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上弦の章 帝国内乱
カレンの心境
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私は大切な思い出を壊された。村の人は全滅、生き残った村人は一人もいない。
目を瞑るくらいの惨状を目の当たりにした私は生死をかけた戦いの緊張が解けたせいか、気絶しているアベルとクラリーチェの近くでげぇげぇと吐瀉した。
あぁ、なんでこんなに不幸は立て続けに起こるんだろう?
そう自分に問いかけてしまう。
お父様に憧れて、同じくお父様の様な人になろうと頑張っていた姉さんの背中を追いかけて魔術や剣術等の鍛練をして、村の人達から元気を貰って………。
お父様は何者かに殺され、姉さんは行方を眩まして、リトラル村と他の二つの村の人達は皆殺しとなった。
私は思い出を壊された。
一度、二度ならず三度までも。
尊敬、目標となる人物はいなくなり、私が当主代理として守るべき人もほぼ消えてしまった。
私の心はあの時の業火とは対照で静寂に満たされている。
冷静ではなく、魂を抜かれたのではと言いたくなる感覚。
でもアベルを見た瞬間、私は立ち上がった。
やるべきことを見つけたからだ。
思い出を壊された私にもまだひとつだけあることを忘れてはいけない。
目の前のアベルだ。
出会ってまだ1ヶ月すら経っていないとても短い期間。
心が傷ついた私にとって短いようで癒された時間だった。
お母様は色々私に気遣ってはくれたけど、むしろ私を苦しめた。
縁談、縁談、縁談…………。
お母様の頭のなかでは娘を速く幸せにするには不自由無い所に嫁がせるのが一番だと考えていたのだと思う。
けれどアベルの方はどうだろうか?
彼は決して私の心の奥まで踏み入ってこない。
思い出は人それぞれ、それを他の人がズカズカと入ってはいけないと彼は言った。
アベルがあのとき私に放った言葉は、私に向けてというより大切な妹さんへの懺悔に近い告白だった。
少なくとも決して私の為ではない、とアベルは思っているはずだ。
でもね、アベル。
あなたは私を救った。綺麗なままでいてほしいと言いながら、現実に立ち直らせてくれた……………………。
それにはとても感謝してる。
ただ、あなたにとっては悪い知らせもあるかも。
私は懐に仕舞った短い鞘を取り出す。
柄の部分に女性が刻印された短刀だ。
お父様が内臓をえぐり出されて無惨に殺された時に近くに置いてあった物。
生前、まだ姉さんがいた頃、お父様がどこかへ遠征する前に聞かされたことがある。場所は言ってくれなかったけれど。
「カレン、この刻印には気を付けろ。ある邪教の象徴だ」
今までどうして忘れてたんだろう。
アベル、あなたに原動力を貰った私は、もしかしたら道を外れてしまうかもしれない。
この短刀でお父様の仇を討ちたい。
お父様がされたように、同じ目に遭ってほしい。
その感情が私を動かす。
けれど、私が道を踏み違えそうになったとき、あなたに止めてほしい。
こんなこと、あなたには言わないけれど。
🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓
「んぅ…………」
眠りから目覚める。
「カレン様、眠れないのですか?」
「ちょっとね……………」
「お顔色が優れないようですが、今お茶をお入れしましょうか?」
「いいわよ、今あの紅茶を飲んだら眠れないじゃない」
濃すぎるあのお茶は私の目を覚醒させる。
カエデはあれを飲んでも何ともないのが不思議だ。
「やはりその…………………思い出してしまいましたか」
「………………………」
「これは申し訳ございません! とんだ失言を!」
「謝ることはないわ…………………。ちょっと星を見てくるから」
「あ、カレン様!!!」
私は寝床を抜け出し、星を見ようと這いだした。
「あれ…………?」
アベルがいるはずの簡易寝床が開いており、中に彼はいなかった。
ふと、遠くから悲鳴の様な甲高い音が鳴り響く。
「アベル?」
無意識に彼の名を呼んでいたが、距離的には届かない。
「カレン様………………今の音は?」
「女の子の悲鳴……………かしら? そうだとすれば助けないと、様子を見に行くわよ!」
「はっ!」
私とカエデは武装して音源と思わしき場所まで駆けていった。
★★★★★★★★★★★★★★
※本業が忙しく、また、別に新連載企画の短編の構想を練っていたので本編の執筆が遅くなってしまいました。
短編についてですが、もしかしたら近日発表するかもしれません。
世界観は本作と繋がりがあるかも?(構想段階なので約束はできません)
目を瞑るくらいの惨状を目の当たりにした私は生死をかけた戦いの緊張が解けたせいか、気絶しているアベルとクラリーチェの近くでげぇげぇと吐瀉した。
あぁ、なんでこんなに不幸は立て続けに起こるんだろう?
