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上弦の章 帝国内乱
いざ、東へ!
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「…………あなたの言動って急すぎないかしら? 失礼な言い方かもしれないけど本能的直感に頼る人生でしょ?」
「素直に考え方が動物みたいって言ったらどうだ? そもそも、人手が増えたんだから喜ぶべきだろう」
「それは、まぁそうだけど…………」
俺達は帝都を出発し、既に東へ馬を進めていた。
俺は襲名式中止が分かってからすぐさまカレンに従士になると詰め寄り、叙任を受けている。
あまりに唐突すぎたので、カレンも大分焦っていた。
カエデさんに限っては近づくなと警告した男が、ノスタルジア家に土足で踏み込んだような状況なので、随分俺を憎んでいる。
正直騎士になる気持ちは無いが、一人でヴァリエロンに行くより速く、安全な選択であるカレンの誘いに乗ってしまった。
前回の様に強行軍は無いにせよ、ヴァリエロンと言ったら帝都から早くてもおよそ一月かかる立地。
今回のカレン御一行はカレン、俺、
「クゥン」
クラリーチェ。
そして、
「カレン様、この方と話すことは多々ありますが、私もこの方の思考は知性の無い動物みたいだと思っております」
…………カエデさん。
ちなみに今のは小声だ。
さらっと知性の無いとか入れてるのはひどい。
「ちょっとカエデ! 彼はずる賢いけど頭は良いわよ、失礼でしょ。聞こえたらどうするの」
「失礼なのは向こうです! 仕える者の礼儀を知らず、あろうことかカレン様への言葉遣いすら正さない無礼者ですよ!」
「それ、堅苦しい言葉が嫌だから私が引き続き許可したんだけど…………」
「カレン様! いくらなんでもそれはいけませんよ!! 命の恩人でも限度があります!!!」
全て囁きあってる会話だが、何もかも俺の耳に筒抜けだった。
気まずい。
まぁ、目上の人に対して対等の言葉を使う俺に無礼だと言うカエデさんは正しい。
場合によってはそれだけで処刑も考えられるからだ。
分類で言うと不敬罪に値する。
ちなみにやろうと思えば平民に対して官僚、騎士が不敬罪だと叫べばある程度の確率でそうなるのがこの国の現状だ。
彼らもそこまで何度もすることは無いだろうが。
「……………………」
「ねぇ、カエデ。旅装束で行きましょうって何回も言ったのに、何でメイド服なの?」
「そんなの決まってます! 何時、如何なる時もカレン様のお世話は私の役目。その誓いからです!!」
さて、俺はずっとこの先の事を考える。
我らノスタルジア家御一行様は、これからリトラル村跡周辺まで走らせ、一夜を明かす。
カレンは打ち合わせの段階で沈黙してしまったが、ヴァリエロンへ最短で行くには避けて通ることが出来ない。
と、言うのも他の貴族が保有している村に入るのは色々と厄介だからだ。
なので、保存できる食料、水分の運搬は俺の馬と引っ張っている荷物運搬専用の馬が役割となったのだが、
「固く焼いた黒パン、保存を利かせるために水で薄めたワイン、塩漬けの乾燥牛肉と……………………これは何だ?」
棒状で真ん中に穴が開いた何かの物体。
これは…………、
「チクワです」
「チワワ?」
「チクワですっ!!」
チクワ? アズマ語か。
残念な事に、俺はベルギウス語しか喋れないので何が何だか。食料という認識でしか理解できなかった。
「カエデ言わく、魚の練り物のことらしいわ。ただ、保存用に塩気が多いからものすごくしょっぱいわよ」
カレンが補足説明をしてくれた。
なるほど、練り物か。
そう話している内に、夕方ごろにはなにも残っていないリトラル村跡が見えてきた。
「…………」
「…………」
カレンとカエデさんが沈黙して立ち止まる。
特にカレンに至っては泣かないようにか拳を握り、歯を食い縛っていた。
俺はそんな二人を尻目に野営の準備を始める。
人はいつか死んでしまう。
そうなったら最後、戻ってくることはない。
ただし、人は2回死ぬ。
1つ目は肉体の死、現世での消滅。
2つ目は死者を知る者の死、世界から忘れ去られて存在認識の消滅。
