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第二章:悪霊の目覚め
第二章:悪霊の目覚め 33
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【10】
村長宅の敷地に足を踏み入れるのは、当然ながらこれが初めてだった。
古い木造の門を潜ると、その左右には手入れされた松の木が出迎える。門を入ってから正面、家の玄関までの距離は約五十メートルほど。
左右へ展開する庭には玉砂利が敷かれ、右手には人工池が見えた。
遠慮のかけらもなく敷地に入り込んだ蓮田が向かうのは、その人工池のさらに奥。
一見して蔵とわかる建物があり、そこに何人かの大人が集まり騒いでいる。
碧さんの遺体を安置していた場所であるそこに、今度は新たな遺体が増えている。
由奈さんの話を鵜呑みにすれば、そういうことだ。
これ以上先に進んで良いのか、僅かに逡巡しながら背後を見やる。
仮に村の誰かがタイミング良く駆けつけてくれていれば、間違いなく注意され先への進入は咎められていただろう。
しかし、現実には自分を止めてくれる者はいない。
仕方なく顔の向きを戻し、飛び石の上を歩いていく蓮田の後に続いた。
梅木家の玄関から更に十メートル程先に、蔵はある。そこへ近づくにつれて、現場にいる者たちが誰かはっきりしてきた。
村長と、その妻である千賀子さん。
それから、第一発見者である次男の竜久さん。それと見知らぬ老人が二人。
たぶんだが、自警団の人間ではないかと想像する。
蔵の外、入り口付近には踞って泣き震える千賀子さんと、それに寄り添う老人が一人。
大きく開かれた入り口の奥には、残りの三人が何やら慌ただしく動いているのが見えた。
全員こちらへ背を向けているため、誰も俺たちの接近には気がつかない。そのため、あっさりと千賀子さんのすぐ背後へ到達した。
そこまで来て、蔵の中の様子もはっきりと確認できた。
とても広い、というわけでもない。畳にして十畳分くらいだろうか。
農機具や米などが置かれたその一角に、白いシーツを被せた何かが置かれている。
それが、昨日目の当たりにしたばかりの遺体であることは、容易に想像できた。
そして、その遺体から二メートル程右側。
「……」
そこに、晴也さんはいた。
天井の梁から伸びるロープに首を絞められ、力なく垂れ下がるその姿は碧さんの死に様を思い出させる。
日に焼けて黒かった肌は土気色に変わり、もう二度と自らの意志で動き出すことはないと告げてくる。
中にいる老人と村長親子は、晴也さんを床に下ろそうとしている最中のようだ。
晴也さんの首に巻かれたロープは真上にある梁を通り、近くの細い柱へ結び付けられている。
――これ、自殺じゃねぇよな……。
こうして現場を見て、素人ながらにそう直感した。
地面から晴也さんの足までは、一メートルはある。それにも関わらず、吊るされた晴也さんの足元には、土台になるような物が見当たらない。
仮にこれが、碧さんを亡くしたことにショックを受け自ら命を断った行為であるとするならば、絶対に足場となる物がなければ不可能。
これでは、晴也さんは一人で首を吊ることができない。
村長宅の敷地に足を踏み入れるのは、当然ながらこれが初めてだった。
古い木造の門を潜ると、その左右には手入れされた松の木が出迎える。門を入ってから正面、家の玄関までの距離は約五十メートルほど。
左右へ展開する庭には玉砂利が敷かれ、右手には人工池が見えた。
遠慮のかけらもなく敷地に入り込んだ蓮田が向かうのは、その人工池のさらに奥。
一見して蔵とわかる建物があり、そこに何人かの大人が集まり騒いでいる。
碧さんの遺体を安置していた場所であるそこに、今度は新たな遺体が増えている。
由奈さんの話を鵜呑みにすれば、そういうことだ。
これ以上先に進んで良いのか、僅かに逡巡しながら背後を見やる。
仮に村の誰かがタイミング良く駆けつけてくれていれば、間違いなく注意され先への進入は咎められていただろう。
しかし、現実には自分を止めてくれる者はいない。
仕方なく顔の向きを戻し、飛び石の上を歩いていく蓮田の後に続いた。
梅木家の玄関から更に十メートル程先に、蔵はある。そこへ近づくにつれて、現場にいる者たちが誰かはっきりしてきた。
村長と、その妻である千賀子さん。
それから、第一発見者である次男の竜久さん。それと見知らぬ老人が二人。
たぶんだが、自警団の人間ではないかと想像する。
蔵の外、入り口付近には踞って泣き震える千賀子さんと、それに寄り添う老人が一人。
大きく開かれた入り口の奥には、残りの三人が何やら慌ただしく動いているのが見えた。
全員こちらへ背を向けているため、誰も俺たちの接近には気がつかない。そのため、あっさりと千賀子さんのすぐ背後へ到達した。
そこまで来て、蔵の中の様子もはっきりと確認できた。
とても広い、というわけでもない。畳にして十畳分くらいだろうか。
農機具や米などが置かれたその一角に、白いシーツを被せた何かが置かれている。
それが、昨日目の当たりにしたばかりの遺体であることは、容易に想像できた。
そして、その遺体から二メートル程右側。
「……」
そこに、晴也さんはいた。
天井の梁から伸びるロープに首を絞められ、力なく垂れ下がるその姿は碧さんの死に様を思い出させる。
日に焼けて黒かった肌は土気色に変わり、もう二度と自らの意志で動き出すことはないと告げてくる。
中にいる老人と村長親子は、晴也さんを床に下ろそうとしている最中のようだ。
晴也さんの首に巻かれたロープは真上にある梁を通り、近くの細い柱へ結び付けられている。
――これ、自殺じゃねぇよな……。
こうして現場を見て、素人ながらにそう直感した。
地面から晴也さんの足までは、一メートルはある。それにも関わらず、吊るされた晴也さんの足元には、土台になるような物が見当たらない。
仮にこれが、碧さんを亡くしたことにショックを受け自ら命を断った行為であるとするならば、絶対に足場となる物がなければ不可能。
これでは、晴也さんは一人で首を吊ることができない。
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