断罪のアベル

都沢むくどり

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新月の章 鮮血ヲ喰ライシ断罪ノ鎌

鮮血ヲ食ライシ断罪ノ鎌 5

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 全てが片付いた。

 罪有る者、それに連なる者は罰した。

 断罪の時間も終わり、魔犬の体が溶けていく。

 赤い液体は粉となって空へ飛び立つ。

 血の沼からは犬が出てきた。

 その内目を覚ますだろう。

 俺は鎌を解除しようと視線をずらすと、生き残りがいた。

 。バトルドレスを着けた、少々あどけなさが残る金髪の少女。

 不思議だ。何故か彼女を見ていると体が震える。

 何よりも俺が、鎌が、その血を欲している。

 しかし、彼女に罪はあるのか。

 すると心の奥底へ暗黒の雫が滴り落ちる。

 良く見ろ。あの服を。

 貴族ではないか。なら、彼女は何かしらの罪を背負っているはずだ。

(断罪せよ)

 気づくと彼女の目の前に立っている。

(断罪せよ)

 左手が俺の意思とは関係無く鎌を掲げる。

(断罪せよ)

 これは、俺? それとも鎌の意思なのか。

(断罪せよ)

 どこからともなく、断罪せよ、断罪せよと木霊する。

 その声を聞くたびに、闇が深まる。

「断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ…………断罪せよ……………………」

 いや、オレだ。

 オレの意思だ。迷うことはない。

 その哀れな少女を糧に、この先の苦難に立ち向かうのだ。

 

 オレは鎌を降り下ろす。

 が、妨害された。



 世界が、オレが、硬直する。

 白い世界、停止した歯車。そして、

「邪魔をするな…………!!!」

「やっぱり断罪の力に心を飲まれていますね……………………」

 聖女が悲しむようにオレを見つめる。

「目の前の彼女には何の罪も無いでしょう? あなたはその鎌に思考を誘導された。目を覚ましなさい」

 いつの間にか両膝、両肘に白い釘が打ち込まれている。原理は不明だが血は出ていない。

「相変わらず忌々しい力だな…………」

「それはお互い様でしょう? それに、契約に賛同したのはアベルであって、その鎌に洗脳された貴方ではない」

 聖女は指を鳴らす。

 すると、オレの意識は遠退いていく。

「チッ……………………」

「あなたはアベルであってアベルではない。私もかつての聖女であって今の聖女ではない。ウフフフフフッ。この先の試練。アベル、あなたはどう乗り切るか。想定外の行動に出ることを楽しみにしていますよ」

 聖女がオレを優しく抱く。

 オレはその温もりに意識を手放した。
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