん粗雑に扱われるようになって、先輩が卒業してから音沙汰が無くなった事。それが二人の最後を迎えたんだと僕には分からなくて、いつまでも当ても無く待っていて、そんな自分に嫌気が差して、その後”凪”の人生を歩もうと努力した事。
そして今、人生にも心にも”あびき”が起きてしまった事などなど。
「僕の話なんか、退屈じゃないですか?その・・・ずっと・・・リアクション無いから。」
「ああ、君の気持に近付きたくて、頭の中で映像化してた。職業病かな、ごめん。」
僕は口の中に梨を入れたままだったけど、ハソプさんの唇に唇をぶつけた。
「あはは、俺が謝っても君はこうするのか?」
ハソプさんは、自分から軽くキスし直してくれた。
「君、いい子なんだね。相手を全く悪く言ってない。」
「そんな事、無いです。僕が足りないから、そうなってしまったと分かっているし。」
「自己肯定感、低いの?勿体ない。君みたいに可愛くて・・・だから、あの時、俳優を辞めてしまったの?」
「自分から始めた事じゃないから、続ける意味が分からなくて。」
「演じてる時、ライトを浴びている時、楽しく無かった?」
「その時々では楽しくて、高揚感があったと思います。でも、それだけ。出来上がった映像チェックして、自分の演技をチェックして、向上心に繋げる作業が出来ませんでした。」
「ふうん、そうなんだ・・・マネージメントが上手く無かったんだな・・・」
「そんな僕を、あの時、何度も引き留めて下さった事には感謝しています。そこまでして頂くような僕じゃなかったのに。」
「引き留めてた俺を覚えていなかったのに?」
これにはどう反応も出来なくて、僕は愛想笑いで頭を下げた。
あの頃、どういう分けか人の顔が覚えられなかったから。出来事を思い出しても、登場人物の顔は皆真っ白だった。
ハソプさんは僕の手をそっと握った。
「俺との事は、君が、君の意思で始めた事だから・・・続ける意味も、ちゃんとあるよね?」
「・・・はい。僕の意思です。」
「もう、俺は、君無しじゃ居られなくなってるんだよ。」
「はい。ありがとうございます。」
「淡々とし過ぎじゃない?」
ハソプさんは笑って、握った僕の手を引き寄せた。
さっきと違って、シャワーを浴びたサラサラの肌がくっ付いて、これはこれでとても気持ち良かった。ハソプさんの裸の胸に凭れ掛かる僕の頬を大きな掌で抱いて、親指で何度も頬を撫でてくれた。
「君を俺の者にしたくてジタバタしている間も、ちょっとだけそうなってたけど・・・君を抱いて、本格的に、気が狂いそうになってる。」
「気が狂うって、分からない・・・」
「ダメだって分かっている事を沢山妄想して、一人で悶絶する事。」
「・・・例えば?」
「君をこの家に閉じ込めて、一か月位ただ抱いて毎日過ごしたい、とか。」
「え!?僕、壊れちゃうじゃないですか!」
「ふふっ。だから言ったでしょ?叶わない願望を夢見て、一人でもがき苦しむ事だって。ドMだな。」
笑いながら、僕の首筋に顔を埋めて短いキスを繰り返して・・・いつの間にかハソプさんの下敷きになっていた僕は、何だか背筋がぞくぞくとして息が上がった。
「君の中がどうなっているか、どんな風に入り込んだ俺を抱いて離さないか、自分で知らないでしょ?」
「やだ・・・恥ずかしい・・・」
「気持ちと身体が連動した瞬間、その妄想が止まらなくなって・・・それが気が狂うって事。もう、誰にも治せない。」
「じゃあ、どうしたら治るんですか?」
僕の言葉に、ハソプさんは唇の動きを止めて、僕を間近に見下ろした。
「治す必要、あるの?」
その眼差しが余りにも真剣で、僕はただ首を振った。
「俺はさ、正直、想像出来なかったんだよ。君を抱いた後、どうなるのかを。」
「はい・・・」
「信じられる?君の小さな、ここ。ここに俺全部が翻弄されてるんだ。」
ハソプさんはそう言って、さっきまで僕の中に入ってきたその入り口に指を当ててさわさわと撫で回した。僕はビックリして、その手を掴んで動きを止めさせた。
「俺が君を愛しいと思う気持ちと、君の身体に溺れたい欲望と、せめぎ合ってる。だから苦しいし、狂うんだよ。」
ハソプさんの言葉の意味を、全部は理解出来ない。でも、僕を求めてくれているのだけは分かった。
「君は、僕とのセックスを、どう感じたの?」
真正面からそんな事を直球で聞かれて、僕は面食らい、顔がかっかと熱くなった。耳まで熱い。もう、目を見ていられない。
「ちゃんと答えて。」
顎を掴まれて、強制的に目線を合わす羽目になった。乱暴なのかと一瞬竦んだけれど、そうじゃない、僕に真剣なんだと分かった。嬉しかった。
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言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。