坂宮高校ミスオカ研の事件録~藤咲村の惨劇~

雪鳴月彦

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第三章:藤花に消えた死体

第三章:藤花に消えた死体 28

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「この子、藤の木の近くに何か忘れもんしたって言ってんだけど、どうしたもんかな?」

「忘れ物?」

 訝しく思いながら、蓮田へ顔を向ける。

 彼女は無言を一貫したままこちらと視線を合わせ、ただじっと見つめ返してくるだけだったが。

 息を吐き、仕方なく自分から声をかける。

「蓮田、忘れもんって、いったい何を置いてきたんだ?」

 竜久さんの遺体を観察し、その周囲をうろうろしていたのを思いだす。

 落し物でもしたとすればあのタイミングだと予測できるが、果たして彼女に落すような荷物があっただろうか。

 いつも持ち歩いている黄色のポーチは、今も本人の膝の上だ。

 ポケットにでも入れていた何かを、偶然落っことしたという可能性くらいしか思いつかないが、どうにもピンとこない。

 そんな俺の疑問に対する蓮田からの回答は、

「……大事なものです」

 というシンプル極まりないものであった。

「いや、そりゃ取りに戻るくらいだから大事なものだろうけどよ。いったいそれが何なのかって――」

 訊いてるんだよ。

 そう言い終える前に。

 蓮田が、俺の瞳を真っ直ぐに見つめたまま後部座席、自分の横をポンポンと静かに叩いた。

「よろしければ、長沢先輩も一緒にどうぞ……」

「――はぁ?」

 思わず間抜けな声を出しながら、叩かれたシートと後輩の能面顔とを見比べる。

「一緒にって、お前なぁ、こんなときにそんな呑気なこと言うんじゃねぇよ」

「いや、話が長引くんだったら、いっそ乗ってくれねぇかな?」

 俺らのやり取りを遮るように声を割り込ませ、そう告げたのは昇さんだった。

「ここでもたもたされてもこっちが困るしよ。てか、その子のことも連れて行くんなら、見ててくれると助かんだわ」

「はぁ……」

 反論の余地を見逃し、曖昧に返事をする。それからまた後輩へ目を戻し、意思確認の意味で問いかける。

「蓮田、お前本気であそこに戻るつもりか? 最悪、いや、確実にみんなの邪魔になるぞ?」

「……大丈夫です。用が済んだら、車の中で大人しくしています」

 すまし顔で、さらりと答える蓮田。

「……絶対だな?」

「はい」

 また勝手に動き回られては堪らないと念を押す俺にコクリと頷き、蓮田はまた外へ顔を背けてしまう。

 仕方なく昇さんへ視線を戻すと、どうしようもないなと言いたげに肩を竦めて見せてくる。

 一度藤美荘を振り返り、自分の選ぶべき選択肢を頭に浮かべた。

 ――どうしようもねぇな。

 今、蓮田のお目付け役には自分しかなれない。

 桜には部長が付き添っているし、由奈さんたちも近くにいる。

「……俺も、一緒に行かせてもらいます」

「おう、早く乗りな」

 覚悟を決めて告げる俺に、昇さんが後部座席を顎で示した。

 すぐに乗り込み、発車の振動に揺られながらシートベルトを締めた。

「枝橋さんあたりに説教されても、自己責任で対処してくれよ。あいつに何だかんだ言われるのは、煩わしくてマジで嫌だから」

「まぁ、なんとかやってみます」

 前方を見つめたまま言ってくる昇さんに頷きながら答え、横に座る後輩の様子を確かめる。

「……」
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