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第三章:藤花に消えた死体
第三章:藤花に消えた死体 31
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まともに休む暇もなく、動いていたのだろう。
村長であると同時に、事件に巻き込まれた当事者の一人。
警察に連絡をすることが叶わない現状、自警団やその他の村人たちと情報をやり取りしながら、長としての務めも果たさなければならない。
たぶん、自分の子供たちが死んでも、泣く余裕すらないくらいに多忙を極めているはずだ。
「い、いや……あそこだよ。あそこの藤の花が山積みにされてるとこに、埋もれるようにして倒れてたんだ。顔は見えてたし、脈を確認するのに触ったんだから間違いない」
おずおずとした態度で巨大藤の方を指し示し、昇さんは援護を求めるように俺へ視線を這わせてきた。
無視をするのもさすがにあり得ないと思い、台詞を継ぐように口を開いた。
「あの、俺も一緒に見ました。昇さんの言う通り、竜久さんが倒れていたのはあの場所です」
話を聞いていた自警団たち三人が、警戒するような足取りで花房の山へと向かっていく。
その後をくたびれた様子で付いていく村長と入れ代わるように、俺たちの前に進み出てきたのは枝橋さんだった。
早速きたかと内心呻くが、どの道避けられないのなら早い段階で話をつけた方が良い。
そう瞬時に判断して、俺は枝橋さんの視線を受け止める。
「どうしてきみたちまでここに来るんだ? 事件には首を突っ込まないと、さっき約束したばかりだと思うけど。大体……」
ついっと俺へ向けていた瞳を昇さんに移し、枝橋さんはねめつけるように目を細めた。
「昇さん、あなたもあなただ。人が死んでいるのをわかっていて、どうしてこの子たちを連れて来れるんです? 無神経過ぎるでしょう」
「い、いやいや、俺だって別に好きで連れてきたわけじゃないですよ。ただ、こっちの子が何か忘れもんしたって言うから、仕方なく連れてきただけで。なぁ?」
「え、ええ。俺は一応付き添いで。探し物を見つけたら、大人しく車の中で待ってますから」
ばつの悪さに気分が萎える。
それでもどうにか声を押し出し、自分には無関係な説得を試みた。
「探し物って言うのは何だい? 大事な物?」
今度は蓮田に枝橋さんの意識が向いた。
「はい、大事なものです。あそこに行けば、すぐに見つかるかと……」
言って、蓮田が見つめるのは竜久さんが死んでいた場所。
「そういや、さっきあの辺うろうろしてたよな」
思い返すように方眉を下げ、昇さんも蓮田を見やる。
そんな大人二人の視線に物怖じする素振りもなく、蓮田は花房の方へと歩きだした。
「あ、こら、一人で勝手に行動したら駄目だよ」
即座に、枝橋さんが背後へ付く。
「……なんか、あの子変わってんな」
蓮田の背中を眺めながら呟く昇さんへ、何を今更と言いたくなったが、代わりに口にしたのは
「まぁ、俺らもよく理解できてないですから」
という無難な台詞だった。
いつまでも突っ立っているわけにもいかず、俺も問題の場所へ歩きはじめる。
前方では既に花房の前に到着した自警団たちが、積まれた花と頭上の藤棚を見比べ、首を傾げるようにして何事かを話し合っていた。
「……しかし、ありゃあどう見ても竜久の死体が無くなってるよな?」
横に並ぶ昇さんからの疑問に、ぎこちなく首肯する。
村長であると同時に、事件に巻き込まれた当事者の一人。
警察に連絡をすることが叶わない現状、自警団やその他の村人たちと情報をやり取りしながら、長としての務めも果たさなければならない。
たぶん、自分の子供たちが死んでも、泣く余裕すらないくらいに多忙を極めているはずだ。
「い、いや……あそこだよ。あそこの藤の花が山積みにされてるとこに、埋もれるようにして倒れてたんだ。顔は見えてたし、脈を確認するのに触ったんだから間違いない」
おずおずとした態度で巨大藤の方を指し示し、昇さんは援護を求めるように俺へ視線を這わせてきた。
無視をするのもさすがにあり得ないと思い、台詞を継ぐように口を開いた。
「あの、俺も一緒に見ました。昇さんの言う通り、竜久さんが倒れていたのはあの場所です」
話を聞いていた自警団たち三人が、警戒するような足取りで花房の山へと向かっていく。
その後をくたびれた様子で付いていく村長と入れ代わるように、俺たちの前に進み出てきたのは枝橋さんだった。
早速きたかと内心呻くが、どの道避けられないのなら早い段階で話をつけた方が良い。
そう瞬時に判断して、俺は枝橋さんの視線を受け止める。
「どうしてきみたちまでここに来るんだ? 事件には首を突っ込まないと、さっき約束したばかりだと思うけど。大体……」
ついっと俺へ向けていた瞳を昇さんに移し、枝橋さんはねめつけるように目を細めた。
「昇さん、あなたもあなただ。人が死んでいるのをわかっていて、どうしてこの子たちを連れて来れるんです? 無神経過ぎるでしょう」
「い、いやいや、俺だって別に好きで連れてきたわけじゃないですよ。ただ、こっちの子が何か忘れもんしたって言うから、仕方なく連れてきただけで。なぁ?」
「え、ええ。俺は一応付き添いで。探し物を見つけたら、大人しく車の中で待ってますから」
ばつの悪さに気分が萎える。
それでもどうにか声を押し出し、自分には無関係な説得を試みた。
「探し物って言うのは何だい? 大事な物?」
今度は蓮田に枝橋さんの意識が向いた。
「はい、大事なものです。あそこに行けば、すぐに見つかるかと……」
言って、蓮田が見つめるのは竜久さんが死んでいた場所。
「そういや、さっきあの辺うろうろしてたよな」
思い返すように方眉を下げ、昇さんも蓮田を見やる。
そんな大人二人の視線に物怖じする素振りもなく、蓮田は花房の方へと歩きだした。
「あ、こら、一人で勝手に行動したら駄目だよ」
即座に、枝橋さんが背後へ付く。
「……なんか、あの子変わってんな」
蓮田の背中を眺めながら呟く昇さんへ、何を今更と言いたくなったが、代わりに口にしたのは
「まぁ、俺らもよく理解できてないですから」
という無難な台詞だった。
いつまでも突っ立っているわけにもいかず、俺も問題の場所へ歩きはじめる。
前方では既に花房の前に到着した自警団たちが、積まれた花と頭上の藤棚を見比べ、首を傾げるようにして何事かを話し合っていた。
「……しかし、ありゃあどう見ても竜久の死体が無くなってるよな?」
横に並ぶ昇さんからの疑問に、ぎこちなく首肯する。
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