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8 恐れるもの
人の世に混じりて
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『とりあえずここは人間界でいいんですかね?』
『そのはず……ですが、人っ子ひとりいませんね』
当然だ。ガブリエルとサリエルは知らないが、彼らが降り立った地は無人島──書いて字のごとく人がいない島なのだ。
『……! サリエルさん、北の方に同胞の気配が』
『ええ、ミカエルだと助かるのですが……向かってみましょうか』
ガブリエルもサリエルも幸い飛べないほどの怪我は負っていない。というよりもガブリエルが治癒している。ふたりは一際強い同胞の気配に向かって無人島から飛び立った。
『……! 奏汰、天使の気配がこちらに近付いている』
ミカエルは彼らの気配をしっかりと感じ取っていた。誰かが自分の気配を感じ取り、ここへ向かっている。誰なのだろう。ラファエルだろうか。ガブリエルだろうか。それとも他の誰かか。
『はぁ……それにしても、青と緑ばかりですね、この世界は』
『ええ、いざ降り立ってみると大きいものですねぇ、この世界は』
土地勘もクソもない場所では天使でも転移魔法を使うことはほぼ不可能に近い。そもそも転移魔法がどんな状況でも使えていれば、ふたりは南の名もない無人島に降り立つことも無かったのだ。
『それにしてもサリエルさん、どうも既にこの世界に悪魔がいるように思えるのですが』
『ですよね、最低でも二体はいますよね。それなのにこの荒れてなさというか、綺麗な状態が続いているのは何なんでしょう……』
そう、ふたりは本当に何も知らない。天界での襲撃に手一杯になり、他の世界や種族の動向を一々気にしていられなかったのだ。何せ目の前で同胞が討たれ、追い詰められ、ふたりのような上位の階級の天使でさえ逃亡せざるを得ない状況だった。地上に降りてきたのも、地上という下界に転移するという大まかという言葉で収めていいようなものではないほど雑な場所指定で、なんとか無理矢理転移魔法を展開してようやっとできたことだ。そのため、今のふたりはひたすらミカエルの気配に向かって自力で飛んでいくしかないのだ。もっとも、ふたりにはその気配がミカエルのものということもわかっていないのだが。
日が沈んでは昇るを四つ繰り返した。気配はもう目と鼻の先だ。今、視界に映る島はここまで来る間に見た島よりもえらく発展している。何か人々にとって重要な都市なのだろうか。そうガブリエルが考えていると、ふっと気配がいきなり近くなった。
『あ……』
『よかった、ガブリエルとサリエルだった』
『『ミカエル……!!』』
目の前に視界をやれば、見慣れない服装のミカエルがそこにいた。ぼろぼろのふたりを見て、ミカエルはよかったと微笑んだ。
『ういは、ふたりはガブリエルとサリエル。身なりを整えるだけでいいから、手伝ってくれないかな』
『もちろんですっ。お風呂お貸ししますね』
何日も戦い抜き、その果てに逃げてここまで辿り着いたふたりの体は、魔法で治療こそされているもののもう汚れていない箇所がなかった。衣服も破れている箇所が多く、修繕よりは買い替えた方が早い状態だった。ファントンはそれを見て、幻で新たにふたりの服を繕い、その様子を見ていたミカエルはファントンの幻に関心を抱いていた。
『幻精霊の王ともなると、幻の顕現も容易いようだね』
『まぁな、オレも伊達に王様やってへんねん。この部屋のもんは大体オレの幻やで』
『! そうなのか……全く気付かなかった』
ガブリエルとサリエルが風呂から上がり、ファントンの幻によって生み出された新品の服を着ると、今までの経緯をういはたちに話してくれた。
「……じゃあ、天界は本当の、本当に」
ういはの言葉にガブリエルとサリエルは静かに頷いた。
『ミカエル、役目を果たせず申し訳ありません』
『我々も自身の命を生かすことで精一杯で……数多の命を見捨てて来てしまいました』
ふたりがミカエルに頭を下げると、ミカエルは首を横に振った。
『そもそも自分が初めに匙を投げたんだ。君たちが謝る必要は何一つない。それよりも、自分が最も逃げてはならなかったのにもかかわらず、皆を置いて逃亡などしてしまったから……』
