坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

文字の大きさ
35 / 173
第二章:悪霊の目覚め

第二章:悪霊の目覚め 4

しおりを挟む
 すぐに背後を通り過ぎていくものだとすぐに意識を逸らしたが、それを裏切るように車は自分たちのいる細道へと左折してきた。

 こんな早朝から一体何の用があって出てきたのかは知らないが、俺たち二人は邪魔にならぬよう、道の端に寄って車が通り過ぎるのを待つ。

 徐行してきた車が横を通過しようとする辺りで、ふいに運転席の窓が開き見覚えのある顔がこちらを覗きこんできた。

「あれ? きみたち、こんな朝早くからどうしたの?」

 丸坊主の頭を隠そうともせず、にこやかに声をかけてきたのは、藤美壮の料理人である渡辺さんだった。

 ちらりと助手席の方を窺うと、何故かあの男まで座っている。口元だけに薄ら笑いを浮かべたこの男は、確か村長の甥の昇と言ったか。

 どうにもまだ、名前と顔が覚えきれていない。

「たまたま早く目が覚めたんで、二人でちょっと散歩をしてました。勝手に出歩いたらまずかったですかね?」

 訊くと、渡辺さんはあっさりと首を横に振った。

「別に、何もまずいことなんてないよ。好きなだけ探索して良いさ」

 大したことでもないという風に答えると、渡辺さんは俺と蓮田を交互に見比べる。

「ところで、どこまで行くつもりだったの? まさか、今から巨大藤までってことはないよね?」

「いや、蓮田が藤守神社まで行きたいって言うから、それに付き合ってたんですけど……」

 横目で後輩を見ると、まるで自分には無関係な話だとでも言うかのように、道の奥を眺めていた。

 さすがにこんなときくらいはもう少し社交的な態度をとれよと思ったが、これが蓮田クオリティだと無理矢理自分を説得しておく。

「藤守神社? あんなとこ、朝っぱらから行こうとする人なかなかいないよ。ましてや、若い二人が行く場所じゃないと思うけど」

 苦笑しながらそう言うと、渡辺さんは後部座席を指し示す。

「なんなら、乗って行くかい? 歩いて往復してたら、時間がかかっちゃうよ」

「え? 良いんですか?」

 思わぬ申し出に、つい身を乗りだしそうになってしまう。

「構わないよ。ちょうどこれから昼食の食材を調達に行くところだったし、まぁそのついでってことで」

「昼食の? ああ、山菜ですか?」

「うん、そう。たまに竜久くんや昇さんにバイトしてもらって、一緒に採りに来たりしているんだよ」

 そこで渡辺さんは、助手席を振り返る。

「あはは。貴重な収入源だからね、こっちとしてもありがたい話さ」

 話を振られた昇さんが、歯を見せながら笑う。

「どうする? 乗ってくかい?」

 再度訊いてくる渡辺さんの問いに、俺は蓮田の反応を確認する。

 当たり前のように無反応だが、不満を浮かべる様子もないので特に反対するつもりもないのだろう。

 そう勝手に判断して、俺は頷きを返した。

「それじゃ、お言葉に甘えて」

「よし、じゃあ後ろに乗って」

 言われるまま、俺と蓮田は後部座席に座り込む。

「それじゃ、行こうか」

 言って、渡辺さんはアクセルを静かに踏み込む。

 そして、車は昨日と同じように薄暗い湿った道を走り始めた。

 時間帯のせいか、昨日通ったときよりも若干肌寒く感じる。

 もし渡辺さんが通りかからなかったら、こんな所を蓮田と二人きりで歩いていたのかと想像すると、今更ながらにかなりの冒険をしようとしていたのだと思い知る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小説探偵

夕凪ヨウ
ミステリー
 20XX年。日本に名を響かせている、1人の小説家がいた。  男の名は江本海里。素晴らしい作品を生み出す彼には、一部の人間しか知らない、“裏の顔”が存在した。  そして、彼の“裏の顔”を知っている者たちは、尊敬と畏怖を込めて、彼をこう呼んだ。  小説探偵、と。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

村長奇譚 ~夏祭りの惨劇と少女の亡霊~

水無月礼人
ミステリー
 子供達は独立し、長年連れ添った妻は病で死去した。  故郷の田舎町で余生を過ごそうと帰省した主人公(60代・男)は、住民の同調圧力で強引に自治会長(村長)に選ばれてしまう。  嫌々ながらも最大のイベント・夏祭りの準備を始める主人公であるが、彼は様々な怪奇に遭遇することになる。  不運な村長とお気楽青年のバディが事件を華麗に解決!……するかも。 ※表紙イラストはフリー素材を組み合わせて作りました。  【アルファポリス】でも公開しています。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...