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花の種。
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いつもどおり、朝がやってきた。
今日もいい天気だな、と思う。
カーテンを開けて、窓の外を見る。
玄関の前で、いつもどおりイケメン二人がまだかと待ってくれている。
…訳もなく。
あ、そろそろ学校行かなきゃ。
私は現役女子高生。
イケメンとの学園ライフを夢見ていた。
だがしかし、イケメンのほとんどが彼女持ち。
地味で特技もない私には、彼氏どころか普通に話せる友達もあまりいない。
だから、諦めていた。
あの種を拾うまでは。
学校の帰り道、最寄りの駅で怪しい人を見つけた。
小さなカゴを持っている。
カゴの中には、植物の種とお店のパンフレットが入っていた。
新しい店の宣伝をしているらしい。
何のお店だろう。
駅で宣伝なんて…、世の中大変だな…。
「良かったら、お店に来てください。」
怪しい人は、私にパンフレットを渡してきた。
植物の種もついている。
怪しい人の顔をじっと見つめた。
優しい笑顔で言われて、見とれてしまう。
身長が高くて、顔が整っている。
きっちりしたスーツ姿、ピカピカの靴。
これが、一目惚れっていうのかな。
私は怪しい人を一瞬で好きになった。
「…はい。」
パンフレットの内容は…。
愛の種。
愛される人になるおまじない効果がある。
花を咲かせると、願いがかなうかも?
ラブシードカフェ、近日オープン。
植物で癒されながら美味しいコーヒーはいかが?
という内容だった。
いつもなら、愛の種なんて…嘘っぽい。
と言うと思う。
だが、今日は違う。
怪しい人を信用して植えてみようと思った。
そして、次の日。
何故か花が咲いていた。
芽がでる、蕾ができるっていう過程はないのか。
いつもどおりじゃない事が起きた。
面白いから、そのまま植物を部屋に飾ることにした。
「行って来まーす」
私は今日もいつもどおり学校に行った。
いつもどおり自分の席についた。
そして授業が終わった。
ドキドキ恋愛学園ライフが…始まらないんかい。
効果ないんかい。
全然、期待なんかしてなかったはずだけど。
これはこれで寂しい。
放課後になって、急に雨が降り出した。
土砂降りの雨。
傘忘れちゃった。
最悪だ。
教室でしばらく雨やみを待とうかな。
「…さん……成宮さん!」
急に呼ばれた。
「…何?」
私は不機嫌に返事をする。
「お願いがあるんだけど…。」
そう言って話しかけてきたのは、隣の席にいる、クラスメイトの朝丸くん。
「…お願いって何?」
私は少し落ち着いて返事をした。
「成宮さん、この傘使ってくれない?」
と言って、かわいいピンクの折りたたみ傘を渡してきた。
「…かわいい傘だけど、遠慮しとくよ。朝丸くんが濡れちゃうでしょ。」
私は、そう言って突き返した。
「頼むっ!
それに、俺は傘を持っているんだ。」
そう言ってまた、傘を渡してきた。
傘貸してくれるのはありがたいけど…。
朝丸くんに借りるのは気が引ける。
「どうして私に?」
「成宮さん、今日傘忘れてたでしょ。」
朝丸くんは、私が傘を忘れていることを知っていた。
何だかドキッとした。
「え…知ってたの?」
「…ん?、知らないよ。
本当に忘れてたの?」
知らんのかい。
とツッコミしたくなったけど、何とか堪えた。
朝丸くんは笑って言った。
「実は昨日、間違えてピンクの傘を買ってしまって。
良かったら使ってよ、成宮さん。」
普通、間違えないよね。
と思ったが、黙って考えてみた。
ずぶ濡れで帰るか、借りて濡れずに済むか。
…できれば濡れたくないのである。
「…借りてもいいかな?」
「うん、いいよ。」
朝丸くんのピンクの傘を受け取った。
朝丸くんって意外と優しい人だな。
顔は整ってるし、高身長。
成績もいいし。
確か水泳部の部長だったはず。
彼女いるのかな。
私は急に、朝丸くんを意識し始めた。
「あのさ、朝丸くんって彼女いるの?」
突然だけど、聞いてみた。
「いないよ。成宮さんは彼氏いるの?」
朝丸くんはじっと見つめて聞いてきた。
「いないよ。」
私がそう言うと、朝丸くんはガッツポーズした。
「俺さ、成宮さんが好きなんだよね。」
…は?今なんて?
「だから、俺と付き合ってくれない?」
ん?何でそうなる?
