断罪のアベル

都沢むくどり

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上弦の章 帝国内乱

プロローグ

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 新月の季節は終わりを迎え、陽が昇る。

 暦が変わったことで、陽が沈むと、この世界では一般的な紅月と聖月が昇る。

 紅月は右半分、聖月は満月として、夜空に君臨し、世界を見下ろす。

 静かなる刻のなかで突如、世界の一部で火の手が上がった。

 月はただ静かに、それを見守る。

 月に意思はない。

 だが、もし意思を持っていたらこういうだろう。

 なんと愚かな生き物だ、と。

 火の手とはすなわち、人間の争いである。

 どんなに過ちを犯し、それを知っていて反省し、法や戒めを整えた後世でも、何かの切っ掛けで必ず起こる、愚かな争い。

 自我を持った生き物の、どうしようもない欲が招いた産物。



 支配には抵抗を。



 弾圧には反乱を。



 制裁には暴力を。



 欲求には簒奪を。


 今もなお、大陸の最大領土を誇るあの国でさえ、争いの火種をどうにか押さえる始末。

 その一つが動き出したのだ。



 そんななか、ただ見下ろすだけの月に対し、逆に見上げる者がいた。

 月を見上げ、紫色の服を着た少女。

 その表情には笑顔が

 ルン、ルン、ルン♪ と陽気な鼻歌を歌いつつ、

「だからこそアタシらがいるんだよ♪ 罪には罰を、腐敗には浄化を♪ の教えを理解しないクズには、神の裁きを♪ キャハッ♪」

  ルン、ルン、ルン♪

 座っていた台からよいしょっ、と降りて手を前に組み、月に祈りを捧げる。

「ねぇ、? 生きてるんでしょう? 君の鎌の気配が、この腐った国からプンプンするよ♪」

 先程まで座っていた台が、ボロボロと崩れ落ちる。

「死んでたらアタシが蘇生できるはずだもん♪」

 崩れた台から白い棒が出てくる。

 その台は、人間の骸で出来ていた。
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