だから、リトラル村や他の村で亡くなった方々はすぐに忘れられることは無いだろう。
彼らを知るカレンが生き続ける限りは。
「素直に考え方が動物みたいって言ったらどうだ? そもそも、人手が増えたんだから喜ぶべきだろう」
「それは、まぁそうだけど…………」
俺達は帝都を出発し、既に東へ馬を進めていた。
俺は襲名式中止が分かってからすぐさまカレンに従士になると詰め寄り、叙任を受けている。
あまりに唐突すぎたので、カレンも大分焦っていた。
カエデさんに限っては近づくなと警告した男が、ノスタルジア家に土足で踏み込んだような状況なので、随分俺を憎んでいる。
正直騎士になる気持ちは無いが、一人でヴァリエロンに行くより速く、安全な選択であるカレンの誘いに乗ってしまった。
前回の様に強行軍は無いにせよ、ヴァリエロンと言ったら帝都から早くてもおよそ一月かかる立地。
今回のカレン御一行はカレン、俺、
「クゥン」
クラリーチェ。
そして、
「カレン様、この方と話すことは多々ありますが、私もこの方の思考は知性の無い動物みたいだと思っております」
…………カエデさん。
ちなみに今のは小声だ。
さらっと知性の無いとか入れてるのはひどい。
「ちょっとカエデ! 彼はずる賢いけど頭は良いわよ、失礼でしょ。聞こえたらどうするの」
「失礼なのは向こうです! 仕える者の礼儀を知らず、あろうことかカレン様への言葉遣いすら正さない無礼者ですよ!」
「それ、堅苦しい言葉が嫌だから私が引き続き許可したんだけど…………」
「カレン様! いくらなんでもそれはいけませんよ!! 命の恩人でも限度があります!!!」
全て囁きあってる会話だが、何もかも俺の耳に筒抜けだった。
気まずい。
まぁ、目上の人に対して対等の言葉を使う俺に無礼だと言うカエデさんは正しい。
場合によってはそれだけで処刑も考えられるからだ。
分類で言うと不敬罪に値する。
ちなみにやろうと思えば平民に対して官僚、騎士が不敬罪だと叫べばある程度の確率でそうなるのがこの国の現状だ。
彼らもそこまで何度もすることは無いだろうが。
「……………………」
「ねぇ、カエデ。旅装束で行きましょうって何回も言ったのに、何でメイド服なの?」
「そんなの決まってます! 何時、如何なる時もカレン様のお世話は私の役目。その誓いからです!!」
さて、俺はずっとこの先の事を考える。
我らノスタルジア家御一行様は、これからリトラル村跡周辺まで走らせ、一夜を明かす。
カレンは打ち合わせの段階で沈黙してしまったが、ヴァリエロンへ最短で行くには避けて通ることが出来ない。
と、言うのも他の貴族が保有している村に入るのは色々と厄介だからだ。
なので、保存できる食料、水分の運搬は俺の馬と引っ張っている荷物運搬専用の馬が役割となったのだが、
「固く焼いた黒パン、保存を利かせるために水で薄めたワイン、塩漬けの乾燥牛肉と……………………これは何だ?」
棒状で真ん中に穴が開いた何かの物体。
これは…………、
「チクワです」
「チワワ?」
「チクワですっ!!」
チクワ? アズマ語か。
残念な事に、俺はベルギウス語しか喋れないので何が何だか。食料という認識でしか理解できなかった。
「カエデ言わく、魚の練り物のことらしいわ。ただ、保存用に塩気が多いからものすごくしょっぱいわよ」
カレンが補足説明をしてくれた。
なるほど、練り物か。
そう話している内に、夕方ごろにはなにも残っていないリトラル村跡が見えてきた。
「…………」
「…………」
カレンとカエデさんが沈黙して立ち止まる。
特にカレンに至っては泣かないようにか拳を握り、歯を食い縛っていた。
俺はそんな二人を尻目に野営の準備を始める。
人はいつか死んでしまう。
そうなったら最後、戻ってくることはない。
ただし、人は2回死ぬ。
1つ目は肉体の死、現世での消滅。
2つ目は死者を知る者の死、世界から忘れ去られて存在認識の消滅。
だから、リトラル村や他の村で亡くなった方々はすぐに忘れられることは無いだろう。
彼らを知るカレンが生き続ける限りは。
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