「え?私と…朝丸くんが?」
「うん」
ちょっと待って。
展開が早すぎて、ついていけない。
「俺、ずっと前から、成宮さんのことが好きなんだよ。」
突然の告白。
びっくりして、土砂降りなんかどうでもよくなった。
私は朝丸くんを好きなのかな。
分からない。
「…ありがとう。
でも、もう少し考えさせてくれないかな。」
私はそう言うと、朝丸くんは、少し寂しそうに笑った。
「冗談じゃないから。
俺、成宮さんが好きだから。」
朝丸くんはまっすぐ私を見て言った。
嘘はついてないって分かる。
だから余計に、顔が赤くなってしまう。
土砂降りの日、ピンクの傘。
告白されて、一緒に帰って。
いつもどおりとは違う。
あの種のおかげかな。
いや、まさか。
最寄りの駅にできた、新しいカフェ。
今日も来客を待っている。
私と彼をつないだ店。
いつかまたそのうち、行こうかな。
今日もいい天気だな、と思う。
カーテンを開けて、窓の外を見る。
玄関の前で、いつもどおりイケメン二人がまだかと待ってくれている。
…訳もなく。
あ、そろそろ学校行かなきゃ。
私は現役女子高生。
イケメンとの学園ライフを夢見ていた。
だがしかし、イケメンのほとんどが彼女持ち。
地味で特技もない私には、彼氏どころか普通に話せる友達もあまりいない。
だから、諦めていた。
あの種を拾うまでは。
学校の帰り道、最寄りの駅で怪しい人を見つけた。
小さなカゴを持っている。
カゴの中には、植物の種とお店のパンフレットが入っていた。
新しい店の宣伝をしているらしい。
何のお店だろう。
駅で宣伝なんて…、世の中大変だな…。
「良かったら、お店に来てください。」
怪しい人は、私にパンフレットを渡してきた。
植物の種もついている。
怪しい人の顔をじっと見つめた。
優しい笑顔で言われて、見とれてしまう。
身長が高くて、顔が整っている。
きっちりしたスーツ姿、ピカピカの靴。
これが、一目惚れっていうのかな。
私は怪しい人を一瞬で好きになった。
「…はい。」
パンフレットの内容は…。
愛の種。
愛される人になるおまじない効果がある。
花を咲かせると、願いがかなうかも?
ラブシードカフェ、近日オープン。
植物で癒されながら美味しいコーヒーはいかが?
という内容だった。
いつもなら、愛の種なんて…嘘っぽい。
と言うと思う。
だが、今日は違う。
怪しい人を信用して植えてみようと思った。
そして、次の日。
何故か花が咲いていた。
芽がでる、蕾ができるっていう過程はないのか。
いつもどおりじゃない事が起きた。
面白いから、そのまま植物を部屋に飾ることにした。
「行って来まーす」
私は今日もいつもどおり学校に行った。
いつもどおり自分の席についた。
そして授業が終わった。
ドキドキ恋愛学園ライフが…始まらないんかい。
効果ないんかい。
全然、期待なんかしてなかったはずだけど。
これはこれで寂しい。
放課後になって、急に雨が降り出した。
土砂降りの雨。
傘忘れちゃった。
最悪だ。
教室でしばらく雨やみを待とうかな。
「…さん……成宮さん!」
急に呼ばれた。
「…何?」
私は不機嫌に返事をする。
「お願いがあるんだけど…。」
そう言って話しかけてきたのは、隣の席にいる、クラスメイトの朝丸くん。
「…お願いって何?」
私は少し落ち着いて返事をした。
「成宮さん、この傘使ってくれない?」
と言って、かわいいピンクの折りたたみ傘を渡してきた。
「…かわいい傘だけど、遠慮しとくよ。朝丸くんが濡れちゃうでしょ。」
私は、そう言って突き返した。
「頼むっ!
それに、俺は傘を持っているんだ。」
そう言ってまた、傘を渡してきた。
傘貸してくれるのはありがたいけど…。
朝丸くんに借りるのは気が引ける。
「どうして私に?」
「成宮さん、今日傘忘れてたでしょ。」
朝丸くんは、私が傘を忘れていることを知っていた。
何だかドキッとした。
「え…知ってたの?」
「…ん?、知らないよ。
本当に忘れてたの?」
知らんのかい。
とツッコミしたくなったけど、何とか堪えた。
朝丸くんは笑って言った。
「実は昨日、間違えてピンクの傘を買ってしまって。
良かったら使ってよ、成宮さん。」
普通、間違えないよね。
と思ったが、黙って考えてみた。
ずぶ濡れで帰るか、借りて濡れずに済むか。
…できれば濡れたくないのである。
「…借りてもいいかな?」
「うん、いいよ。」
朝丸くんのピンクの傘を受け取った。
朝丸くんって意外と優しい人だな。
顔は整ってるし、高身長。
成績もいいし。
確か水泳部の部長だったはず。
彼女いるのかな。
私は急に、朝丸くんを意識し始めた。
「あのさ、朝丸くんって彼女いるの?」
突然だけど、聞いてみた。
「いないよ。成宮さんは彼氏いるの?」
朝丸くんはじっと見つめて聞いてきた。
「いないよ。」
私がそう言うと、朝丸くんはガッツポーズした。
「俺さ、成宮さんが好きなんだよね。」
…は?今なんて?
「だから、俺と付き合ってくれない?」
ん?何でそうなる?
「え?私と…朝丸くんが?」
「うん」
ちょっと待って。
展開が早すぎて、ついていけない。
「俺、ずっと前から、成宮さんのことが好きなんだよ。」
突然の告白。
びっくりして、土砂降りなんかどうでもよくなった。
私は朝丸くんを好きなのかな。
分からない。
「…ありがとう。
でも、もう少し考えさせてくれないかな。」
私はそう言うと、朝丸くんは、少し寂しそうに笑った。
「冗談じゃないから。
俺、成宮さんが好きだから。」
朝丸くんはまっすぐ私を見て言った。
嘘はついてないって分かる。
だから余計に、顔が赤くなってしまう。
土砂降りの日、ピンクの傘。
告白されて、一緒に帰って。
いつもどおりとは違う。
あの種のおかげかな。
いや、まさか。
最寄りの駅にできた、新しいカフェ。
今日も来客を待っている。
私と彼をつないだ店。
いつかまたそのうち、行こうかな。
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