坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第一章:隔離された村

第一章:隔離された村 11

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 先客である男たちを気にするように見やりながら、由奈さんは桜の会話に付き合う。

「そうなんですか? こんなに立派なのに、もったいないなぁ。宝の持ち腐れですよ」

「おっしゃる通りなんだけどね。言葉の悪い言い方しちゃえば、村長はお気楽道楽な人だから。今一つ考えてることがわからないのが正直なとこなのよ。あたしに限らずね」

 言いながら、由奈さんが男三人組の方へ顎をしゃくる。

「あそこにいるの、村長だよ。茶色い甚平みたいなの着てる人。あとの二人は……吉田よしださんと枝橋えだばしさんかな」

 目を細めるようにして三人を観察している由奈さんのすぐ横を、蓮田が無言のまま通り過ぎる。

 その足は一直線に三人組へと向かっているように思えたが、単に巨大藤の幹を間近で見ようとしているだけだと気づく。

「乃亜ちゃんって何にでも無関心なくせに、ああいう好奇心あるような行動とったりするわよね」

 意味わかんないなぁ、と首を捻りながら後輩の背中を見つめる桜。

 しかし、その表情がすぐに曇った。

 蓮田が藤の木へ向かうその先で、男たち三人組もこちらに向かい歩きだしてきたのがわかった。

 相手は村の村長だ。見慣れない俺たちが藤美荘の宿泊客だということくらい、すぐに理解しただろう。

「やばいわね」

 ぽつりと、固い口調で呟きを口にする桜。

 幼なじみが何を言いたいのか、俺は瞬時に把握する。

「ああ、俺たちも行くか」

 三人組は、間違いなく蓮田の元へ歩いている。

 十中八九、彼女へ話しかけるつもりでいるはずだ。

 ――さすがに阻止しないと、相手に悪い。悪すぎる。

 無愛想の権化である蓮田に話しかけ、まともなコミュニケーションなんかとれるはずがない。

 話しかけた相手に戸惑わせるか、後悔させてしまうだけだ。

 俺と桜は急ぎ足で蓮田を追いかけると、挟み込むようにして隣に並んだ。

 そんな俺たちに、蓮田は視線を向けることすらせず藤の木へ近づいていく。

「やぁ、こんにちは。君たちが、野島さんの言っていたお客さんかな?」

 やがて、お互いの距離が縮まると、温厚そうな柔らかい声で村長が話しかけてきた。

 巨大藤のちょうど目の前。当然というべきなのか、予想した通りに蓮田は村長の問いかけを無視して、藤の木を見上げている。

 赤の他人からすれば、確実に舐めていると思われそうな態度だ。

「はい、お世話になります」

 桜が会釈をしたのでそれに倣う。そんな俺たちを見てやんわりと頷き、村長は簡単に自己紹介をしてきた。

「もう、由奈さんから聞いているかな。私は梅木うめき繁信しげのぶ。この村で村長をしています。こちらの二人は、枝橋くんと吉田さん。村の自警団員をしているんですよ」

「自警団? こんな平和そうな場所に、悪い人なんていなさそうに思えますけど」

 俺が言うと、紹介されたうちの一人、枝橋と呼ばれた方が笑顔で村長の言葉を継いできた。

「確かに、犯罪は起きないけど野生の動物が村に下りてきたりするからね。猪とか熊とか。ここは高齢者が多いから、万が一そんなのに遭遇したら大変なことになっちゃうんだよ」

「熊なんか出るんですか?」

「そりゃあ、これだけ自然に囲まれた環境ならね。都会で暮らしてたら、絶対に縁のない脅威かもしれないけど」
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