『『それは違いますッ』』
ミカエルが俯きがちにぼそぼそと呟いていると、ふたりは声を揃えて強く否定した。
『あなたはただ助けを、少しでも我々が生存できる道を確保するために生き延びたに過ぎません』
『それよりも、逃げるわけにはいかないとかなんとか言って真っ向勝負で勝手にひとりで死なれる方が困ります』
『……そう、か。すまない、自分と奴との問題なのに……ふたりは優しいな』
へにゃ、とミカエルが柔らかな微笑みを見せるとガブリエルは目を逸らし、サリエルは「んぐっ」とよくわからない悲鳴のようなものを小さく上げた。
『……あ、あの』
話が一旦落ち着いたと感じたういはは、三人に声をかける。
『その、申し訳ないんですが、わたしとファントンとミカエルさんで今でこの狭い部屋に三人いる状態なんです。で、おふたりを匿いたい気持ちはあるんですけれども、ちょっと部屋の広さと部屋数的にそれが厳しくて……』
そもそも人ひとりと召喚獣一体を想定して貸し出された部屋に三人もいるのだ。そこに二人も加わるとなると流石にキャパオーバーとなる。
『そこで考えたんやけどな。お前ら人に擬態して召喚師になり』
『『え?』』
『ちょうど再来週に中途採用の試験があったはずやから受けてき。お前ら天使やから人間と違うてそれくらい楽勝やろ』
ファントンの突然の提案に、二人はもちろんミカエルも固まっていた。そもそも現代の人語をあまり理解できていないのに? そんな疑問が三人の頭にほぼ同時に浮かび上がる。
『わ、我々天使ですよ? 光魔法を使う人間なんて見た事──』
『ある』
ガブリエルの狼狽にミカエルが答えた。
『いるんだ、ガブリエル。自分も初めて目にしたときは驚いたけどね。我々にルーツを持っているわけではないよ、でも彼女は確かに光の魔力を宿していたんだ』
『やから、お前らが光魔法の使い手の人間や言うてもへぇーめっちゃ珍しいな、程度で終わるで。実際変なルーツ持ってない奴でも光魔法使える奴がここにおるからな』
ファントンはそう言って主人であるういはの肩をぽんと叩く。そして「こいつの兄貴は闇魔法の適正持ちや」とも付け加えた。
何としても今を生き延びなければならない天使たちに選択肢はなかった。ういはから大まかな試験内容を聞き出し、なんとか出願書類を掻き集め、出願を間に合わせた。召喚師が人手不足だからか、出願締切は試験の前日だったことが幸いだった。
「ういはさん」
試験から一週間後、合格通知を受け取ったガブリエルとサリエルがういはのもとに訪れた。
「あ、受かったんですね!」
「ええ、おかげさまで。試験内容は大したことなかったんですが、人語が難しいです」
「現代の人語は我々の生まれた時代のものの影すら感じさせないときが多いですからね」
そう言うふたりだが、二週間で身につけたとは思えないほど流暢に人語を話している。
「それだけ話せたら十分です。それで、おふたりの配属先は?」
「私はミツルギ? さんとやらのもとでお世話になるようです」
「私は別の方のところです」
「御剣ならわたしの旧友なので安心してくださいっ。もう片方の人は……ちょっとわかりませんが」
こうして二人は天使ではなく魔法師から転職したという設定の新人召喚師として、人間界の生活を営むこととなった。だが、サリエルにはひとつだけ疑問が残っていた。
「ミカエルはどうするんです?」
「ファントンが一部の対象に向けて幻に変えて存在させてる状態だから、何か世界に変化があるまではずっと家の居候かなってところです」
「そうですか。……彼に関しては、その方がいいですよね」
「やっぱりミカエルさんは皆さんにとって特別なんですか?」
ういはの問いに、ふたりは勿論だと頷く。
「彼がいたからあのときに我々が滅ぶことはなかった……そう言っても過言ではないと、私は信じています」
「私もサリエルさんと同じです。奴を堕天させる勇気と決断を下せるだけの意志の両方を持っていたのは、あの場では間違いなくミカエルだけでしたから」
ふたりと関わったのはほんの少しだが、それでも彼らのミカエルに対する絶大な信頼はういはにも十分に伝わった。
「……そんなに厚い信頼を持った方を死なせるわけにはいきませんね、ファントンの魔法も万能ではありませんから、わたしも目を光らせておきます。……では、お元気で」
