92 / 173
第三章:藤花に消えた死体
第三章:藤花に消えた死体 27
しおりを挟む
「え? ちょっとどうしたの夜月さん、具合でも悪くした?」
側まで来るなり顔色を悪くする桜に一目で気づいて、困惑したように由奈さんは俺たちを見る。
「いや、実はね……」
ぽりぽりと頬を掻きながら、部長が苦笑気味な面持ちでここまでのできごとを従姉に説明する。
「……嘘でしょ? 竜久さんまで殺されたの?」
強張った口元を手で隠しつつ、状況を理解した由奈さんが呻く。
「残念だけど、本当の話だよ。昇さんと僕たち全員が見てるんだ。流森さんと渡辺さんは厨房にいるの?」
神妙な口調で告げて、部長は廊下の奥に視線を逸らす。
「ええ、みんなで仕事してたから。もう少しで一段落つくとこだったけど……」
「そっか。それじゃあ、由奈さんはその二人にも状況を伝えておいてくれないかな? 僕たちは部屋に戻ってるから。さすがに、桜くんを安静にさせてあげないと可哀想だし、辛いだろうからね」
「う、うん、わかった。後で食事直接部屋に持っていくから、食べられそうなら食べておいて――」
そこまで言って、ふと何かに気がついたように、由奈さんの動きが固まった。
順番に俺たちの顔を見て、怪訝そうに眉をしかめる。
「ところで、もう一人の子は? あの大人しい子は一緒じゃないの?」
「は?」
問われ、俺と部長は反射的に振り返った。
「――!」
てっきり後ろをついてきているものだと思っていたが。そこに、蓮田の姿はなかった。
慌てて外へ出て近くを見渡すも、どこにもいる気配はない。
「あいつまさか、まだ車に残ってるんじゃ……」
冷静に思い返してみれば、彼女が車を下りたのを誰も確認していない。
それどころか、車のドアを閉める音だって聞こえなかった気がする。
「長沢くん、悪いけど車に戻って蓮田くんがいるか、確かめてきてもらえるかい? 僕は桜くんを部屋で休ませておくから」
「はい、わかりました」
本当なら、自分が付いていた方が桜的にも安心するのかもとよぎったが、部長に任せるリスクが特にないのも事実なので素直に従う。
走ればすぐに行き来できる距離だ。特に深刻になるようなことでもない。
来た道を戻り、渡辺さんの車へと走る。
いったいどういうつもりで車に残っているのか、思考が予測しきれない蓮田に内心舌打ちをしたい気持ちを抑えつつ急いでいると、村長宅の方から三台の車が出てくるのが見えた。
その最後尾を走る車が、渡辺さんの所有する車であることに気づき足を止める。
先頭を走る軽トラに、村長と枝橋さんが乗っているのをすれ違いざまに確認する。
その後に続くミント色の車には、見慣れない中年男性が三人。
そして最後尾、渡辺さんの車を運転していたのは半ば予想していた通り、昇さんだった。
そして、その真後ろには無表情に外を眺める蓮田の姿。
やっぱり乗ったままだったか。
そんな呆れと腹立たしさが混じる気持ちを自制して、俺は手を挙げて昇さんの意識をこちらへ向けさせようと試みた。
相手側も初めから俺に気づいてはいたのだろう。側まで来ると減速し、ちょうど目の前で一時停止させてきた。
助手席の窓が開き、昇さんが参ったという様子で苦笑いをこぼす。
側まで来るなり顔色を悪くする桜に一目で気づいて、困惑したように由奈さんは俺たちを見る。
「いや、実はね……」
ぽりぽりと頬を掻きながら、部長が苦笑気味な面持ちでここまでのできごとを従姉に説明する。
「……嘘でしょ? 竜久さんまで殺されたの?」
強張った口元を手で隠しつつ、状況を理解した由奈さんが呻く。
「残念だけど、本当の話だよ。昇さんと僕たち全員が見てるんだ。流森さんと渡辺さんは厨房にいるの?」
神妙な口調で告げて、部長は廊下の奥に視線を逸らす。
