断罪のアベル

都沢むくどり

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満月の章 ダリアの黙示録

Stigma/権能羽化 7

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「っあっ………………………………………?」

 頭に残る靄が徐々に晴れていく。

「頭痛がひどいな………………………」

 ズキズキと痛みだす頭部。

 それと鮮明に蘇る夢。

 間違いない。

 これはあの箱庭の影響だ。

 「うぅっ……………………」

 ひとまずカレンと合流しようか。


 部屋を出てカレン達の所まで向かうと、ドアの前でカエデさんが立っていた。

「おはよう……………ございます」

「カレン様はひどい頭痛にうなされてまだ眠っておられる。その顔を見る限りお前もか?」

「えぇ」

「まさか、移したのではないだろうな!」

「そんなことないと思いますよ、慣れない気候と環境、疲れでは?」

 どうやらカレンも同じ症状に苦しんでいるらしい。

「さて、どうだかな…………………」

 疑いの眼差しを向けられた。

「ともかく、ここからヴァリエロンへ向かうのはカレン様の体調次第だ。今日はここで滞在する事になったから、お前もさっさと治せ」

 仕方無い。もう一眠りするか。





 昼下がりまで寝たことで幾分か頭痛も治まった。

 そこで現在の戦力、物資の状況を確認する。

 ノスタルジア一行の戦力は遊撃隊以下、はっきり言って田舎の農村の警備並だ。

 クラリーチェ、カレンはともかく、俺やカエデさんは戦力にならない。

 鎌を使えば戦力に入るかもしれないが、本能的になぜか人前で使うのを躊躇ってしまう。

 俺は違うと否定したいが、パンドラがこの鎌を使用した以上、どうしてもダリア教団との接点が薄っすらと浮かび上がってしまった。

 あいつは技法を使えないと言っていたが、どちらにせよ使役者に変わりはない。

 それと、戦いで意識を失った俺の記憶が正しければ、既にあの段階で代償をほぼ全て使い果たしている。

 今の俺は戦力として数える事が不可能だ。

 さて、そこで昨日の夢が蘇る。

 カレンが喉元から出した液状の槍を見たところ、ノアの推測と俺の私見で罪の能力と断定できよう。

 名前までは把握できなかったが、首元の刻印、パンドラとは性質が異なるものの異能な力の気配が相対しただけで分かったからだ。

 そして、やたら罪と言う言葉を反芻する等。

「問題は、代償が何なのかだよなぁ」

 俺は血、パンドラは魂と死体。

 力を用いるには必ず代償が必要だ。

 液状の何か。

 はて、一体何が力の源なのか検討もつかない。

 涙が一案として浮かぶが、今までの代償と比べると軽さすぎる気がする。

 ではその涙を出す負の感情だろうか?

 憤り、悲しみ、憎しみ。

 もしかしたら膨大な負の精神を擦り減らして発動するものかも知れない。

 技法を見ていないので何とも言えないが。

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※後付け設定ですが、技法を発動させる為に媒介とする断罪ノ鎌や大罪ノ棺が権能となります。
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