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第一章:隔離された村
第一章:隔離された村 16
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癖っ毛なのか、ボサボサの頭をポリポリと掻きながら、竜久さんは俺たちに白い歯を見せる。
英語の文字がプリントされた安物っぽい灰色のシャツは強く丸めたように皺が寄り、ねずみ色のハーフパンツから出ている足は、これぞ男というようにすね毛が生え茂っていた。
失礼だとはわかっているが、どうにもだらしないという印象をうけてしまう。
「こっちにはあんまり顔出さないから、たぶん会う機会はないだろうけど、まぁゆっくりしていってよ」
「はぁ」
気の利いた返事が思い浮かばず、俺は間の抜けたような声を竜久さんへ返した。
「ねぇ、君たちは何年生?」
ジーパンに両手を入れながら、昇さんが訊ねてくる。
一瞬、自分に言ってるのかと思い答えそうになるが、昇さんの目が桜へいっていることに気づき言葉を飲み込んだ。
「二年、ですけど……」
警戒するように、桜が告げる。
「じゃあ、十七歳くらいか。そっちの子は?」
顎で昇さんが示したのは蓮田だ。
「彼女は後輩の一年生です」
「……ふぅん。二人とも可愛いな。学校じゃモテるでしょ?」
「え? いえ、別にそんなことは……」
下卑た笑みで会話を続けてくる村長の甥に、さすがの桜も不快に頬を引きつらせる。
「今時の学生なら、彼氏とか普通にいるでしょ? 俺、この村に来る前は東京に住んでたから、村の年寄りたちなんかよりは話が弾むと思うよ」
それがどうしたと言うのか。
あまり関わる気のない竜久さんとは嫌な意味で対称的な昇さんの言動に、側に立つ由奈さんと流森さんも怪訝な表情を示しはじめる。
と、そのとき。
「あら、お帰りなさいみんな。そんなとこに集まって何を話してるの?」
微妙な空気になりかけていた空間に、聞き覚えのある声が響いた。
「あ、碧さん」
声のした方向へ首を向けた由奈さんが、安堵した様子で現れた人物の名前を呼ぶ。
「未央ちゃん、お義母さんが用があるからちょっと来てほしいって」
「女将が? わかりました。ごめんねみんな、また後で」
近づいてきた碧さんから伝言を受け、流森さんがすまなそうに手を合わせてこの場を離れていく。
それを肩越しに見送ってから、碧さんはあらためて俺たちに向き直った。
「竜久さんがこっちに来るなんて珍しいですね。手伝いを頼まれたんですか?」
「え? いや、おれはただ昇さんに誘われたからついてきただけで……」
話を振られるとは思っていなかったのか、竜久さんは慌てたように言葉を繕う。
「昇さんに?」
「いやぁ、若いお客が来てるって言うから、挨拶にでもと思って。すぐ戻りますよ」
ははは、とわざとらしく笑い声を上げてそう言うと、昇さんはちらりと竜久さんへ目配せをしたのがわかった。
「すぐ戻るなんて言わないで、たまにはこっちの仕事を手伝ってあげた方が良いんじゃないですか? お義母さんも時々ぼやいてますよ」
男二人のアイコンタクトには気づくことなく、碧さんが肩を竦める。
「そんな、俺らみたいな怠け者じゃ役に立たないですから。て言うか、碧さんがいてくれればこんな宿の切り盛りは楽勝でしょう?」
「まさか。わたしなんかただの雑用みたいなものだし」
「ご謙遜を。晴也さん、いつだったか言ってましたよ。碧さんはよく働いてくれて助かる、跡継ぎは残念だけど結婚して良かったってね。な? 竜久」
英語の文字がプリントされた安物っぽい灰色のシャツは強く丸めたように皺が寄り、ねずみ色のハーフパンツから出ている足は、これぞ男というようにすね毛が生え茂っていた。
失礼だとはわかっているが、どうにもだらしないという印象をうけてしまう。
「こっちにはあんまり顔出さないから、たぶん会う機会はないだろうけど、まぁゆっくりしていってよ」
「はぁ」
気の利いた返事が思い浮かばず、俺は間の抜けたような声を竜久さんへ返した。
「ねぇ、君たちは何年生?」
ジーパンに両手を入れながら、昇さんが訊ねてくる。
一瞬、自分に言ってるのかと思い答えそうになるが、昇さんの目が桜へいっていることに気づき言葉を飲み込んだ。
「二年、ですけど……」
警戒するように、桜が告げる。
「じゃあ、十七歳くらいか。そっちの子は?」
顎で昇さんが示したのは蓮田だ。
「彼女は後輩の一年生です」
「……ふぅん。二人とも可愛いな。学校じゃモテるでしょ?」
「え? いえ、別にそんなことは……」
下卑た笑みで会話を続けてくる村長の甥に、さすがの桜も不快に頬を引きつらせる。
「今時の学生なら、彼氏とか普通にいるでしょ? 俺、この村に来る前は東京に住んでたから、村の年寄りたちなんかよりは話が弾むと思うよ」
それがどうしたと言うのか。
あまり関わる気のない竜久さんとは嫌な意味で対称的な昇さんの言動に、側に立つ由奈さんと流森さんも怪訝な表情を示しはじめる。
と、そのとき。
「あら、お帰りなさいみんな。そんなとこに集まって何を話してるの?」
微妙な空気になりかけていた空間に、聞き覚えのある声が響いた。
「あ、碧さん」
声のした方向へ首を向けた由奈さんが、安堵した様子で現れた人物の名前を呼ぶ。
「未央ちゃん、お義母さんが用があるからちょっと来てほしいって」
「女将が? わかりました。ごめんねみんな、また後で」
近づいてきた碧さんから伝言を受け、流森さんがすまなそうに手を合わせてこの場を離れていく。
それを肩越しに見送ってから、碧さんはあらためて俺たちに向き直った。
「竜久さんがこっちに来るなんて珍しいですね。手伝いを頼まれたんですか?」
「え? いや、おれはただ昇さんに誘われたからついてきただけで……」
話を振られるとは思っていなかったのか、竜久さんは慌てたように言葉を繕う。
「昇さんに?」
「いやぁ、若いお客が来てるって言うから、挨拶にでもと思って。すぐ戻りますよ」
ははは、とわざとらしく笑い声を上げてそう言うと、昇さんはちらりと竜久さんへ目配せをしたのがわかった。
「すぐ戻るなんて言わないで、たまにはこっちの仕事を手伝ってあげた方が良いんじゃないですか? お義母さんも時々ぼやいてますよ」
男二人のアイコンタクトには気づくことなく、碧さんが肩を竦める。
「そんな、俺らみたいな怠け者じゃ役に立たないですから。て言うか、碧さんがいてくれればこんな宿の切り盛りは楽勝でしょう?」
「まさか。わたしなんかただの雑用みたいなものだし」
「ご謙遜を。晴也さん、いつだったか言ってましたよ。碧さんはよく働いてくれて助かる、跡継ぎは残念だけど結婚して良かったってね。な? 竜久」
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