坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第三章:藤花に消えた死体

第三章:藤花に消えた死体 17

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 ここで枝橋さんを少しでも説得なりしておければ、後々有益な話を聞かせてもらえる可能性が生まれる。

 ――部長の考えそうなことだな。

「まぁ、それくらいは構わないけど、なるべく人気のない場所には近づかないよう気をつけて。あと、日中ならまだ危険は少ないかもしれないけど、夜間は絶対に外出は控えて。もしどうしても出なきゃいけない用事がある場合は、誰か大人に声をかけるように。いいね?」

 ピッと部長へ人差し指を向け、枝橋さんは言い聞かせるよう告げる。

「はい、それはもちろん」

 素直に首肯し答えてから、部長は「あの……」と言って言葉を付け加える。

「もし今後、何か困ったことがあったときには、枝橋さんに相談させてもらっても大丈夫でしょうか?」

「うん?」

 意図を汲みかねてか、言われた当人は小さく首を傾げる仕草をみせた。

「もしもですけど、事件に関して不審なことにたまたま気づいたとか、どうしても不安なことがあるってなったとき、枝橋さんに相談できたら心強いなと思ったので。迷惑ならもちろん控えます」

「それくらい、時間が取れればいつでもオーケーだよ。藤美壮にも巡回で立ち寄る予定だから、遠慮なく声かけて」

「はい、ありがとうございます」

 これで最低でも一度は、枝橋さんへ話しかけるきっかけが作れた。

「……」

 抜け目のないリーダーだななどと胸中で思いながら玄関に目をやると、俺たちを待っている昇さんが、引き戸に手をかけながらこちらのやり取りを眺めていた。

 距離と声の大きさからして、話の内容を聞いていたとは思えない。

 別に聞き耳を立てていたわけでもなく、純粋に話が終わるのを見守っていたという感じか。

「それじゃあ、また」

 最後に軽く一礼して、部長が歩きだす。そのすぐ後ろを無言の蓮田がついていくのに倣って、俺と桜も昇さんの元へと向かった。

「……何言われたんだ?」

 まだこちらを見ている枝橋さんを意識しながら、昇さんはそう問うてきた。

「いえ、あんまり事件には関わるなと少しだけ小言を。なんだか、みんなに同じことを言われちゃいますね」

 普通そうだろうと内心苦笑しながら、俺は部長の頭を見やる。

「気にすることじゃねぇよ。邪魔してるわけでもねぇんだ。適当に聞き流しとけ、そんなもんは」

 ガラガラと年季の入った音を立て、玄関が開かれた。

「靴は適当に脱いどきな。あいつの部屋は奥にある」

 村長宅の玄関は、思っていた以上に広い空間になっていた。

 入ってすぐ左手にある棚には、黄金の招き猫と鮭をくわえた木彫りの熊が、仲良く並んで飾られているのが目につく。

 田舎の家独特の、何とも言えない古臭い匂いが鼻をつくが、不思議と不快にはならない。

 家に上がってすぐ、正面と左手に伸びる廊下があり、左に向かう廊下は二十メートル先で行き止まりになっていた。

 逆に、正面に続く廊下は奥まで長く伸び、突き当たりで左右に別れているのが確認できる。

 その途中には、おそらくは座敷や茶室ではないかと思われる部屋の障子戸が、左右二部屋ずつ連なっていた。

「外から見ててわかってたけど、やっぱり広い家ね。薄暗くてちょっと気味悪いけど」

 奥を眺める桜が、そんな感想を口にする。部屋と部屋に挟まれた廊下は、確かに昼間であっても薄暗い。

 天井には古ぼけたような電球が取り付けてあるようだが、見た感じからして光量は弱々しいものだろう。
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