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第三章:藤花に消えた死体
第三章:藤花に消えた死体 21
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「……はい」
頷いて、蓮田が窓際へ移動する。
顔をガラスに近づけ外を窺いすぐにこちらを向くと、ただ静かに首を横に振った。
「ってことは、やっぱりここに花弁が落ちてるのはおかしいね」
目を細め、部長は花弁と部屋を見比べる。
「でもそれ、前からそこにあったってこともあるんじゃないですか? 例えば、昨日とか一昨日とかに竜久さんが巨大藤に出かけて、そのときにたまたま服に引っかかったのを、気づかずそのまま戻ってきたとか」
「いや、ないね」
桜の推測を、部長はあっさりと否定した。
「よく見て。これ、全然萎びたりしてないんだよ。前からここにあったのなら、もう少しみずみずしさが無くなってないとおかしい。ましてや、落ちてたのはあのぐちゃぐちゃになったベッドの上。それで潰されてすらいないってのはちょっと、ね」
「あぁ……そう言われれば」
「どうかしたか?」
納得して唸る桜の背後に、昇さんが現れた。
「あ、竜久さんいましたか?」
「いや、便所、風呂場、台所、その辺の空き部屋も見たけどどこにもいねぇ」
俺が問うと、困ったような顔で両手を腰にやりながら、昇さんは息をついた。
「家に入るとき、玄関に靴あるのは見てんだよ。出かけてるはずはねぇんだけどよ……」
「玄関以外で、外へ出られる場所はありますか?」
部長が訊ねる。
「裏口ならあるぜ。台所についてる。まさか、そっから出たとか言いたいのか?」
「中にいないなら、それしか考えられないと思いますよ」
「出てどうなる? ほれ、部屋の窓から覗いてみろよ。裏庭には婆さんが趣味で作ってる畑があるだけだ。周りは塀に囲まれて行き場がない」
言われて、俺たちは蓮田が確認したばかりの窓に近づき外を見やる。
昇さんが言う通り、そこには自家菜園を目的に作られた畑があるだけで、他に目立つものはない。
だが、一つだけ気になるものはあった。
「あの、あそこにあるのは扉ですよね?」
畑の奥。家の敷地を囲う塀の一ヵ所が扉になっているのだ。
「あそこは、どこに出るんですか?」
「ああ、裏山だよ。滅多に使わねぇけど、一応巨大藤にも繋がってるんだぜ。つっても、ほとんど獣道同然だから、歩いて行こうとしたら片道だけで四十分はかかるだろうな」
「巨大藤に?」
反射的に、部長が手にしている花弁へと視線がいく。竜久さんの部屋に落ちていた、あるはずのない藤の花弁。
そして、村のシンボルである巨大藤に通じているという裏口。
根拠は全くないが、何故だか嫌な予感がした。
「それ、花びらか?」
俺の視線を通じて、昇さんも花弁の存在に気づく。
「はい。竜久さんのベッドに落ちてました。この辺りにも藤が咲いてるんですか?」
花弁を掲げて見せながら部長が訊くと、昇さんは小さく首を振った。
「いや、山奥ならあるかもしれねぇけど、この辺にはないはずだな……」
「それじゃあ、どうしてこんなものが竜久さんの部屋にあるんでしょう? 見た感じ古いものじゃないですし、ドライフラワーみたいにずっと部屋にあったものでもなさそうです」
「あいつが自分で摘んできたんじゃ……って、そんな趣味あいつにねぇな。まぁ、不思議っちゃ不思議だけど、そんなもん今気にするほどのことか? そんな気になるなら、本人見つけてから聞きゃあ良いだろ」
頷いて、蓮田が窓際へ移動する。
顔をガラスに近づけ外を窺いすぐにこちらを向くと、ただ静かに首を横に振った。
「ってことは、やっぱりここに花弁が落ちてるのはおかしいね」
目を細め、部長は花弁と部屋を見比べる。
「でもそれ、前からそこにあったってこともあるんじゃないですか? 例えば、昨日とか一昨日とかに竜久さんが巨大藤に出かけて、そのときにたまたま服に引っかかったのを、気づかずそのまま戻ってきたとか」
「いや、ないね」
桜の推測を、部長はあっさりと否定した。
「よく見て。これ、全然萎びたりしてないんだよ。前からここにあったのなら、もう少しみずみずしさが無くなってないとおかしい。ましてや、落ちてたのはあのぐちゃぐちゃになったベッドの上。それで潰されてすらいないってのはちょっと、ね」
「あぁ……そう言われれば」
「どうかしたか?」
納得して唸る桜の背後に、昇さんが現れた。
「あ、竜久さんいましたか?」
「いや、便所、風呂場、台所、その辺の空き部屋も見たけどどこにもいねぇ」
俺が問うと、困ったような顔で両手を腰にやりながら、昇さんは息をついた。
「家に入るとき、玄関に靴あるのは見てんだよ。出かけてるはずはねぇんだけどよ……」
「玄関以外で、外へ出られる場所はありますか?」
部長が訊ねる。
「裏口ならあるぜ。台所についてる。まさか、そっから出たとか言いたいのか?」
「中にいないなら、それしか考えられないと思いますよ」
「出てどうなる? ほれ、部屋の窓から覗いてみろよ。裏庭には婆さんが趣味で作ってる畑があるだけだ。周りは塀に囲まれて行き場がない」
言われて、俺たちは蓮田が確認したばかりの窓に近づき外を見やる。
昇さんが言う通り、そこには自家菜園を目的に作られた畑があるだけで、他に目立つものはない。
だが、一つだけ気になるものはあった。
「あの、あそこにあるのは扉ですよね?」
畑の奥。家の敷地を囲う塀の一ヵ所が扉になっているのだ。
「あそこは、どこに出るんですか?」
「ああ、裏山だよ。滅多に使わねぇけど、一応巨大藤にも繋がってるんだぜ。つっても、ほとんど獣道同然だから、歩いて行こうとしたら片道だけで四十分はかかるだろうな」
「巨大藤に?」
反射的に、部長が手にしている花弁へと視線がいく。竜久さんの部屋に落ちていた、あるはずのない藤の花弁。
そして、村のシンボルである巨大藤に通じているという裏口。
根拠は全くないが、何故だか嫌な予感がした。
「それ、花びらか?」
俺の視線を通じて、昇さんも花弁の存在に気づく。
「はい。竜久さんのベッドに落ちてました。この辺りにも藤が咲いてるんですか?」
花弁を掲げて見せながら部長が訊くと、昇さんは小さく首を振った。
「いや、山奥ならあるかもしれねぇけど、この辺にはないはずだな……」
「それじゃあ、どうしてこんなものが竜久さんの部屋にあるんでしょう? 見た感じ古いものじゃないですし、ドライフラワーみたいにずっと部屋にあったものでもなさそうです」
「あいつが自分で摘んできたんじゃ……って、そんな趣味あいつにねぇな。まぁ、不思議っちゃ不思議だけど、そんなもん今気にするほどのことか? そんな気になるなら、本人見つけてから聞きゃあ良いだろ」
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