断罪のアベル

都沢むくどり

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新月の章 鮮血ヲ喰ライシ断罪ノ鎌

契約労働者アベル その6!

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 痛い。気が付くと体が痛い。

 何があったんだ?

 俺は…………………。

 起きようと目を開けると、森の入り口で倒れていた。

「痛ってぇ………………」

 左腕を使って立とうとするが、だらんとして力が入らない。

 起きたてでなかなか働かない脳みそを回転させてようやく思い出した。

 さっきまで死闘を繰り広げていた事を。

 でも意識が途切れる前のあの状況でなぜ俺は生き残ってる? どう考えても死を免れる事は不可能だ。

 怖いけど一回戻ってみようかな。

 本当は納品予定だったエイドマッシュルームを二つ取り出す。

 傷を癒すのと、自然治癒能力を増加させると昔から言われているのでこの際仕方ない、食べよう。

 通常、つぶした後他の材料と混ぜ合わせて作るのだがあいにくと、他の材料が無いのと、作り方を知らないので生食でいってみた。

 その味の感想は…………

「苦い」

 薬として売り出すときは、液状で変な甘さがある代物だが、砂糖か何か入れてごまかしているんだろう。

 ものすごい苦いし、外の肉が硬い。ようやく帽子部分のてっぺんを食い破ると、さらに苦いエキスが中から飛び出てきた。

 これが薬に使う部分かな。

 どうにか食い終わると口の中がものすごい気持ち悪い。

 粉薬を大量に張り付けた感覚に近いかもしれない。

 水が欲しいが一度戻らないと飲めないのがとても残念だ。

 しかし今はそれよりも優先すべきことがあるのであきらめた。

 どうにか右腕を使い、立つ。

 ふらふらしているが、どうにか歩けそうだ。

 これは思い込みだろうが、体がさっきよりも軽く感じる。

 さすがにすぐ効果がでるとも思えないけどなぁ。

 そう思いながら、ゆっくりとさっきの場所まで歩く。




 ?

「は?」

 思ったことを口に出すぐらいおかしかった。

 死体が一面に転がっている。

 それだけでも十分異常だがなにより、死闘を繰り広げ、大量の血が地面や木々、死体に降り注いだのに、まったくその痕跡が見当たらない事だ。

 牛刀で殺した死体を見つけて、調べてみたが、これも不自然。

 まるで生気を吸い取られたように、しわがれている。

 水分を失った肌。痩せこけた体。目も無くなってる。

 一番奥で今もなお膝立ちを保ち続けているアニキと呼ばれていた死体も同様だった。

 首元から溢れていたあの血の行き先には何も残されていない。

 よく観察すると、それは全ての死体の共通項。

 おそらく、俺が痛みで意識を手放していたあのあと、誰かが助けてくれたか、ただ盗賊を殺戮してて、倒れ伏して気絶していた俺に気づかなかったのだろう。

 盗賊を殺してくれたのは感謝する。だが、これは素直に喜べない。

 やり方が残虐すぎる。

 これは魔術なのか? 頭の中で過去に学んだ知識を思い出すが、どれにも当てはまらない。

 魔術以外の何か。思いつくのは呪術だ。

 呪術はマナを使う事もあるが、マナを使わない術があるらしい。

 必要なのは生贄と、以前道を歩いていた時にすれ違いで盗み聞きしたことだがそれが本当なら納得がいく。

 もう少し調べたかったが、気絶していた時間が長かったため、日が暮れ始める。

 夜の森は人間にとって脅威である。

 野生の動物が徘徊しだすからだ。

 今日は帰ることにした。

 もちろん、めぼしい物を漁ってから。
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