断罪のアベル

都沢むくどり

文字の大きさ
102 / 190
新月の章 鮮血ヲ喰ライシ断罪ノ鎌

閑話 とある詩人の創作日記 玖

しおりを挟む
 かすかに聞こえる誰かの声。

 死に行くはずの死に損ない。

 一振りの巨大な鎌が出現し、死ぬはずだった者はこう呟く。

「さぁ始めよう、断罪の時間だ」、と。

 それから私は羽ペンで戦いの速さに目を奪われながらも必死に書き留める。

 途絶えることの無い断末魔、凶暴な魔獣。

 考える暇など無い。

 書いて書いて書きまくる。

 悠長に出来ないので、速記術で頑張った。

「貴様ァァァァァァァァァァァァ!!」

 断末魔を合図にいつの間にか貴族も息絶えた。

 そして鎌を使う者が移動しようとした瞬間で目を何かに遮られて、

「ここから先は、駄目ですよ」

 と、耳元で優しい声が囁かれる。

 あ…………れ…………?

 声音と共に私の意識は途切れた。





 目が覚めると、私は馬の上にいた。

「やっと起きたかぁ」

 ここは?

「帝都までもう少しだ、踏ん張れよぉ」

 と馬は目配せする。

「焼けた中奇跡的にあんたは燃えてなかったんだ。とりあえず詩は書けたかい?」

 あぁ。最高の詩がな。

「もう無茶すんなよお、仮の御主人とは言え死なれりゃ胸くそ悪いからな」

 それは無理だ。

「言うと思ったぜ」

 馬は歩を進めた。

 既に遥か向こうには山の上にそびえ立つ城が、はっきりと見えるくらいまでだった。

 私は使命を全うし、今をこうして生きている。

 そしてこの馬とも無事生還できた。

 自然と涙が溢れている。

「おうおう、もうすぐお別れだけど、そんな泣く事はねぇ。出会いと別れは常にある」

 だから私は決めた。

 こいつと一緒にいれば最高の詩を作る事が出来るかもしれない。

 良いパートナーを見つけたぞ。

 おい、親愛なる私の馬よ。

「? なんだよ? いきなり口調を変えて?」

 私はお前を商会から買い取る。

「……………………は?」

 私の創作は、ここから始まる。




○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 速足気味ですが、ひとまずこれで詩人のストーリーは切ります。

 実はこれから本編にも重要な所で出そうと思ってます。

 最後に、詩人の作った詩は本編中に登場します。

 特にこの詩は物語を表す重要な物なので上弦の章にてご覧頂ければと思ってます。

 次からいよいよ次の章です。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...