「「ええ、お元気で」」
『そのはず……ですが、人っ子ひとりいませんね』
当然だ。ガブリエルとサリエルは知らないが、彼らが降り立った地は無人島──書いて字のごとく人がいない島なのだ。
『……! サリエルさん、北の方に同胞の気配が』
『ええ、ミカエルだと助かるのですが……向かってみましょうか』
ガブリエルもサリエルも幸い飛べないほどの怪我は負っていない。というよりもガブリエルが治癒している。ふたりは一際強い同胞の気配に向かって無人島から飛び立った。
『……! 奏汰、天使の気配がこちらに近付いている』
ミカエルは彼らの気配をしっかりと感じ取っていた。誰かが自分の気配を感じ取り、ここへ向かっている。誰なのだろう。ラファエルだろうか。ガブリエルだろうか。それとも他の誰かか。
『はぁ……それにしても、青と緑ばかりですね、この世界は』
『ええ、いざ降り立ってみると大きいものですねぇ、この世界は』
土地勘もクソもない場所では天使でも転移魔法を使うことはほぼ不可能に近い。そもそも転移魔法がどんな状況でも使えていれば、ふたりは南の名もない無人島に降り立つことも無かったのだ。
『それにしてもサリエルさん、どうも既にこの世界に悪魔がいるように思えるのですが』
『ですよね、最低でも二体はいますよね。それなのにこの荒れてなさというか、綺麗な状態が続いているのは何なんでしょう……』
そう、ふたりは本当に何も知らない。天界での襲撃に手一杯になり、他の世界や種族の動向を一々気にしていられなかったのだ。何せ目の前で同胞が討たれ、追い詰められ、ふたりのような上位の階級の天使でさえ逃亡せざるを得ない状況だった。地上に降りてきたのも、地上という下界に転移するという大まかという言葉で収めていいようなものではないほど雑な場所指定で、なんとか無理矢理転移魔法を展開してようやっとできたことだ。そのため、今のふたりはひたすらミカエルの気配に向かって自力で飛んでいくしかないのだ。もっとも、ふたりにはその気配がミカエルのものということもわかっていないのだが。
日が沈んでは昇るを四つ繰り返した。気配はもう目と鼻の先だ。今、視界に映る島はここまで来る間に見た島よりもえらく発展している。何か人々にとって重要な都市なのだろうか。そうガブリエルが考えていると、ふっと気配がいきなり近くなった。
『あ……』
『よかった、ガブリエルとサリエルだった』
『『ミカエル……!!』』
目の前に視界をやれば、見慣れない服装のミカエルがそこにいた。ぼろぼろのふたりを見て、ミカエルはよかったと微笑んだ。
『ういは、ふたりはガブリエルとサリエル。身なりを整えるだけでいいから、手伝ってくれないかな』
『もちろんですっ。お風呂お貸ししますね』
何日も戦い抜き、その果てに逃げてここまで辿り着いたふたりの体は、魔法で治療こそされているもののもう汚れていない箇所がなかった。衣服も破れている箇所が多く、修繕よりは買い替えた方が早い状態だった。ファントンはそれを見て、幻で新たにふたりの服を繕い、その様子を見ていたミカエルはファントンの幻に関心を抱いていた。
『幻精霊の王ともなると、幻の顕現も容易いようだね』
『まぁな、オレも伊達に王様やってへんねん。この部屋のもんは大体オレの幻やで』
『! そうなのか……全く気付かなかった』
ガブリエルとサリエルが風呂から上がり、ファントンの幻によって生み出された新品の服を着ると、今までの経緯をういはたちに話してくれた。
「……じゃあ、天界は本当の、本当に」
ういはの言葉にガブリエルとサリエルは静かに頷いた。
『ミカエル、役目を果たせず申し訳ありません』
『我々も自身の命を生かすことで精一杯で……数多の命を見捨てて来てしまいました』
ふたりがミカエルに頭を下げると、ミカエルは首を横に振った。
『そもそも自分が初めに匙を投げたんだ。君たちが謝る必要は何一つない。それよりも、自分が最も逃げてはならなかったのにもかかわらず、皆を置いて逃亡などしてしまったから……』
『『それは違いますッ』』
ミカエルが俯きがちにぼそぼそと呟いていると、ふたりは声を揃えて強く否定した。
『あなたはただ助けを、少しでも我々が生存できる道を確保するために生き延びたに過ぎません』