「ええ、みんなで仕事してたから。もう少しで一段落つくとこだったけど……」
「そっか。それじゃあ、由奈さんはその二人にも状況を伝えておいてくれないかな? 僕たちは部屋に戻ってるから。さすがに、桜くんを安静にさせてあげないと可哀想だし、辛いだろうからね」
「う、うん、わかった。後で食事直接部屋に持っていくから、食べられそうなら食べておいて――」
そこまで言って、ふと何かに気がついたように、由奈さんの動きが固まった。
順番に俺たちの顔を見て、怪訝そうに眉をしかめる。
「ところで、もう一人の子は? あの大人しい子は一緒じゃないの?」
「は?」
問われ、俺と部長は反射的に振り返った。
「――!」
てっきり後ろをついてきているものだと思っていたが。そこに、蓮田の姿はなかった。
慌てて外へ出て近くを見渡すも、どこにもいる気配はない。
「あいつまさか、まだ車に残ってるんじゃ……」
冷静に思い返してみれば、彼女が車を下りたのを誰も確認していない。
それどころか、車のドアを閉める音だって聞こえなかった気がする。
「長沢くん、悪いけど車に戻って蓮田くんがいるか、確かめてきてもらえるかい? 僕は桜くんを部屋で休ませておくから」
「はい、わかりました」
本当なら、自分が付いていた方が桜的にも安心するのかもとよぎったが、部長に任せるリスクが特にないのも事実なので素直に従う。
走ればすぐに行き来できる距離だ。特に深刻になるようなことでもない。
来た道を戻り、渡辺さんの車へと走る。
いったいどういうつもりで車に残っているのか、思考が予測しきれない蓮田に内心舌打ちをしたい気持ちを抑えつつ急いでいると、村長宅の方から三台の車が出てくるのが見えた。
その最後尾を走る車が、渡辺さんの所有する車であることに気づき足を止める。
先頭を走る軽トラに、村長と枝橋さんが乗っているのをすれ違いざまに確認する。
その後に続くミント色の車には、見慣れない中年男性が三人。
そして最後尾、渡辺さんの車を運転していたのは半ば予想していた通り、昇さんだった。
そして、その真後ろには無表情に外を眺める蓮田の姿。
やっぱり乗ったままだったか。
そんな呆れと腹立たしさが混じる気持ちを自制して、俺は手を挙げて昇さんの意識をこちらへ向けさせようと試みた。
相手側も初めから俺に気づいてはいたのだろう。側まで来ると減速し、ちょうど目の前で一時停止させてきた。
助手席の窓が開き、昇さんが参ったという様子で苦笑いをこぼす。
0
あなたにおすすめの小説
小説探偵
夕凪ヨウ
ミステリー
20XX年。日本に名を響かせている、1人の小説家がいた。
男の名は江本海里。素晴らしい作品を生み出す彼には、一部の人間しか知らない、“裏の顔”が存在した。
そして、彼の“裏の顔”を知っている者たちは、尊敬と畏怖を込めて、彼をこう呼んだ。
小説探偵、と。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
村長奇譚 ~夏祭りの惨劇と少女の亡霊~
水無月礼人
ミステリー
子供達は独立し、長年連れ添った妻は病で死去した。
故郷の田舎町で余生を過ごそうと帰省した主人公(60代・男)は、住民の同調圧力で強引に自治会長(村長)に選ばれてしまう。
嫌々ながらも最大のイベント・夏祭りの準備を始める主人公であるが、彼は様々な怪奇に遭遇することになる。
不運な村長とお気楽青年のバディが事件を華麗に解決!……するかも。
※表紙イラストはフリー素材を組み合わせて作りました。
【アルファポリス】でも公開しています。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる