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上弦の章 帝国内乱
お楽しみは外的要因によって奪われる 1
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ようやくだ。
俺はようやく妹の顔を拝むことができる。
帝国が発表した襲名式の予定は今日。
俺は既にその場所に来ていた。
「次の当主は女らしいな」
「どのみちあのヴァルト家だ。恐ろしいだろ」
「いや、案外可愛いかもしれないだろ。俺はそっちにかけるぜ」
俺だけでなく、新しい当主を見たい人で溢れている。
特にヴァルト家の歴史で女が当主になったのは初代ガウェイン・ヴァルトから続く66代の系譜の内ソフィーが2人目。
無論、家単位なら女もいるが、一族となると話は違う。
女っ気が少ないのもソフィーを際立たせる要因の一つだろう。
そして周りはまだ認知していないが、俺の記憶通り今もそのままの姿なら、ソフィーは無愛想ながらとても愛らしい。
美しいと言われるだろうが、俺からすれば可愛い印象だ。
普段なら王族が手を振る場所にまだかまだかと皆が注目する。
俺もその一人であることには変わりないのだが。
それにしても、何故か本来警備するはずの兵士が少ない気がした。
帝国にとって大きな催しのはずなのに。
すると、甲冑に身を包んだ兵士が羊皮紙を持って、皆が注目する場所に立つ。
遠目からではあるがその手は震えて見え、明らかに様子がおかしかった。
「ヴァルト家当主の襲名式について帝国議会より緊急発表をする」
兵士の大声による発言が、場を一瞬だけ静める。
「は?」
俺は嫌な予感を感じるが、ざわめき出す他の聴衆は無視し、兵士の声だけに集中した。
「ヴァルト家第66代目当主、ソフィー・ヴァルツァー改めソフィー・ヴァルト、止むに止まれぬ事案の発生により、既に帝都より出立! よって襲名式は急遽取り消しとなった! 繰り返す…………」
己の耳を疑った。
ソフィーに会えない?
もしかしたらこの先ずっと?
「どういうことだよ…………………」
俺は無意識の内に冷淡な声を出していた。
周りはそれ以上の喧騒だったのですぐにかき消されたが。
強く握り締めた拳から、血が流れる。
ヴァルトの襲名式は何があってもこれまで一度も欠かさずやって来た。
なのに止むに止まれぬ事情だと!?
「クソがっ……………………!」
俺は小石を蹴飛ばした。
その石は建物の角にぶつかると、別の角度に飛んでいく。
何気なくその石を追いかけると、
世界が白く塗られていき、瞬く間に全てが止まった。
契約の影響か、俺はそのまま白くならず血も赤色だ。
「言った通りでしょう…………?」
「ノアか……………………」
白夜の箱庭の自称管理人、ノアが後ろから俺の左肩に手を置く。
「ノアは預言者なのか?」
「あなたは運命に導かれているのです、契約による力を持ってしても、ね」
俺の質問に対して直接答えが返ることは無かった。
「納得がいかないな」
「卓越した才を持つ者は、生まれたときからその代償として行動が限られる物ですよ。人が才能を操っているのではない」
置かれた手に力が入る。
「実際は暴走した才能に操られるか、才能に反応した周りに未来の可能性を削がれて歩む道は一本に近くなる…………」
俺は置かれていたノアの手を軽くはたき落とした。
「違う、先の事は自分で切り開く。それが俺の信念だ」
「本当に変わりませんね、アベルは」
何がおかしいのか、彼女は笑う。
「アベルのそういう所、私は嫌いじゃないんですけどね…………」
その顔は酷く歪んでいて、
「そんなあなたが好きなのに…………」
一筋の涙が両瞳から流れた。
「憎い矛盾に駆られる……………………」
🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓
※あと3、4話くらいで物語は大きく転換します。
俺はようやく妹の顔を拝むことができる。
帝国が発表した襲名式の予定は今日。
俺は既にその場所に来ていた。
「次の当主は女らしいな」
「どのみちあのヴァルト家だ。恐ろしいだろ」
「いや、案外可愛いかもしれないだろ。俺はそっちにかけるぜ」
俺だけでなく、新しい当主を見たい人で溢れている。
特にヴァルト家の歴史で女が当主になったのは初代ガウェイン・ヴァルトから続く66代の系譜の内ソフィーが2人目。
無論、家単位なら女もいるが、一族となると話は違う。
女っ気が少ないのもソフィーを際立たせる要因の一つだろう。
そして周りはまだ認知していないが、俺の記憶通り今もそのままの姿なら、ソフィーは無愛想ながらとても愛らしい。
美しいと言われるだろうが、俺からすれば可愛い印象だ。
普段なら王族が手を振る場所にまだかまだかと皆が注目する。
俺もその一人であることには変わりないのだが。
それにしても、何故か本来警備するはずの兵士が少ない気がした。
帝国にとって大きな催しのはずなのに。
すると、甲冑に身を包んだ兵士が羊皮紙を持って、皆が注目する場所に立つ。
遠目からではあるがその手は震えて見え、明らかに様子がおかしかった。
「ヴァルト家当主の襲名式について帝国議会より緊急発表をする」
兵士の大声による発言が、場を一瞬だけ静める。
「は?」
俺は嫌な予感を感じるが、ざわめき出す他の聴衆は無視し、兵士の声だけに集中した。
「ヴァルト家第66代目当主、ソフィー・ヴァルツァー改めソフィー・ヴァルト、止むに止まれぬ事案の発生により、既に帝都より出立! よって襲名式は急遽取り消しとなった! 繰り返す…………」
己の耳を疑った。
ソフィーに会えない?
もしかしたらこの先ずっと?
「どういうことだよ…………………」
俺は無意識の内に冷淡な声を出していた。
周りはそれ以上の喧騒だったのですぐにかき消されたが。
強く握り締めた拳から、血が流れる。
ヴァルトの襲名式は何があってもこれまで一度も欠かさずやって来た。
なのに止むに止まれぬ事情だと!?
「クソがっ……………………!」
俺は小石を蹴飛ばした。
その石は建物の角にぶつかると、別の角度に飛んでいく。
何気なくその石を追いかけると、
世界が白く塗られていき、瞬く間に全てが止まった。
契約の影響か、俺はそのまま白くならず血も赤色だ。
「言った通りでしょう…………?」
「ノアか……………………」
白夜の箱庭の自称管理人、ノアが後ろから俺の左肩に手を置く。
「ノアは預言者なのか?」
「あなたは運命に導かれているのです、契約による力を持ってしても、ね」
俺の質問に対して直接答えが返ることは無かった。
「納得がいかないな」
「卓越した才を持つ者は、生まれたときからその代償として行動が限られる物ですよ。人が才能を操っているのではない」
置かれた手に力が入る。
「実際は暴走した才能に操られるか、才能に反応した周りに未来の可能性を削がれて歩む道は一本に近くなる…………」
俺は置かれていたノアの手を軽くはたき落とした。
「違う、先の事は自分で切り開く。それが俺の信念だ」
「本当に変わりませんね、アベルは」
何がおかしいのか、彼女は笑う。
「アベルのそういう所、私は嫌いじゃないんですけどね…………」
その顔は酷く歪んでいて、
「そんなあなたが好きなのに…………」
一筋の涙が両瞳から流れた。
「憎い矛盾に駆られる……………………」
🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓
※あと3、4話くらいで物語は大きく転換します。
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