坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第二章:悪霊の目覚め

第二章:悪霊の目覚め 1

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          【1】


 目を覚ましたことには、特にきっかけがあったわけでもなかった。

 いつもの慣れた環境でなかったことが原因なのかもしれないが、別段それが問題になるわけでもない。

 枕元に置いていた携帯で時刻を確認すると、まだ早朝の五時半前。学校がある日でも、ここまで早く起きるなんて滅多にない時間帯だった。

 閉められたカーテン越しに、うっすらとした光りが射しているのをみると、外はもう夜闇の呪縛から解放され始めている頃合いか。

 昨夜、寝る前に部長が言っていた起床時間を思いだす。

 朝は少しゆっくりしたいからという理由から、八時までは寝てても良いことになっていたはず。

 もっとも、これは部長が低血圧だという個人的な都合によるものが大きいが。

 このことに関しては俺たちミスオカ研メンバー全員が初耳で、桜に至っては

「確かに部長、ひ弱そうですもんね」

 と、同情するような視線を向けていた。

 藤美壮にも由奈さんを通じてそのことは伝えてもらったと本人が言っていたので、強制的に起こされる心配もする必要はない。

 となれば、あと二時間半存分にまどろむ権利が、今の自分にはあることになる。

「……」

 そこまで把握できれば、最早これ以上考える必要もない。

 俺はまた僅かにはだけた布団を引き寄せ、再び安楽の世界へ身を委ねようと瞼を下ろす。

 そして、そのまま意識が沈んでいくのをふやけた感覚で味わっていると、それを邪魔するかのように現実から微かな物音が割り込んできた。

 室内ではない。もう少し遠く。廊下からだろうか。

 ドアが開けられるような音だった。

 ――誰だ……?

 この階には俺たち以外に人は寝泊りしていないはず。隣では部長が寝ているため、桜か蓮田あたりが起き出したのかもしれない。

 トイレにでも行きたくなったかと、そんな結論を即座に下すが、不思議なことに人が歩く音は微塵も伝わってこない。

 廊下に出て、そこで全てが途切れたかのように気配は掻き消えていた。

 ――何か気味悪ぃな。

 まさか、朝っぱらから心霊現象に襲われているわけではあるまい。物音自体が勘違いか、単に足音を聞き逃したか。

 所詮そんなところだろう。

 自分に言い聞かせもう一度睡魔に身を任そうと試みるも、悲しいことに睡魔はもうどこかへ去ってしまったらしい。

 たった今まで内在していた眠気が中途半端に晴れ、代わりに立ち込めてきたのは得体の知れない音への猜疑心。

 気のせいだと割り切ってはみても、一度気にしだすとどうしても落ち着かないものだ。

 三分程布団の中から耳を澄ませて様子を窺うが、相変わらず変化はない。

 つまりは、誰かが戻ってくる気配もない。

「……くそ」

 いよいよをもって落ち着かなくなり、俺は覚悟を決めて身体を起こした。

 特別何かをするつもりはない。部屋のドアを開け、廊下の様子を確認するだけで良いのだ。

 それだけでも、気分はスッキリするだろう。

 部長を起こさぬよう注意しながら立ち上がり、そっとドアの前へ移動する。

 深夜ならまだしも、今は早朝。外は明るい。怖がる要素など無いはずだ。

 そう自分に言い聞かせ、俺は静かにドアを開き廊下に首だけを突き出した。
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