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第三章:藤花に消えた死体
第三章:藤花に消えた死体 26
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「……訳がわかんねぇ。何で竜久が殺されてんだよ」
独り言なのか、昇さんの吐き捨てるような呻きが耳に入った。
「どうなってやがんだ、ちくしょう……」
誰も答えようのないそのぼやきを最後に、車は通夜のような重苦しさを乗せて村長宅の前まで俺たちを運んだ。
「よし、俺はみんなに知らせてくるから、お前らはその子を部屋で休ませてやれ」
ギアを戻し、サイドブレーキをかけながら昇さんが早口で捲し立てる。
「はい」
部長が頷き、車を降りる。それから、すぐに後部座席のドアを開け桜の顔を覗き込んだ。
「歩けるかい?」
小声で話しかけ、桜が小さく頷くのを確かめる。
それから、力なく外へ出た桜の側に立ち、支えるようにして肩に手をやった。
何もなければセクハラだとでも騒ぎ嫌がるはずの幼なじみも、今はそんなこと言う余裕が微塵も感じられない。
桜の後に続いて降りて、俺もまた側に付き添う。
「行くぞ?」
村長宅の中へ走っていく昇さんを目の端で確認し、桜の背を押す。
たどたどしく歩きはじめた彼女のペースに合わせて、俺たち男性陣も藤美荘へと向かった。
「……雄治」
その道中で、唐突に桜が掠れた声を漏らす。
「ん? どうした?」
周りが静かでなければ気がつけなかったであろうその呼びかけに、俺は耳を近づける。
「あたしもう帰りたい。こんなとこいたくないよ」
「……」
そのあまりにも心細さが伝わる少女の言葉に、一瞬喉が詰まる。
そういえば昔、まだ自分たちが幼かった頃にもこんな彼女を見たことがあったなと、そんな無関係なことが頭に浮かんだ。
冒険と言って二人で調子に乗り遠くへ出かけ、道に迷って帰り方がわからなくなったあの日。
まだ小学一年くらいだったか。
“こんなとこまで来なきゃよかったぁ……”
あのときの桜も、不安に飲み込まれ心細い声を出しながら、泣いて座り込んでいた。
――結局あのときは、偶然通りかかったお巡りが、泣いてるこいつを見て助けてくれたんだっけか。
だけどここには、助けてくれるお巡りはいない。助けが来るまでは、逃げ道がないのだ。
「大丈夫だ。絶対すぐに帰れるから、もう少しだけ頑張ろうぜ。な?」
落ち着かせるよう頭を撫でて、それだけ言葉をかける。
陳腐な台詞だとは理解しているが、もっと気の利いた言葉をかけられるほど自分はまだ器用ではない。
「……ん」
それでも少しは効果があったのか、桜は素直に頷くとそのまま黙って歩き続けた。
藤美荘に到着し、部長が玄関から大声をあげた。
「すみませーん!」
普段、声を張り上げることのない彼がここまででかい声を出せたのには驚いたが、表情には出さずにやり過ごす。
緊急事態であるわけだし、そんなことを指摘して話をしている場合でもない。
「すみませーん、誰か出てきてもらえますか!」
靴を履き替え中に入りつつ、もう一度部長が呼びかける。
それから数秒遅れたタイミングで、
「はーい、どうかしたのー?」
という由奈さんの声が奥から聞こえてきた。
厨房にいたのか、由奈さんが廊下を小走りにやってくる。
独り言なのか、昇さんの吐き捨てるような呻きが耳に入った。
「どうなってやがんだ、ちくしょう……」
誰も答えようのないそのぼやきを最後に、車は通夜のような重苦しさを乗せて村長宅の前まで俺たちを運んだ。
「よし、俺はみんなに知らせてくるから、お前らはその子を部屋で休ませてやれ」
ギアを戻し、サイドブレーキをかけながら昇さんが早口で捲し立てる。
「はい」
部長が頷き、車を降りる。それから、すぐに後部座席のドアを開け桜の顔を覗き込んだ。
「歩けるかい?」
小声で話しかけ、桜が小さく頷くのを確かめる。
それから、力なく外へ出た桜の側に立ち、支えるようにして肩に手をやった。
何もなければセクハラだとでも騒ぎ嫌がるはずの幼なじみも、今はそんなこと言う余裕が微塵も感じられない。
桜の後に続いて降りて、俺もまた側に付き添う。
「行くぞ?」
村長宅の中へ走っていく昇さんを目の端で確認し、桜の背を押す。
たどたどしく歩きはじめた彼女のペースに合わせて、俺たち男性陣も藤美荘へと向かった。
「……雄治」
その道中で、唐突に桜が掠れた声を漏らす。
「ん? どうした?」
周りが静かでなければ気がつけなかったであろうその呼びかけに、俺は耳を近づける。
「あたしもう帰りたい。こんなとこいたくないよ」
「……」
そのあまりにも心細さが伝わる少女の言葉に、一瞬喉が詰まる。
そういえば昔、まだ自分たちが幼かった頃にもこんな彼女を見たことがあったなと、そんな無関係なことが頭に浮かんだ。
冒険と言って二人で調子に乗り遠くへ出かけ、道に迷って帰り方がわからなくなったあの日。
まだ小学一年くらいだったか。
“こんなとこまで来なきゃよかったぁ……”
あのときの桜も、不安に飲み込まれ心細い声を出しながら、泣いて座り込んでいた。
――結局あのときは、偶然通りかかったお巡りが、泣いてるこいつを見て助けてくれたんだっけか。
だけどここには、助けてくれるお巡りはいない。助けが来るまでは、逃げ道がないのだ。
「大丈夫だ。絶対すぐに帰れるから、もう少しだけ頑張ろうぜ。な?」
落ち着かせるよう頭を撫でて、それだけ言葉をかける。
陳腐な台詞だとは理解しているが、もっと気の利いた言葉をかけられるほど自分はまだ器用ではない。
「……ん」
それでも少しは効果があったのか、桜は素直に頷くとそのまま黙って歩き続けた。
藤美荘に到着し、部長が玄関から大声をあげた。
「すみませーん!」
普段、声を張り上げることのない彼がここまででかい声を出せたのには驚いたが、表情には出さずにやり過ごす。
緊急事態であるわけだし、そんなことを指摘して話をしている場合でもない。
「すみませーん、誰か出てきてもらえますか!」
靴を履き替え中に入りつつ、もう一度部長が呼びかける。
それから数秒遅れたタイミングで、
「はーい、どうかしたのー?」
という由奈さんの声が奥から聞こえてきた。
厨房にいたのか、由奈さんが廊下を小走りにやってくる。
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