『それよりも、逃げるわけにはいかないとかなんとか言って真っ向勝負で勝手にひとりで死なれる方が困ります』
『……そう、か。すまない、自分と奴との問題なのに……ふたりは優しいな』
へにゃ、とミカエルが柔らかな微笑みを見せるとガブリエルは目を逸らし、サリエルは「んぐっ」とよくわからない悲鳴のようなものを小さく上げた。
『……あ、あの』
話が一旦落ち着いたと感じたういはは、三人に声をかける。
『その、申し訳ないんですが、わたしとファントンとミカエルさんで今でこの狭い部屋に三人いる状態なんです。で、おふたりを匿いたい気持ちはあるんですけれども、ちょっと部屋の広さと部屋数的にそれが厳しくて……』
そもそも人ひとりと召喚獣一体を想定して貸し出された部屋に三人もいるのだ。そこに二人も加わるとなると流石にキャパオーバーとなる。
『そこで考えたんやけどな。お前ら人に擬態して召喚師になり』
『『え?』』
『ちょうど再来週に中途採用の試験があったはずやから受けてき。お前ら天使やから人間と違うてそれくらい楽勝やろ』
ファントンの突然の提案に、二人はもちろんミカエルも固まっていた。そもそも現代の人語をあまり理解できていないのに? そんな疑問が三人の頭にほぼ同時に浮かび上がる。
『わ、我々天使ですよ? 光魔法を使う人間なんて見た事──』
『ある』
ガブリエルの狼狽にミカエルが答えた。
『いるんだ、ガブリエル。自分も初めて目にしたときは驚いたけどね。我々にルーツを持っているわけではないよ、でも彼女は確かに光の魔力を宿していたんだ』
『やから、お前らが光魔法の使い手の人間や言うてもへぇーめっちゃ珍しいな、程度で終わるで。実際変なルーツ持ってない奴でも光魔法使える奴がここにおるからな』
ファントンはそう言って主人であるういはの肩をぽんと叩く。そして「こいつの兄貴は闇魔法の適正持ちや」とも付け加えた。
何としても今を生き延びなければならない天使たちに選択肢はなかった。ういはから大まかな試験内容を聞き出し、なんとか出願書類を掻き集め、出願を間に合わせた。召喚師が人手不足だからか、出願締切は試験の前日だったことが幸いだった。
「ういはさん」
試験から一週間後、合格通知を受け取ったガブリエルとサリエルがういはのもとに訪れた。
「あ、受かったんですね!」
「ええ、おかげさまで。試験内容は大したことなかったんですが、人語が難しいです」
「現代の人語は我々の生まれた時代のものの影すら感じさせないときが多いですからね」
そう言うふたりだが、二週間で身につけたとは思えないほど流暢に人語を話している。
「それだけ話せたら十分です。それで、おふたりの配属先は?」
「私はミツルギ? さんとやらのもとでお世話になるようです」
「私は別の方のところです」
「御剣ならわたしの旧友なので安心してくださいっ。もう片方の人は……ちょっとわかりませんが」
こうして二人は天使ではなく魔法師から転職したという設定の新人召喚師として、人間界の生活を営むこととなった。だが、サリエルにはひとつだけ疑問が残っていた。
「ミカエルはどうするんです?」
「ファントンが一部の対象に向けて幻に変えて存在させてる状態だから、何か世界に変化があるまではずっと家の居候かなってところです」
「そうですか。……彼に関しては、その方がいいですよね」
「やっぱりミカエルさんは皆さんにとって特別なんですか?」
ういはの問いに、ふたりは勿論だと頷く。
「彼がいたからあのときに我々が滅ぶことはなかった……そう言っても過言ではないと、私は信じています」
「私もサリエルさんと同じです。奴を堕天させる勇気と決断を下せるだけの意志の両方を持っていたのは、あの場では間違いなくミカエルだけでしたから」
ふたりと関わったのはほんの少しだが、それでも彼らのミカエルに対する絶大な信頼はういはにも十分に伝わった。
「……そんなに厚い信頼を持った方を死なせるわけにはいきませんね、ファントンの魔法も万能ではありませんから、わたしも目を光らせておきます。……では、お元気で」
「「ええ、お元気で」」
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