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第四章:矛盾の解明
第四章:矛盾の解明 6
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【3】
五月二十三日。午前七時半。
この日もまた、嫌味かと言いたくなるほどに快晴で、廊下の窓から見える風景は優しい朝日を浴びて眩しく光を反射していた。
低血圧でまだ布団の中にうずくまる部長はそのままに、歯磨きと洗顔を済ませる。
女性陣はまだ寝ているのかどうか。部屋のドアを一瞥してみるが、話し声はおろか物音一つ聞こえてこない。
おそらく蓮田は目を覚ましていそうだが、彼女の場合は存在や気配をどこまでも抑制してしまっているため、判断が難しいところだ。
なるべく音を響かせぬよう注意を払いながら、部屋にもどり歯ブラシとタオルを片付ける。
部長の様子を窺うと、顔まで布団を被り動き出す様子はまだなさそうだった。
手持ちぶさたな気分で、室内を見回す。
このまま静かにボケッとしているのも落ち着かないし、女子の部屋に顔を出す選択肢もない。
窓際へ移動し、カーテンを捲り外を見やる。
「……?」
まだ早朝だというにも関わらず、村長宅の前には三人ほどの村人が姿を見せているのが確認できた。
竜久さんの捜索を始めるのは、何時からだろうか。
ひょっとして、こんな早くから開始するつもりでいるのではと、そんな考えが脳裏を掠める。
山のどこかに遺棄されているはずの、竜久さん。
昨日目の当たりにした死に顔を思い出し、無意識に眉間に皺が寄る。
ベッタリと赤い血で染まった顔は、平凡な日常とは相容れない異質な光景としてインプットされてしまっている。
――下におりてみるか。
朝を迎え明るくなっているとは言え、静まり返った部屋の中で一人不快な映像を脳内でリプレイしていたら、薄気味悪くなってきてしまった。
側で部長が寝ているとは言っても、頼もしさは皆無に等しい存在である。
再び音を立てぬよう廊下へ出ると、俺は階段へと歩きだす。今の時間なら、従業員は全員起きているだろうか。
ただ、千賀子さんは仕事などしている場合ではないし、できる状態でもないことは明らかだ。
今もたぶん、自宅の自室で養生していることだろう。
「……ん?」
階段へ差し掛かり、半分まで下りた頃。
ふいに、下から誰かの話し声が聞こえて俺は足を止めた。踊り場に立ち、耳を澄ませる。
まず男女の声だと気づき、それから由奈さんと枝橋さんのやり取りだと理解する。
こんな時間から枝橋さんが訪問しているのか。
想定していなかった展開に戸惑いながら、先に進むかこの場であえてやり過ごすか逡巡する。
枝橋さんと鉢合わせすれば、昨日の件について小言を聞かされる羽目になりそうだ。
――どうすっかな……。
ここにしばらく突っ立って、聞き耳を立てているのも後ろめたい。
一瞬、引き返しておこうかとも思ったが、ここまできてそれもどうかと思い直し結局先に進む選択肢を選ぶ。
「――こっちの方は今のところ特に異常はないです。千賀子さんは、どんな様子ですか?」
「昨日最後に見たときはかなり情緒不安定な感じでしたけど……。おそらく、しばらくの間はまともに出歩ける状態ではないでしょうね」
階段を下り、玄関口に近づくにつれて話す内容が明確に聞こえてくる。
「そうですよね……。せめて早く警察が来てくれたら、少しは安心できるんですけど」
五月二十三日。午前七時半。
この日もまた、嫌味かと言いたくなるほどに快晴で、廊下の窓から見える風景は優しい朝日を浴びて眩しく光を反射していた。
低血圧でまだ布団の中にうずくまる部長はそのままに、歯磨きと洗顔を済ませる。
女性陣はまだ寝ているのかどうか。部屋のドアを一瞥してみるが、話し声はおろか物音一つ聞こえてこない。
おそらく蓮田は目を覚ましていそうだが、彼女の場合は存在や気配をどこまでも抑制してしまっているため、判断が難しいところだ。
なるべく音を響かせぬよう注意を払いながら、部屋にもどり歯ブラシとタオルを片付ける。
部長の様子を窺うと、顔まで布団を被り動き出す様子はまだなさそうだった。
手持ちぶさたな気分で、室内を見回す。
このまま静かにボケッとしているのも落ち着かないし、女子の部屋に顔を出す選択肢もない。
窓際へ移動し、カーテンを捲り外を見やる。
「……?」
まだ早朝だというにも関わらず、村長宅の前には三人ほどの村人が姿を見せているのが確認できた。
竜久さんの捜索を始めるのは、何時からだろうか。
ひょっとして、こんな早くから開始するつもりでいるのではと、そんな考えが脳裏を掠める。
山のどこかに遺棄されているはずの、竜久さん。
昨日目の当たりにした死に顔を思い出し、無意識に眉間に皺が寄る。
ベッタリと赤い血で染まった顔は、平凡な日常とは相容れない異質な光景としてインプットされてしまっている。
――下におりてみるか。
朝を迎え明るくなっているとは言え、静まり返った部屋の中で一人不快な映像を脳内でリプレイしていたら、薄気味悪くなってきてしまった。
側で部長が寝ているとは言っても、頼もしさは皆無に等しい存在である。
再び音を立てぬよう廊下へ出ると、俺は階段へと歩きだす。今の時間なら、従業員は全員起きているだろうか。
ただ、千賀子さんは仕事などしている場合ではないし、できる状態でもないことは明らかだ。
今もたぶん、自宅の自室で養生していることだろう。
「……ん?」
階段へ差し掛かり、半分まで下りた頃。
ふいに、下から誰かの話し声が聞こえて俺は足を止めた。踊り場に立ち、耳を澄ませる。
まず男女の声だと気づき、それから由奈さんと枝橋さんのやり取りだと理解する。
こんな時間から枝橋さんが訪問しているのか。
想定していなかった展開に戸惑いながら、先に進むかこの場であえてやり過ごすか逡巡する。
枝橋さんと鉢合わせすれば、昨日の件について小言を聞かされる羽目になりそうだ。
――どうすっかな……。
ここにしばらく突っ立って、聞き耳を立てているのも後ろめたい。
一瞬、引き返しておこうかとも思ったが、ここまできてそれもどうかと思い直し結局先に進む選択肢を選ぶ。
「――こっちの方は今のところ特に異常はないです。千賀子さんは、どんな様子ですか?」
「昨日最後に見たときはかなり情緒不安定な感じでしたけど……。おそらく、しばらくの間はまともに出歩ける状態ではないでしょうね」
階段を下り、玄関口に近づくにつれて話す内容が明確に聞こえてくる。
「そうですよね……。せめて早く警察が来てくれたら、少しは安心できるんですけど」
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