そう自分に問いかけてしまう。
お父様に憧れて、同じくお父様の様な人になろうと頑張っていた姉さんの背中を追いかけて魔術や剣術等の鍛練をして、村の人達から元気を貰って………。
お父様は何者かに殺され、姉さんは行方を眩まして、リトラル村と他の二つの村の人達は皆殺しとなった。
私は思い出を壊された。
一度、二度ならず三度までも。
尊敬、目標となる人物はいなくなり、私が当主代理として守るべき人もほぼ消えてしまった。
私の心はあの時の業火とは対照で静寂に満たされている。
冷静ではなく、魂を抜かれたのではと言いたくなる感覚。
でもアベルを見た瞬間、私は立ち上がった。
やるべきことを見つけたからだ。
思い出を壊された私にもまだひとつだけあることを忘れてはいけない。
目の前のアベルだ。
出会ってまだ1ヶ月すら経っていないとても短い期間。
心が傷ついた私にとって短いようで癒された時間だった。
お母様は色々私に気遣ってはくれたけど、むしろ私を苦しめた。
縁談、縁談、縁談…………。
お母様の頭のなかでは娘を速く幸せにするには不自由無い所に嫁がせるのが一番だと考えていたのだと思う。
けれどアベルの方はどうだろうか?
彼は決して私の心の奥まで踏み入ってこない。
思い出は人それぞれ、それを他の人がズカズカと入ってはいけないと彼は言った。
アベルがあのとき私に放った言葉は、私に向けてというより大切な妹さんへの懺悔に近い告白だった。
少なくとも決して私の為ではない、とアベルは思っているはずだ。
でもね、アベル。
あなたは私を救った。綺麗なままでいてほしいと言いながら、現実に立ち直らせてくれた……………………。
それにはとても感謝してる。
ただ、あなたにとっては悪い知らせもあるかも。
私は懐に仕舞った短い鞘を取り出す。
柄の部分に女性が刻印された短刀だ。
お父様が内臓をえぐり出されて無惨に殺された時に近くに置いてあった物。
生前、まだ姉さんがいた頃、お父様がどこかへ遠征する前に聞かされたことがある。場所は言ってくれなかったけれど。
「カレン、この刻印には気を付けろ。ある邪教の象徴だ」
今までどうして忘れてたんだろう。
アベル、あなたに原動力を貰った私は、もしかしたら道を外れてしまうかもしれない。
この短刀でお父様の仇を討ちたい。
お父様がされたように、同じ目に遭ってほしい。
その感情が私を動かす。
けれど、私が道を踏み違えそうになったとき、あなたに止めてほしい。
こんなこと、あなたには言わないけれど。
🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓
「んぅ…………」
眠りから目覚める。
「カレン様、眠れないのですか?」
「ちょっとね……………」
「お顔色が優れないようですが、今お茶をお入れしましょうか?」
「いいわよ、今あの紅茶を飲んだら眠れないじゃない」
濃すぎるあのお茶は私の目を覚醒させる。
カエデはあれを飲んでも何ともないのが不思議だ。
「やはりその…………………思い出してしまいましたか」
「………………………」
「これは申し訳ございません! とんだ失言を!」
「謝ることはないわ…………………。ちょっと星を見てくるから」
「あ、カレン様!!!」
私は寝床を抜け出し、星を見ようと這いだした。
「あれ…………?」
アベルがいるはずの簡易寝床が開いており、中に彼はいなかった。
ふと、遠くから悲鳴の様な甲高い音が鳴り響く。
「アベル?」
無意識に彼の名を呼んでいたが、距離的には届かない。
「カレン様………………今の音は?」
「女の子の悲鳴……………かしら? そうだとすれば助けないと、様子を見に行くわよ!」
「はっ!」
私とカエデは武装して音源と思わしき場所まで駆けていった。
★★★★★★★★★★★★★★
※本業が忙しく、また、別に新連載企画の短編の構想を練っていたので本編の執筆が遅くなってしまいました。
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